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保育の本質

先日、山梨県北杜市須玉町にある「森のようちえんピッコロ」さんを視察するご縁を頂きました。
ここは幼児教育家の中島久美子先生が立ち上げた「子どもが自分で考え、自分で決める」保育スタイルで全国から注目されている幼稚園です。
遊び場は、森、川、畑など…緑豊かな自然環境でのびのびと活動しています。


私が最も印象深く心に残っているのは「エゴでも自己犠牲でもなく、自分で判断して行動している」子どもたちの姿です。

自然の中での遊びは楽しい反面、常に危険と隣り合わせ。上級生は下級生の命を守る使命を皆が自覚しています。
朝みんなで遊び場へ向かうとき、こんな出来事がありました。

園舎から森へ向かう途中に信号のない道路を横断するところがあります。
手を繋ぐ上級生がいなくて泣いている男児がいました。
年上の女児が「私と一緒に手つなごう」と優しく声をかけるものの男児は泣きながら「ぜったいお前はいやだ!」と断ります。
先生が女児に「あんなにきっぱり断られて大丈夫だったかな?」と尋ねると、
「うん、大丈夫。だって私は〇〇くんをただ心配して声をかけただけだから、必要ないならそれでいいの。」
純粋な動機による行動であるから、結果がどうであっても女児の心は揺らぐことなく穏やかです。
この女児が特別なのではなく、その後もずっとこのようなエピソードがいろんな子どもたちによってそこら中に溢れた一日でありました。


子どもたちの口ぐせは、
「ねぇそれほんと?ほんとのきもち?
お顔も心も くもらない?大丈夫?」
そんな風にして、保育者や保護者が目には見えない繊細な心の機微をいつも大事にしているのです。
たとえ時間がかかったとしても、子どもが納得するまで、考え抜くまで、「やりきった」と心から思えるまで、いつも子どもを信じて待ちます。
必要以上に手は出さず、でも目は離さず、ちゃんと見守ります。
信頼はするけど過信はしない。
だから子どもは自分の心を大事にできる、友達の心も大事にできる。
いつも自分のほんとの気持ちが分かっていて信頼できているから、人のことも信頼できる。
のびのびと自己肯定感を育むことができる。
これこそが保育の本質なのではないでしょうか。
そんな一生ものの宝物を子どもたちに授ける仕事はなんて尊いのだろう。

保育士と保護者が一体となって、毎日「穴掘り」という保育の振り返りをします。
今日の子どもの様子やこれまでの成長、お互いの生活までシェアし、語り尽くします。
大人の都合ではなく、全ては子どもにとって有益かそうでないか、が判断の根底にあります。
ここまで徹底している園を私は他に知りません。

子どもたちのお顔が写ったお写真は載せることができませんが、屈託のない子どもたちの晴れやかな笑顔と朗らかな笑い声が忘れられない一日となりました。

子どもたち曰く、
「大人にはね、心が開いている人と心に鍵がかかってる人がいてね、その鍵を無理やりこじ開けようとすると心まで壊れちゃうの。
だから氷を溶かすように優しく少しずつ開けなきゃいけないの。
心の鍵を開けるには、好きなことしたらいいよ。心の声が聞こえてくるよ。
もし聞こえなかったら、こうして木の神様に手を当てて聞いてみたらいいよ。
ね?聞こえるでしょ。」


自然のなかで遊ぶ子どもたちは、自分もまた自然であり、森も川も自分たちと同じ命をもつ友達だと思っています。
「万物に命が宿っている」という日本古来より伝わる感謝の心を自然と体得していると言いますか、それとも私達は大人になるにつれて忘れてしまうというのでしょうか。
私達大人の高慢さを悔い改めたく思います。
自然から学ぶこと、子どもから学ぶことはたくさんありますね。

素晴らしい機会を頂けたことに感謝すると共に、この経験を今後関わる子どもたちや現場で役立てて恩返しをしていきます。

#保育の本質 #子育て#保育#ほんとの気持ち#自己肯定感を育む#自然

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