【ぶんぶくちゃいな】ポスト新型コロナ期の香港 急速に進む秋選挙狙い撃ち

日本と中国は、正月を含めて休日の概念がまったく違う。もちろん、世界中それぞれの国の記念日や歴史から祭日祝日が違うのは当然だ。だが、正月の概念すらも中国では春節がメインであり、元旦は「ただの休み」でしかない。一方で香港では植民地時代の宗主国イギリスの影響がいまだに色濃く残っていて、クリスマスからその一週間後の元旦を含めた10日から2週間がそれなりに休暇ムードになるので、あまり違和感はないのだが。

そんな日本と中国で唯一、おなじように休日ムードに浸り始めるのが、ちょうどこの時期。日本は完全なる連休ではないもののゴールデンウィークが、そして中国は5月1日のメーデーを挟んで土日を潰してまるまる1週間の休みとなる。いつもはこの時期、両国のネットではウキウキ気分が蔓延する。そして、ニュースチェックは続けながらわたしもちょっと気持ちが緩む時期でもある。

だが、今年はご存知の通り新型コロナウイルスの感染が拡大して、そのムードが大きく変化した。

日本では引き続き外出自粛が叫ばれている。一部のパチンコ屋の営業を阻止するために、名前を公表するという手段も取られ始めた。窓の外は春の陽気でそれはそれは気持ちよさそうなのに、外出を控えなくてはならないというジレンマ。

だが、この1年で一番気持ちの良い時期をもう籠もって過ごすことに飽きてしまったのか、こっそり日常生活を取り戻しつつある人をたびたび見かける。わたしのジョギングコースの浜では、夕刻になると家から抜け出した人たちがマスクを外してくつろいでいる。

特に、マスクをしていない人も増え始めており、そんなティーンが三々五々連れ立ってブラ歩きしている。市長や知事は一生懸命にもうちょっと頑張ってくれ、外出を自粛してくれ、三密を避けてくれ、と呼びかけているけれど、たぶん、彼らちの耳には届いていない。

一方で中国といえば、4月8日に「新型コロナウイルス感染」の象徴だった武漢市のロックダウンが解かれて以降、急速に「復興」ムードが広がった。ニュースクリップでも取り上げているように、出勤は回復しつつあり、また店舗も開店を急いでいる。

特にメーデーを狙った商戦がじわりじわりと注目を集め始めている。今年は1年で最も大事な春節すら自粛し、さらにはほぼ2ヶ月に渡る長い緊縮生活が続いた直後なのだから、その気持はわからんでもない。そして消費する側の他に、ビジネスを取り戻したい人にとっては一刻も早く、日常の営業に戻さなければ、という焦りもあるだろう。

だが、その一方で、今度は黒龍江省のロシア国境を中心に感染者が増え始め、同省の中心地、ハルビンも厳戒態勢に入ったと伝えられている。黒龍江省を中心とした近隣東北地方、そして同じくロシアと国境を接する内蒙古自治区や近隣大型都市の陝西省西安市からも外出や旅行に慎重さを求める発言がなされている。報道を見る限り武漢の初期ほどの派手な動きはないが、それでも相当深刻な状況であることが伝わってくる。

しかし、指折りの大都市上海では、メーデーに向けたショッピングキャンペーンも大々的に喧伝されている。中国では大都市で展開される事象に地方が倣うという(「上から下へ」型の)習慣があり、そこから考えると、国全体としてはやはりメーデー消費への「リベンジ」に賭けたいという思いが強いようだ。

このまま、徹底的に東北、西北(西安など)地区で厳戒態勢を敷きつつ、上海など経済的に余裕のある地区から経済振興を進めるつもりなのだろうか。その賭けは本当にうまくいくのだろうか。とにかく予測のつかないことをしでかす国なので見守りたい。

だが、そんなふうにじわじわと「回復」を見せて(焦って?)いる中国が、もう一つ手を付けたことがある。

香港の「封じ込め」だ。

「封じ込め」と言ってもウイルスではない。昨年から続く、政治体制改革を求めるデモ活動、そして市民の気運の「封じ込め」である。

●中央政府機関が民主派議員を名指し批判

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