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【読んでみましたアジア本】「わたしは失敗者。でも若者たちは成功した。優秀な新しい世代だ」/李怡『香港はなぜ戦っているのか』(草思社)

『香港はなぜ戦っているのか』の著者、李怡さんが2022年10月5日、移住先の台湾で亡くなりました。本書は日本ではあまり話題になっていませんが、実際には日本人が香港デモの背景を知る意味でとても重要で、多くの誤解や無知を解いてくれるはずの一冊です。

2020年6月30日。ちょうど北京で開かれている全国人民代表大会(全人代)の常務委員会で、「香港特別行政区国家安全維持法」が可決されるだろうと伝えられる日に、この本の感想を書いている。

昨夜のSNSのタイムラインには香港人やまだ香港人にはなれていないけれども香港に暮らす友人たちが撮った、美しい香港の夜景が並んでいた。「この姿をきちんと目に収めておきたい」という言葉とともに。

そこには、「とうとう香港は中国国内になっていく」という恐れと不安と悔しさと、そしてそれをどうすることもできない悔しさが溢れていた。

あまりにも一方的で、あまりにも理解不能で、そしてあまりにも不合理であり、そして「世界第2の」「責任ある」「歴史のある」「大国」という自称にはあまりにも似つかわしくない動作で、世界中の注目を集め、小さいながらも世界に影響を与える、元植民地下にあった小さな地域を「有無を言わさせない」ようにしようとしている。

なぜ、事態はここまで進んだのか、こうなることを予想しつつも、「ちっぽけな」香港の人たちが抵抗を続けたのか。この本を読めば、1文字1文字が丁寧に教えてくれる。本書には、香港人が主権の返還当初、いや返還前から抱えてきた万感の思いが詰まっている。

香港の主権返還以来、そして2014年の雨傘運動以来、さらには昨年の「逃亡犯条例」改定草案に端を発したデモ以来、次々と香港情勢の解説書、あるいは現場で見てきた人のルポが出版されているが、本書はその中でも特に際立って秀逸な一冊であると言い切れる。たぶん、これまで前述したような本を読み漁り、香港がどうしてここまで来てしまったかを知ろうとし続けてきた人が、それでもどうしても拭いきれなかったさまざまな「なぜ?」に対する答えが必ず本書で見つかるはずだ。

中国出身で香港で暮らし、その変化を70年間に渡り見つめ続けた気骨のジャーナリスト、李怡さん。この本は、雨傘運動勃発直前の2013年まで李さんが書いたコラムをまとめたものであるが、訳者の坂井臣之助氏の膨大な訳注と補足説明がその「時差」をまったく感じさせない。

そして、そのことから分かるのは、香港がこの日に至る直接のきっかけとなった2019年のデモは実は一過性のものではなく、それこそ香港の主権返還以来の歴史と香港人の思いがぎっしりと詰まったものであることだ。

この本はわたしにとって、今年のベストセレクションの1冊になることは間違いないことを強調しておきたい。

●なぜ、香港人は立ち上がったのか

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