【ぶんぶくちゃいな】続く中国の巨額脱税摘発 その先にあるのは…
中国の消費者向けデジタルコマース業界にとって散々な1年となった2021年もあと少しで終わろうというときに、これまた業界がひっくりかえるようなニュースが流れた。
中国の消費形態をここ数年で大きく変えたといわれる、オンライン動画を使って商品を販売する「ライブコマース」業界。そこで突出した売上額を誇り、文字通りの「女王」の名をほしいままにしてきた薇婭(以下「viya」)さんが地元浙江省杭州市税務局に6.43億人民元(約114億円)相当の脱税行為を摘発され、追徴金を含めてほぼ倍にあたる13.41億元(約241億円)の罰金支払いを命じられたのである。
viyaさんはすぐに謝罪文を発表。まず5億元(約90億円)をすぐに支払い、残りは積極的にお金を集めて支払い期間内に納付すると約束した。だが、それとほぼ同時に彼女のライブコマース動画を配信してきた「微博 Weibo」(以下、ウェイボ)や「抖音 TikTok」、さらにアリババ傘下のコマースサイト「淘宝 Taobao」(以下、「タオバオ」)のアカウントはすべて閉鎖されてしまった。
viyaさんは1985年、中国南部の安徽省で生まれた。十代の頃にはすでに北京に出てきて小さな婦人衣料ブティックの運営を始め、同時に歌手を目指していたがその後レコード会社と契約するも鳴かず飛ばず。一方でブティック経営が次第に波に乗り始め、その後IT大手「アリババ」傘下のコマースサイト「天猫 Tmall」(以下、「天猫」)にオンラインショップを開設してビジネスに専念するようになった。
2016年にその「アリババ」傘下の当時国内最大コマースサイトだった「タオバオ」がオンライン生動画を利用して商品を宣伝するコマースビジネスを開始した際にそのアンカーの一人に就任。2018年には彼女はタオバオ売上ナンバーワンとなり、その後もぐんぐん売上を伸ばして「ライブコマースの女王」の異名で呼ばれるようになる。
特に2020年は年始めから新型コロナウイルスの感染拡大で人々の外出が制限され、家にいる時間が増えた結果、エンターテイメント性とショッピングが楽しめるライブコマース市場へと消費者がなだれ込んだ。おかげで前年の市場全体の売上4338億元(約7兆7800億円)は、2020年にはなんと2倍以上の9610億元(約16兆2400億円)へと急成長。そして、このままいけば2022年には市場規模は1.5兆元(約27兆円)に達するだろうという予測もされる、いわゆる「新消費」の牽引業界となっている。
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