重度障害児が未来を歩く姿を見た
2020年3月7日、八戸市のマチニワにて「ぼくらは未来からやってきた」というイベントが開催され、私もちょこっとだけ出演させていただきました。
健常者も障害者も子どもも大人もシニアも外国籍もお互いの存在を認め合い、なにか困っている人がいたら助け合う。そんな当たり前の社会になったらきっととても住みやすいし生きやすいよね!
そんなダイバーシティな八戸を目指すICK(アイコミュニケーション研究会)主催のこのイベントに、縁あって出演させていただいたのです。
主催の「アイコミュニケーション研究会」とは
上述したようにダイバーシティな八戸を目指して活動している彼女らは、特別支援学校の教諭をはじめ身内に障害者がいたりと、日常的に障害者と接する機会が多い方々が中心となっています。
(ざっくり言うと)ICKは、障害者向けにテクノロジーを活用したコミュニケーション支援とその普及を目指す団体です。
障害者と接することがない人にとっては、障害者との生活はピンと来ません。
大変そうだな…ぐらいにしか思わないのが大半ではないでしょうか。
─ でもね、いつ誰が障害者になってもおかしくないんだよね。突然の事故で肢体不自由になるかもしんないし、突然の高熱で寝たきりの生活になるかもしんない。他人事なんかじゃないんだよね ─
ICK会長の橋本さんが仰っていました。
当事者はベッドから天井を見つめる日々。
当事者も家族も孤独との闘いと言われています。
でも現代には、その孤独の解消を目指している方々がいる。
その方々が、障害者が単なる意思表示だけでなく会話を楽しめたり遠方への外出までも可能にする技術を生み出している。
ICKは、その技術をみんなに知ってもらいたいという想いをお持ちです。
障害者やご家族には、こういった技術を使って少しでも楽しく日々を過ごしてほしい。
障害と無関係と思っている人たちも、このことを知って、障害を理解してほしい、そして恐れないでほしい。
そう仰っていました。
(ICKのみなさん、齟齬あったらごめんなさい!!)
2019年は、このようなICTツールの活用事例を紹介するイベントやICTツールの体験会などを開催してきたそうです。
出会いは熱い夏の盆踊り
昨年夏、ICKは分身ロボOrihimeをレンタルし、寝たきりの子を八戸三社大祭に連れていくという挑戦をしていました。
そんなICK会長橋本さんとOrihimeを誘い、白銀にある三島上町内会の盆踊りに行ってみました。
その時のOrihimeのパイロットは関西在住の肢体不自由な女の子。
もちろん盆踊りは初めてとのことでした。
盆踊りの実行委員長である町内会長をはじめ盆踊り会場にいた人たちみんな、初めて見る小さなロボットにビックリです。
この小さいロボットを動かしているのは関西の女の子だって!
盆踊りのDJ(パフォーマー マコケルさん)も彼女を紹介しました。
みんなー!
関西からこの八戸の盆踊りに参加してくれてますー!
ウェーイ!!!
(↑町内会長(左)とDJマコケル(右)。この二人に触れると別記事が書けるくらいの情報量になるのでここでは省きます。まちづくりモンスターなお二人です。)
(Orihimeが踊ってる写真はボケボケだった…)
町内会手作りの小さな盆踊りだったのも、Orihimeを連れていくのにはちょうど良かったかも。
ボーダーレスな奇跡
私の息子は他人とのコミュニケーションが得意ではなく超絶ウルトラスーパー人見知りのTSSB(TOO SHY SHY BOY)。
そんな彼が、積極的にOrihimeに話しかけていました。
これには橋本さんもビックリ。
あのTOO SHY SHY BOYが!
息子くんが!
Orihimeと話してるー!!!
と。
息子に「このロボットを動かしてるのは遠くに住んでるお姉ちゃんなんだよ」と教えてあげると、
「マジで!? スゴイね! 超カッケーね!!」と大コーフン。
TSSBと、八戸から遠く離れたところに住んでる寝たきりの女の子が、コミュニケーションを取っている。
距離も、年齢も、性別も、障害も、いろいろボーダーレス。
ものすごい奇跡的な場面に立ち会ってる気がしました。
そもそも関西の寝たきりの女の子が八幡馬を踊ってるんですよ!
八戸人としてもうれしいですよね。
もうこれなんなんですかね。
テクノロジーってスゴイね(笑)(語彙)
君と夏の終わり 将来の夢 大きな希望 忘れない
10年後の8月 また出会えるの信じ…
え?10年待たなくても会えるって!?
ある日、橋本さんから連絡がありました。
「あの盆踊りの女の子と再会しない?」
ICKが開催するイベントであの女の子と再会しておしゃべりしませんか?
と、私と佐々木町内会長、DJマコケルさんがゲストで呼ばれたのでした。
あの熱い夏よ!もう一度!!
イベントではマチニワの大ビジョンでZOOMをミラーリングしながら、夏に会った彼女とおしゃべりしました。
彼女は、初めての盆踊りが楽しかったこと、
嵐のファンで、盆踊りで嵐の曲がかかったのが嬉しかったこと、
小さい子どもとおしゃべりできて楽しかったことなど、
いろいろ話してくれました。
トークセッションが終わってからゲスト3人で話していました。
「なんだか俺たちすげー未来を体験しちゃってるのかもね」
↑彼女が嵐の松潤ファンだということで、松潤マスクで登場した町内会長とDJマコケル。
ICTツールが実現した「できる」
イベントでは、視線入力機器などを使って動画制作をしているという男の子からのプレゼンも。
もちろん彼も重度障害児。
しかし彼の作り出す動画は大人顔負けです。
スゴイ…
それ以外の言葉を失いました。
彼のご家族が、彼が操作しやすいようにツールを制作したりスイッチャーを改良したり、一見「大変そうだな…」と思ったりもしたんですが…
お母様は、ICTツールのおかげで彼が好きなことができるようになり生き生きしている姿を見るのが何よりうれしいとおっしゃっていました。
私の考えなんてホント浅はかですよ。
何が「大変そうだな…」だよ。
大変とかそういう次元じゃないんだよ。
できなかったことができるようになった。
それだけで本当にスゴイじゃないか。
そうだよ。
息子だって知らない女の子と話せたじゃないか。
「できない」と思ってたことは思い込みに過ぎない。
何かをどうにかすれば「できる」ことってたくさんあるんだ。。
視線入力でeスポーツ大会!?
文字が表示されている画面を見つめることで文字入力が可能になる「視線入力」を使ったeスポーツ大会も開催されました。
全国の重度障害児がエントリー!
これは、フィールド内を塗りつぶした面積が大きい方が勝ちという一見単純なゲームなんですが、これを操作しているのは、やはり視線。
目の動きで塗りつぶしているんです。
なにこれホントに重度障害児vs重度障害児!?
あまりにも激しい戦いっぷりに私も涙が出るほど笑って楽しんでいました。
この涙は笑いすぎ?それともなにか違う感情?
もう何がなんだか分かりません。
何が起きているんだ、このマチニワで。。
ね? 彼らスゴイでしょ? と橋本さん。
何もできないんじゃない。
何もできないって大人が決めつけてるだけなんだよね、と。
内にコスモスを持つ者たち
今回このイベントのために島根から駆けつけてくださった、重度障害者の孤独を解消し「できる」を増やすために尽力され、視線入力機器を開発し全国を飛び回っている島根大学の伊藤史人助教授。
そしてイベント内で基調なお話を聞かせてくださった、民放勤務という安定を捨て現在はフリーランスの映像ディレクターとして伊藤さんの活動を撮り続ける千葉佳史さん。
「内にコスモスを持つ者」は千葉さんがイベント内で紹介されていた、高村光太郎が宮沢賢治を称した「コスモスの所持者 宮沢賢治」の一節です。
内にコスモスを持つ者は
世界のどの辺境にいても
常に一地方の存在から脱する
内にコスモスを持たない者は
どんな文化の中にいても
常に一地方の存在として存在する
(高村光太郎「コスモスの所持者 宮沢賢治」)
千葉さんは、伊藤さんがこのコスモス所持者だと仰っていました。
自分の身を削ってまで障害者と向き合い、決して諦めず、障害者の”できる”をサポートし続けている。
彼もコスモス所持者だと。
でも私から見れば、伊藤さんも千葉さんも、そしてICKの皆さんも、心にたくさんのコスモスを咲かせるコスモス所持者。
彼らによって日々楽しく過ごすことができるようになった障害者がたくさんいらっしゃるそうです。
それでもまだまだ障害者支援の壁は高く、世間の理解はまだまだ低い。
彼らの挑戦はまだまだ続きます。
その壁を超え理解を広げる活動を、私も応援していきたいと思います。
最後に…ICKに敬意を表して
今回のイベントは、八戸市中心街にありたくさんの人が往来するマチニワを使って開催することに意義があったと思います。
八戸市や近郊の障害者も参加しやすいオープンスペースというだけでなく、ただの通りすがりの人に重度障害者がICTツールを使って楽しんでいることを知ってもらえる可能性もあるためです。
しかし新型コロナウイルスの影響により、本来協力していただく予定だった学生ボランティアや観覧予定だった方々を不参加とし、実質無観客での開催となりました。
でも、この休校やテレワークが騒がれる情勢下で”オンライン中継イベント”を開催した意義は大きかったと私は思います。
(マチニワでzoomをミラーリングする難しさに直面していましたが…)
ICKの皆さんも、イベントを開催させてくれた八戸市の担当者さんにとても感謝されていました。
マチニワの管轄は八戸市です。
本来なら「中止してください」の一言で済んだかもしれないのに。
本当に感謝ですね。
正直、障害に対してまだまだ理解が浅い私がこのイベントについて書くことにビビってました。
でもこんなすばらしいイベントに参加したことを残しておきたいとは思い続けていて。
気を悪くされた方がいらしたら本当に申し訳ないんですが、素直な感想を連ねてみました。
スゴイしか言ってないけど(^^;
ICKのみなさん、今回はステキなイベントに参加させていただき本当にありがとうございました!!
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