【ぶんぶくちゃいな】中国人サッカーファンが振り返る、日本チームのW杯

とうとう、米国の対中制裁関税発動!

…のはずなのに、中国メディアを眺めてみると、これを日々取り上げて論じているのはほぼ政府系メディアと経済専門メディアだけ。

実際に貿易制裁が始まれば中国でも大きな影響を受けるはずのIT業界ニュースメディアでも、通信機器メーカー「中興通訊 ZTE」(以下、ZTE)に科せられた禁令(詳しくは「全国が激震! 米国によるZTE制裁事件」をどうぞ)とその後の進展について報道しても、貿易戦争自体についてはあまり深く掘り下げることをしていない。

もちろん、中国で隆盛している消費系、娯楽系のITサービスはまだほとんど米国に上陸していないので直接の影響はないだろうが、伝統的なハードウェア製品や部品生産者にとっては一大事のはず。また、中国人研究者の入国、米国での研究従事を厳しく規制するという項目も含まれており、 米国からのUターン者が占める割合の多いソフト開発業界、さらには今や争奪戦の対象になっているAI人材においては影響は絶大なはずだ。

もしかしたら、ハードにおいては米国からの部品供給源を切られたZTEと逆に、中国からの部品が値上がり、あるいは中国の工場で生産する製品の値上がりできっと米国メーカーが騒ぎ始めるだろうと踏んでいるのだろう。

米国メーカー側にしてもすでに技術と経験を蓄えた中国の大規模生産から簡単に工場を移転できるわけもなく(できるならすでに東南アジアに比べて人件費も高騰していることだし、やっているはず)、トランプ大統領とメーカーの根比べに任せよう、ということか。どうせ中国国内の中小企業が声を上げてもトランプの耳に届くわけもなく、だったら取引先の大手米国メーカーのほうがずっと声も大きいし、具体的な戦略を練れるはず。

だから、そのあたりの情報がぽっこり抜けた消費やIT事情、社会ニュース関連メディアではここのところ、ワールドカップ(W杯)が最も人気を集めている。ITメディアでなぜW杯?と思うかもしれないが、男性従業員の多いIT業界では当然のように日常のホットな話題だし、もともと海外の話題に敏感な業界なので、その延長という感じもしなくない。

百戦錬磨のサッカーファンの多い中国で特に人気なのはやはり強豪チームだが、ベスト16に入ることができた日本チームも今年はたびたび話題に上がっている。

中国人にとって、いろんな意味で遠からず近からずで気になる日本。特にIT業界には40代未満の若い就労者が多いこと、ネットを自由に行き来する人たちだから日本の話題に触れること、また中産階級のバックボーン産業であるため昨今日本に行ったことがある人が多いことも理由だろう。今年は4年前、8年前のW杯に比べ、サッカーコート上の日本チームだけではなく、文化や精神性に深く言及する記事が特に多く、印象に残った。

「日本アゲ」記事はあまり好みではないが、今回のW杯をきっかけにどっと流れた「日本」、それに対して中国の最も情報に敏感な中産階級(中産業界?)がどんなふうにそれを消化しようとしているのかをご紹介しておこうと思う。

●日本叩き新華社報道に「中国だってやってるよ?」の声

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