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朝のさざなみ読書会 〜本を対話のきっかけに〜

福岡県糸島市に引っ越してから約2年。その間に、対面で3回、オンラインで1回、合計4回の読書会を行いました。

そして、2023年の12月。糸島市の前原商店街にあるカフェSAZANAMiさんで5回目の読書会をすることにしました。題して「朝のさざなみ読書会」。SAZANAMiさんのお店の片隅に置いてある本を見たとき、「きっとここでコーヒーを飲みながら読書会をしたら素敵な時間になる」と想像が膨らみました。

選んだ本は「限りある時間の使い方」

今回選んだ本は、オリバー・バークマンさんの「限りある時間の使い方」。本のタイトルを伝えたとき、店主の浦川さんから「意外だった。」と言われました。

今まで選んできた本は、マーシャル・B・ローゼンバーグさんの「『わかりあえない』を越える」や、ジュリアキャメロンさんの「ずっとやりたかったことを、やりなさい」でした。今まで取り上げてきた本のキーワードを挙げるとしたら、「対話」や「創造性」、「あるがままの自分を受容する」。

そして、今回は「時間術」??

確かに、「限りある時間の使い方」というタイトルだけ見ると、時間をコントロールし、より生産的に生きるための時間術の話を想像するかもしれません。しかし、この本のプロローグには「生産性とは罠なのだ」という言葉が出てきます。生産性をを追求しても、忙しさから逃れ自分が本当にやりたいことをやれる日は来ないと言っているのです。むしろ、より忙しくなり、焦りが増していく。

そこで、この本では、時間や能力の有限性を受け入れ、他者と時間をシェアし、一見非効率に思えたり生産性が低く思えたりすることも、時間が与えられているからこそ体験できることとして味わおう、という提案をしています。

忙しくて時間がない、時間はあるけれど大事なことに使えていないなど、ほとんどの人が時間に関する悩みや葛藤を抱えているのではないかと思います。そこで新たに時間術を習得するのではなく、この本を通して時間に対する新しい捉え方に出会うことが役立つのではないか。さらに、この本を中心に据えて対話する場をつくることで、心が軽くなったり、勇気づけられたりする人がいるのではないかと思いました。

本を中心に据えた対話の場

よく「読書会ってどんなことをするの?」と聞かれるのですが、やり方は主催者によって様々です。例えば、お互いにおすすめの本を紹介しあうことで自分では手に取らない本に出会える読書会もあれば、1冊の本を数人で一緒に読むことで内容の理解を深める読書会もあります。

私の場合は、本をきっかけに対話が生まれることに重きを置いて、このような読書会のやり方を採用しています。

読書会のやり方
【頻 度】週に1回〜2週間に1回
【時間帯】平日朝 or 平日夜(※参加者のライフスタイルによって調整)
【時 間】1時間30分/回
【回 数】4〜7回程度
【期 間】1〜3ヶ月程度
【人 数】4〜8人程度
【読み方】その場で音読をする(輪読形式)
【タイムテーブル】
・チェックイン(25分)
 1人ずつお名前と今の身体の感じや感情について話してもらいます。
・音読+感想シェア(60分)
 3ページほど声に出して読んだ後、心に響いた部分や、よくわからなかった部分について話す時間をとります。
・チェックアウト(5分)
 1人ずつ本日の全体の感想を話して終了します。
【グランドルール(例)】
・間を埋めようとしない
・ご自身の今までの学びも大切にする
・他の参加者が話してくれたプライベートな話を、本人の許可なく口外しない

読書会のこだわり

対話に重きを置いているので、参加人数や進め方、グランドルールなど、大切にしていることがいくつかあります。その中から、チェックインと音読について考えていることを書きたいと思います。

チェックイン

チェックインでは、今の身体の感じや感情について言葉にしてもらいます。例えば、「急いで来たから汗ばんでいる」、「起きたばかりで眠たい」、「直前の出来事を引きずっていて少しイライラしている」、「午後に大事な用事があるから緊張している」、「久しぶりに会えて嬉しい」というようなイメージです。このチェックインは、アイスブレイクやお互いのことを知る機会になり、安心安全な場作りに効果的だと感じているのですが、それ以上に「今」に意識が向くという効果を感じています。

私たちの頭は忙しなく過去や未来を行ったり来たりしていますが、身体の感覚は「今」に意識を向ける手助けになり、その後の読書会の集中力を高めてくれます。

音読をする

その場で音読をすることで事前に本を読んでくる必要がなく、忙しい方にも参加しやすいようにしています。また事前に読んでくると、1週間前に読んだ方もいれば前日に読んだ方もいて、鮮度に差が出てしまいますが、この方法であれば他の参加者と同じタイミングで同じ言葉に触れることができます。そして、声に出すことで言葉が身体に染み込む感じが大好きです。

中には子どものころ音読の時間が嫌いだったという方もいらっしゃるので、音読しても良いという有志の方に音読をお願いしていますが、5人くらいの人数で行うとほとんど全員が音読をしてくれます。そして、終わったときには「音読をすることが面白い体験だった」と言ってくださる方が多いのです。これが私にとっても不思議で嬉しい体験になっています。

読めない漢字があっても大丈夫、すらすら読めなくても大丈夫、声が小さくても大丈夫、という安心感の土台になっているのは、少人数で行うチェックインの時間かもしれません。

終わりに

12月12日(火)に「朝のさざなみ読書会」の初回を終えたのですが、読書会が終わった後も話し込む参加者の皆さんの様子をみて嬉しい気持ちになりました。平日の朝にこんな贅沢な時間を過ごすことができているって、幸せなことだと思います。そして、これが私の「限りある時間の使い方」の答えだなと思うのです。

SAZANAMiさんと参加者の皆さんと一緒に、残りの3回も楽しみたいと思います。


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