【読んでみましたアジア本】暑く湿った空気の中でうごめく「闇」:アルンダティ・ロイ『小さきものたちの神』
「あなたたちの国のことをわたしはほとんど知らないんです。わたしが読んで少しでも理解できるような、おすすめの作家さんはいませんか?」
と、昨年参加したアジアのジャーナリストフェローシップでパキスタンのフェローに尋ねたら、いくつかの名前を教えてくれた。そのうちの一人がこの作者アルンダティ・ロイ。他の作家さんの作品は英語版は見つけたが、まだ日本語になっていないよう。それくらい、わたしたちと彼らの間は開いている。
このアルンダティ・ロイはインドの作家ながら、英語で著作を行っているようだ。この『小さきものたちの神』が処女作であるにも関わらず、1996年にイギリスの著名な文学賞であるブッカーを受賞したことで注目されたという。ただ本作以外で日本語化された作品は、評伝や社会分析本がほとんどで、彼女は今や日本では小説家としてよりも、批評家としての評価が高いということなんだろうか。
パキスタンフェローは、もしかしたらそんな彼女の声をわたしに読んでもらいたかったのかもしれない。今度そっちも読んでみたい。
●「湿った」気候下の「乾いた」家族たち
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