日本は核兵器シェリングで対抗すべきだ

■日本を敵視する反日国と核兵器
 第二次世界大戦でアメリカは原子爆弾を日本に投下した。この時から原子爆弾の恐怖が世界に認知された。第二次世界大戦後の一時期は恐怖を独占したが技術の独占はできなかった。技術の進歩で核兵器の保有国は増加し第二次世界大戦後の冷戦期は東西に分かれて対立した。

 冷戦は終わるが核兵器の存在は低下せず軍事力に劣る国は核兵器の保有を選ぶ。これで核兵器の必要性は高まり政治の道具としても使われるようになった。世界には日本を敵視する仮想敵国が存在し核兵器で脅すのが現実。戦後の日本は核兵器保有に対してアレルギーが有ったが、今では核兵器保有を容認する声が増加した。

■核兵器の効能
 第二次世界大戦後の冷戦期は東西に分かれて対立した。この冷戦期では核兵器が使われないまま終わったが当時は核兵器を使う寸前だった。当時は核兵器を使うことが日常会話であり戦略核・戦域核・戦術核に区分して使うことを想定していた。

核兵器の区分
戦略核:敵国本土・核基地と市民が目標
戦域核:戦域・軍事基地が目標
戦術核:戦場・軍隊が目標

 冷戦初期では戦略核を使うことが想定されたが、「一度戦略核を使うと際限無く使われて双方共倒れになる」ことに答えが行き着き使うことが回避された。もう一つの理由は、「政治家が攻撃目標になるのを嫌い暗黙の了解で外された」ことが原因。政治家も馬鹿ではなく自分が核兵器で攻撃されたくない。だから核兵器削減を大義名分に政治家がいる都市を攻撃しない様にした。

 それでも当時は戦争で核兵器を使えると考える勢力が多かった。そこで戦術核なら戦争で使えると考えた。たしかに戦術核の破壊半径は戦略核よりも小さいから放射能による汚染範囲も小さいことは事実。

核威力と破壊半径
 2キロトン:半径0.88km    2.4平方キロメートル
20キロトン:半径2.45km   18.8平方キロメートル
 2メガトン:半径18.2km   1040平方キロメートル
20メガトン:半径  48km 7234.6平方キロメートル

 そこで冷戦期の後半では真剣に戦術核が戦争に使われることが想定された。戦略核が使えないなら戦術核を使おうとする強引さが当時は有った。だが当時の西側軍事界は戦術核を兵器として使う運用理論を樹立しようとしたが無理だった。

リデル・ハート
「戦略核戦争論と戦術核戦争論を分離するのは無理。核弾頭は使えない兵器だ」

 イギリスのリデル・ハートは核兵器を戦略核と戦術核に分離して戦争で使う動きに対し、戦略核と戦術核の分離はできないことを主張した。だが当時はリデル・ハートの主張を拒否して戦術核を戦争で使うことが研究された。

 核威力が2キロトン級ならば放射能による汚染地帯は小さくなる。ならば戦争で使えると想定したが自軍が使えば敵軍も使うのが道理。双方が戦術核を使うと結果的には戦略核の破壊半径と同じになることが判明した。これでリデル・ハートの主張が正しいことが認識され戦争で使われないまま冷戦は終わっている。

■核兵器は政治用の道具
 冷戦も中期から核兵器に対する認識が変化した。核兵器は強力になったが汚染地帯も大きくなる。技術の進歩で核兵器の攻撃面は進歩したが防御面では進歩が遅れた。一部の兵器にはNBC装置が付けられたが後方支援用のトラックには装備されていない。さらに市民が生活する場所には装備が無い。せいぜい核シェルターを作る程度であり放射能を除去する技術は進歩が遅れた。

「核爆発を受けた戦場は大規模な破壊・火災と残留放射能による障害地帯になる。この戦場で戦闘を続けるには地形踏破機動力と放射能防護力が不可欠である。それに欠ければ戦術核は使えない」(トルーマン論文/英ブラッセイ年鑑)

 冷戦後期になると、この事実は軍人たちが戦術核兵器を使用する図上演習で常識になった。すると核兵器は戦争で使えないので政治用として使う流れに変わる。

「核兵器は実戦兵器から抑止兵器になり、今日では交渉兵器になった。従って核抑止力の信憑性よりも曖昧性の方がより安定と抑制に効果がある」(ブレジンスキー論文/トレンズ第一号)

 すると核兵器の使命は『脅迫されないこと=国家の尊厳と威信を守ること』に変わった。こうなると核兵器は政治用の道具であり仮想敵国から脅迫されないために保有する。しかも通常戦力が少ない軍事小国だとしても核兵器を保有すると軍事大国と対等になれることを意味していた。

国家戦略A=外交✕軍事
国家戦略B=外交✕核兵器
国家戦略A=国家戦略B
 
 実際にイラン・北朝鮮が典型例で、通常戦力ではアメリカに劣っても核兵器保有の可能性だけで対等に外交が行えている。この事実が有るから核兵器を求める国は増加し途絶えることが無い原因の一つ。
 
 さらに北朝鮮が真に核兵器を保有しているか不明。仮に核兵器を保有していても弾頭数と命中精度は不明。これらは曖昧だがアメリカからの攻撃を抑制する効果を得ている。これはブレジンスキー論文の正しさを証明している。

■核兵器シェアリング
 核兵器を直接持つことは可能だが政治的に対立すると敵視される。だが核兵器を持たないと核保有国の仮想敵国から恫喝される。そこで政治的な背景から生まれたのが核兵器シェアリング。これはアメリカの様な核保有国が非保有国と核兵器を共有するシステムで、ドイツ・イタリア・オランダ・ベルギー・トルコなどが採用している。

 簡単に言えば核兵器を保有するアメリカが、共有している国が核攻撃を受けると代理として核兵器で反撃するシステム。このため核兵器シェアリングをする国は間接的な核保有国になれる。

 核兵器シェアリングは核保有国のアメリカには好都合。何故なら核兵器の拡散は無いし運用するのはアメリカ。核兵器の使用はアメリカが決められるからアメリカの核の傘に同盟国を組み込める。これは政治・軍事で都合が良いのでアメリカは核兵器シェアリングを選んだ。

■日本は核兵器シェアリングを選ぶべきだ
 人類の3000年の戦争史を見ると軍事の空白地帯が無いのが現実。仮に軍事の空白地帯が生まれたら隣接する国の覇権が侵入する。この典型例はロシアによるウクライナ侵攻。ウクライナはNATO非加盟であり軍事的な空白地帯に置かれていた。NATOは仮に加盟国が侵攻を受けたら加盟国が連合して反撃する組織。ウクライナは空白地帯だからロシアによる侵攻を受けた。この現実を見たことでフィンランド・スウェーデンはNATO加盟を急いだ。

 ロシアによるウクライナ侵攻を見ても外交で平和を維持できない。さらに核兵器を使い日本を恫喝する国も存在する。だからと言って日本が核兵器を保有することは難しい。だが日本がアメリカと核兵器シェアリングすることは政治・軍事で双方の利益になる。アメリカとしては日本を核の傘に置けるし核兵器の拡散にならない。

 日本としては間接的な核保有国になるから北朝鮮・中国・ロシアなどの恫喝に対応できる。仮に日本がアメリカと核兵器シェアリングをすればどうなる?日本を攻撃すればアメリカが代理で核兵器を撃ち込む可能性が有る。

 この曖昧な可能性が抑止力になるのだから国防として都合が良い。なによりも北朝鮮・中国・ロシアが困るなら好都合。戦争が嫌なら国防を強化して戦争に備えることだ。戦争をするためではなく仮想敵国からの侵攻を抑止するためだ。

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上岡 龍次(うえおか りゅうじ)
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