【読んでみました中国本】二強時代に日本はどう関わるか:津上俊哉「『米中経済戦争』の内実を読み解く」
わずか3年前、わたしがNewsPicksの編集部に入ったばっかりの頃、ニュースフィードに中国関連の、日本にとっては不利、あるいは不快なニュースが上がってくると、「こんな国、無視すればいいんです」というコメントが必ずあった。あと、経済関連でも、中国企業のニュースに「国の力で…」「国に守られてていい気なもんだ」などと堂々と書いている人がいた。それがわりと他のニュースにはまともなコメントをしている、それなりのビジネスマンたちだった。
ああ、この人たちにとって、中国は「遠いあっち側」「相手にしなければいいんだよ」という存在なんだな、と、その年の春、北京から東京に戻ってきたばかりのわたしはそれを読んで思った。
でも、それは違うんだよ、知らなくていい、のんびり構えていればいいなんてことは今にきっとできなくなりますよ…と思っていたら、3年後の今、本気で経済やビジネスの世界に関心を持つビジネスマンにとって、中国経済は無視どころか、その動向は世界経済のリトマス試験紙の役目を果たすまでなった。今や中国を無視して世界を語るなんて出来なくなった。
先にあげたコメントの主たちがいかに、そしてどんな思いで軌道修正したのかは知らないが、金融政策一つとっても、そして貿易においても、科学技術においても、中国を持ち出さずに日本の世界市場戦略を語ることはすでに難しい。いや、海外だけじゃない、シャープが買収され、さらに追い詰められた東芝の半導体メモリー事業でも直近の可能性は国内企業ではなく、中華圏の企業が握っている。国内の小売店だって中国観光客向けの接待を始め、街を歩けば普通に中国語に「当たる」。
それでもまだ「無視してればいい」と言える人がいたら、相当な無頓着か、ただの能天気だろう。もし、ビジネスマンが今さらそんなことを言いだしたら、もうビジネスの世界では相手にされないはずだ。それくらい間違いなく、中国との距離は狭まってしまった。
その間、わずか3年である。
でも、その間の中国経済の実態はどんなものなのか、というと、まだほとんどの日本人にはわからないままだ。もちろん、社会主義国を標榜する「政治」の国だから、政治的な要素も無視できないが、日本のニュースメディアといえば、昔ながらの中国の政治闘争話や政治会議については事細かに伝えるが、実際に実体経済がどうなのかについてはまだまだよくわからない。
仕方ないから、どっかで聞きかじった「中国はバブルだ」「崩壊も時間の問題だ」という言説をオウム返しに繰り返してわかった気分になっている。…で? バブルが崩壊したらどうなると思う? その答をだれも考えようとしていない。
真剣に考えているビジネスマンならきっと思っているはずだ、中国の経済はその実どうなっているのか? アメリカの新しい政治傾向と中国はどうつながっているのか? そしてそれが日本に、世界にどんな影響をあたえるのだろうか?と。
そんな、今この2017年の夏に知っておくべき直近の答を与えてくれるのが、この津上俊哉著「『米中経済戦争』の内実を読み解く」である。
●習近平時代の中国をどう読むか
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