【ぶんぶくちゃいな】急速に進む党の統制強化 「共同富裕」は富の再配分なのか
7月からこっち、香港でも中国でもあれこれと事件が起こり、それが大きな注目を浴びている間に次の事件が起きるものだから、その流行り廃りがむちゃくちゃ早い。
先週のぶんぶくちゃいなで触れた張文宏医師の「討伐」騒ぎは週明けにはまだ話題に上っていたが、あっという間にアフガニスタンのタリバンによる政権奪取に取って代わられ、そして週末直前には「共同富裕」「三次分配」へと焦点が移った。
さらにすぐにIT大手「騰訊 Tencent」(以下、テンセント)が500億人民元(約8440億円)を投じて「共同富裕専門計画」を立ち上げるという展開が、スピード的、そしてそのスケール的に、これまた人々をびっくりさせている。
「共同富裕」はこの17日に開かれた中央財経委員会で提案されて、人々の視野に入り始めた。もともとは1953年12月に毛沢東が提案したもので、1983年にトウ小平(「トウ」は「登」におおざと)がその発展を継承して、「一部地域で一部の人が先に豊かになり、その他の地区、その他の人たちを牽引し、助け、逐次共同富裕に達する」と述べており、これ自体はそれほど目新しいものではない。
じゃあ、それがなぜ新たに注目を浴びたかというと、中国共産党設立から100周年を迎え、この間すでに「小康社会」(衣食足りた生活)を実現したとして、これから200年目に向けた、「すべての人たちの共同富裕促進こそが幸福実現の重点であるとみなして、中国共産党の長期政権基盤を固めていく」という目標が課せられたからだ。
その具体的施策として「三次分配」が謳われている。「三次」というからには当然、「一次」「二次」があるはずだ。実はこの「三次分配」も今回初めて出現したわけではなく、昨年初めにはすでに中国共産党のエリート教育において出現していたという。
それによると、一次分配(中国語では「初次分配」)は「市場がその要素に基づいて行った貢献」、そして二次分配(同「再分配」)とは「政府が国会意志を体現した分配」を指すという。そして、続く三次分配は「社会の主体が自主的、自己意志で参与する資産流動」を意味するらしい。つまり、テンセントはいの一番にその「自主的、自己意思」を体現したということになる。
さらに新華社によると、三次分配は「社会の構成メンバーの更に高い精神的追求を体現するもの」であり、「道徳、文化、習慣などの影響を受けつつ、社会の力が民間寄贈、チャリティ事業、ボランティア活動など自己意思による弱者を助ける行為を行うことが、再分配をさらに有効的に補うものとなる」と定義づけている。
社会に向けて「自主的、自己意思」を強調する一方で、政府はその役割として、「税収、社会保険、移転支出の増大と精度の向上、中間所得層の拡大、低所得層の収入増大、高収入を合理的に調節し、違法収入を取り締まり、”中間が大きく、両側が小さい“ラグビーボール型構造とし、社会の公平正義を促進しなければならない」と謳っている。
またこれらが提案されたという中央財経会議では、「社会主義の初級段階に立脚し、公有経済制度を主体とした多種所有制度経済の共同発展を堅持」と論じられたと報道は伝えられている。つまり、中国共産党設立100周年を迎えて、また毛沢東以来の強大な指導者を目指しているといわれる習近平が社会主義国家としての中国の新しい版図を提示したといえるだろう。
まだこの「共同富裕」と「三次分配」についてはまだ市井でもさまざまな意見が飛び交っている状態で、具体的にどんなふうに政策面で実施されるのかはよくわからない。なので、ここでこれ以上、それに踏み込んで語ることはわたしにもできない。
なんでよくわからないのに、大上段にここで「共同富裕」と「三次分配」について取り上げたのかというと、実は先週から数本、ちょっと気になる記事を目にして、それらをストックして理解に努めようとしていたところだった。今回の発表でその意味がなんとなくわかりかけたような気がし始めたのだ。
なので、今回はそれらをここでご紹介して、今後の動向の参考にしていただきたい。
●党200年目に向けた「ルールづくり」が始まった
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