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210211【香港15days】番外編全文無料公開:使えない「Android版COCOA」を「入国時の誓約」だとゴリ押しする、日本という国の不毛さと無責任
「COCOAをスマホに入れていただくという誓約のもとで入国が許可されることになっています」
突然現れた男性職員は空港警察官を後ろに従えてこう言いました。入国前の検疫手続きでなんどか「AndroidのCOCOAは入れても役に立ちませんよね? だったら入れません」と断り続けた結果です。
それまで何人かわたしに困った顔をしてみせた女性職員の後で、その男性が警官を従えて現れたのです。
――わたしも入れてましたよ。でも、AndroidのCOCOAはこれまで個人情報を集めながら、半年も役に立っていなかったと聞いて削除しました。
「入れてください。入れないと入国できません」
――使えるようになりました?
「わかりません」
――あの報道はご存知ですよね。
「知っています」
――使えるのかどうかわからないのに、わたしたちにCOCOAを入れろと?
「その誓約を受け入れていただいております」
――じゃあ、逆にいつCOCOAがまともに使えるようになるのかまず教えて下さい。
「…」
――それはあなたたちのわたしたちへの誓約ですよ? 最初にわたしたちはあなたたちとの誓約を信じてCOCOAを使うことを受け入れてダウンロードしたんです。あなたたちはわたしたちの情報を預かった上でそれを公共衛生のために使うといってわたしたちを納得させているんです。それを半年以上も破った状態になっていて、まだCOCOAを使い続けろという権利はあなたたちにはないですよ。報道がなければ、わたしたちはまったく知らないまま個人情報をわたしていたわけです。それに対する謝罪もないし。わたしは今回の旅先でそのニュースを知って削除したんです。一度裏切った信頼を回復させるために少なくとも「Android版も回復しました。使えます」という説明をすべきなのに、それもなしに「COCOAダウンロードが入国のための誓約」なんていうのは職権乱用ですよ。
「何度も申し上げますが、条件は変わっておりません」
――条件は変わっていない。じゃあ、状況は回復しましたか?
「厚生労働省に直接聞いてください」
――いや、それをここで説明するのがあなたたちの責任ですよ? わたしたちは情報を差し上げる側なんですよ。使えるサービスに情報を差し上げることはまったく問題ないです。だから、それを信じてわたしは事前にCOCOAを入れてたんです。信頼してたんですよ、あなたたちのやろうとしていることを。
「それを決めるのは厚生労働省なので、政府なので。我われのレベルではどうしようもないです」
――じゃあ、分かりました。あなたはどちらさまですか? お名前と所属先をいただけますか?
「…これ、録音しているんですか?」
――はい。
「…少々お待ち下さい」(脇に離れて電話を始める)
(戻ってきて)「何度も同じことを申し上げますが、COCOAをインストールすることで入国できるというのが条件なので」
――分かりました。じゃあ、インストールしても使っていなければいいですね?
「まずインストールして使える状態にしてください」
――だけど、こっちも何度も申し上げてますけど、COCOAをダウンロードするのは問題ないですが…
(遮って)「じゃあ、ダウンロードしてください」
――……でもこの瞬間にAndroidのCOCOAがまともに使えているかどうか、それを教えて下さい。
「…それはシステムの管理をしている方が…」
――そりゃそうですよ、そんなことくらいわかってます。でもあなたたちにはそれをわたしたちに説明する義務があるんですよ? 形式主義に陥って「いれろ、いれろ」と言っても、わたしたちとの間で交わした誓約をすでに裏切られているので納得いかないんですよ。
「現場レベルでは我われ判断できないですね、そういうこと。そういったクレームは厚生労働省か政府に言っていただかないと」
――じゃあ、クレームの連絡先ください。
「…」
――わたしだってあなた個人に言っているわけじゃありません。ですが、わたしは一旦信用して入れていたCOCOAが使えていなかったという報道で、これは引き続き個人情報を差し上げるものではないなと思ったから削除したんです。
「ただ、今回はそれをインストールすることで入国するということが条件になっていますし、その誓約書も頂いています」
――じゃあ、あなたのお名前をください。少なくともあなたとこういうやり取りをしたということを記録しておきます。あなたはどこ所属のどなたですか?
「…」
――わたしはあなたとこういうやり取りをして、あなたを信用してCOCOAを入れますという決定をしたことをしっかりと覚えておきます。あなたがおっしゃっていることはあなたの立場としては正しいと思います。でも、あなたも御理解いただけると思います、わたしの言っていることの道理を。
「そういったご意見があることは理解しました」
――そうですね。そのうえであなたのご所属とお名前をいただきたい。あなたはわたしの個人資料をすべてもっていらっしゃって、わたしがこのカウンターに着いた途端出てこられましたよね? ずっとわたしがCOCOAを拒絶していたのをご存知だから出てこられたのでしょ? わたしの個人情報もパスポートを見てご存知なわけですから、今あなたがあなた自身も判断できないと、ここでは入れてもらうことが原則であると今おっしゃいましたよね。
「そうです」
――なので、わたしはあなたを信じます。なので自分が誰を信じたのかを知りたいので、あなたのご所属とお名前をください。
「…△△空港検疫所の〇〇といいます」
――部署は?
「検疫衛生課です」
――検疫所って厚生労働省の所属じゃないんですか?
「厚生労働省の一機関です」
――となると、あなた方は権限としてCOCOAの状況を確認することができる立場にあることになりますね? なので、今後のCOCOAのことについては報告をきちんとしておいていただきたいです。わたしたちが1人で抗議したって厚労省は動かないでしょ? でもあなたにとってもわたしみたいなのは面倒だと思うんですよ。だから、あなた方がきちんと上部機関に報告しないと、誰も動きませんよ。
「そういったご意見もあるということで…」
――あなたが現場に立っている方として、そういう現実があるということは上にきちんと反映していただきたいと思います。
「…」
(シンガポール航空の機内から見た「日の出」。ちょうど翼の位置だったのでいいところが隠れてしまってくやしいーーーーー!)
追記)なお、Android版COCOAはやはりまだ回復していないようです。以下の記事をツイッターで教えていただきました。
追記・その2)そういえば、日本の空港で飛行機を下りてきた乗客を案内したり先導する役、そして待合所で座った乗客一人ひとりに聞き取り調査する役目、さらにはその後に続くカウンターに座っている職員…そのすべてが99%まで女性だった、それも若い女性だった、というのにはちょっとびっくりしました。
わたしは、香港入りしたときにもPCR検査に続く長い列と問答を体験したし、帰りの中継地シンガポールでは検査は必要ありませんでしたがやはりトランジット客の待機場所まで連れて行かれ、そこで出発まで待機させられましたが、その時に対応した職員は男女混合。はっきり言って性差はまったく感じられなかった。
でも、日本に着いたら、乗客(=海外からウィルスを持ってきている「かも」しれない人たち)と直接対面するのは99%が若い女性だった。男性がいなかったという意味ではありません、いました。でも、本当に指差して数えなければならないくらいで、現場にいる他の男性は腕組みしてその様子を眺めている立場の人ばかり(そこには女性もいました)でした。
これはどういうシステムでそうなっているのかはわかりません。日本には「接客は若い女性に任せろ」的なムードがあるのは知っています。ですが、海外では男性も女性もみな同じようにそこで乗客に対応していました。緊急事態ですから、彼らは必ずしも日頃はそんな接客の仕事がメインじゃないかもしれない。でも、普通に男女の差異を感じないくらいの人たちが現場でそれぞれ手分けして乗客に接していました。
そういえば香港空港のフードコートで食事をした時、開いているお店が少なくて職員や乗客がその開いているお店に殺到しているせいでしょう、明らかにオフィスワークらしい中年の男性がカウンターの中に入って、配膳係の人たちに混じって奮闘していました。身のこなしや顔つきでわかります。その人は絶対にいつもカウンター内で配膳しているひとではなかった。きちんとしたカッターシャツを来て首から職員カードをぶら下げていたことからも明らかです。
それくらいの非常時。みんな一丸になってこなさなければならない仕事があるという時期。
なのに、なぜ日本だけ女性が、それも若い女性がああした現場に駆り出されているのか、理解に苦しみます。
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2021年1-2月 香港15days集中リポート
2021年1月26日から約15日間の香港滞在を記録していきます。街の様子や人々の表情、2019年の香港デモ、そして2020年の新型コロナを…
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