【ぶんぶくちゃいな】任正非ファーウェイCEOインタビューに見た「科学者としての姿勢」

やれ、と広報担当者に強制されたんだよ。今こそ18万の職員と広範な顧客たちに自信を届け、彼らにもっと我われを理解してもらい、信頼してもらい、同時に社会に納得してもらわなきゃ、とね。

先週の「ぶんぶくちゃいな」で、カナダとアメリカと中国の間に挟まれて大揺れの「華為 Huawei」(以下、「ファーウェイ」)の任正非CEOが外国メディアの前に姿を現したと書いたが、同CEOは続けて2日後には中国メディアをどっさり集めて社内で記者会見をし、さらにはその直前に全国テレビ放送の中央電視台(CCTV)の独占インタビューを収録するという忙しさだった。そのCCTVによると、1987年に創業してから31年年来、メディアインタビューを受けたのは10回に満たないという任はその理由を笑いながらこう語った。

わたしは、真っ先に受けた外国メディアのインタビューを「すでにほとんど人の口端には上らなくなっている」と書いたが、それはわたしの勘違いだったと気がついた。確かに1月15日にブルームバーグ、ウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、AP通信など英語メディア6社がグループインタビューを行い、記事が配信されたこと自体は中国メディアでも大きく報道された。だが、続けてその内容について深く分析しようとしなかったのは、二つの理由があったと考えられる。

まず、英語メディアのインタビューの翌々日(17日)に、今度は中国メディアのグループインタビューが予定されていたこと。そして、もう一つの理由についてはその二つの国内外メディアのグループインタビュー全文それぞれを比べれば明らかだ。

というのも、両者のインタビューは方向性がまったく別だった。どちらもファーウェイの業務規模や業務展開、技術開発に触れたが、西洋メディアではファーウェイがアメリカやオーストラリア、ニュージーランド、日本での5G設備参入禁止になった理由、簡単に言えば、ファーウェイの「情報漏えい疑惑」やカナダで拘束された任の長女、孟晩舟CFOにかけられた容疑にまつわる「疑問点」や「事実」を明らかに使用という質問が中心で、当然のことながら業務規模やその海外での展開、技術開発についてもそうした視点からの説明を求めている。

一方で中国メディアは、主に任CEOの経営理念やファーウェイの先進性、技術の先進性、社会意識や世界的な視野などといった「素晴らしきかな、ファーウェイ」の聞き取りが中心で、「世界の頂点に立ち、期待され、発展すべきファーウェイという企業」について経営者である任が語った、という構成で記事が発表されることが容易に想像できるものだった。西洋社会がなぜファーウェイに疑惑の目を向けるのかをについては一切質問が出ず、「アメリカはマッカーシーズムの時代に戻って共産主義を目の敵にしているが」という敵愾心丸出しの質問に対して、任は「法律のことについては我われが何を言い募っても意味はない」とシンプルに答えているだけだ。

きっと「【ぶんぶくちゃいな】貿易戦もファーウェイ事件も『ホントのこと』は話せない中国政府」で書いた規制が続いているのだろう。中国メディアは西洋メディアによるインタビューを中国語化して報道することは許されなかったのだ。

わたしはこのファーウェイにまつわる事件について、この「中国政府の見えない手」が話をさらに複雑にしており、そういう意味ではファーウェイは「被害者」だと感じている。アメリカがファーウェイに突きつけた疑惑も、実のところファーウェイはその製品を通じて手にした情報を中国政府に流していると主張しており、両者の連携が問題視されていることからしても、中国政府がカナダやアメリカに高圧的な態度と威嚇を繰り返す一方で国内報道を規制し続ける限り、ファーウェイがどんなに潔白を主張しても、そしてそれが本当に潔白であったとしても、西洋社会は疑惑を消しきることはんできないではないか。

それを、「やっぱり」と見るか、それとも「気の毒に」と考えるか、そこが判断に迷うところだ。

●複雑化する「ファーウェイ」問題

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