【ぶんぶくちゃいな】明星たちの「一帯一路」、節税は悪か?
やぶへび、というか、ひょうたんから駒、というべきか。なんだか面白いことが今、中国の芸能界で起こっている。
きっかけは5月28日、かつて全国国営テレビ放送局中央電視台(CCTV)の人気司会者だった崔永元氏が、SNS「微博 Weibo」(以下、ウェイボ)で人気映画監督、馮小剛氏の新作「手機2」(「ケータイ2」)の出演契約書のコピーを流したことだった。超人気女優ファン・ビンビン(范冰冰)さんのものと思われるその契約書に書かれた出演料は、なんと1000万元(約1億7000万円)。あっという間に人々の話題に登った。
そして翌29日になると、崔さんは新たに出演料5000万元(約8億5500万円)と書かれた契約書のコピーを公開。契約者の名前はぼやけてよく読み取れないが、崔さんが「2つの契約書を合わせると出演料は6000万元(約10億2600万円)、コイツは4日間しか撮影に参加していないのに」と書き込んだことで、人々は2枚目もファンさんのものだろうと想像した。
さらに6月2日に崔さんがこうした金額の違う契約書が複数存在するのは脱税を目的としたものだとつぶやき、すでにふつふつとさまざまな意見が出現して沸騰状態にあった世論は「人気女優が脱税!」と大爆発した。
もちろん、ファンさんの事務所も最初の崔さんのつぶやきの後に声明を出し、崔さんが「合法的な権利を侵犯し、デマを撒き散らし、誹謗中傷している」と抗議したが、崔さんはおかまいなし。第三者なのになぜその契約書を手に入れられたのかについてメディアに尋ねられた崔さんは、「映画界ではよくあるやり方だ。同様の契約書は引き出しにいっぱい詰まってる」と答え、その出処については皆を煙に巻きつつ、あらたな火種を放った。
6月3日になると、国家税務総局が「昨今、ネット上で騒がれている芸能関係者の『陰陽契約』による税務問題に高く注目しており、すでに関係地方税務機関に法律に基づいた調査を命じた」と発表。「陰陽契約」とは、表に出せる契約(陽)と表に出せない契約(陰)の2つを結んで、陽契約のみを帳簿に書き込んで税務局の目を逃れる脱税の手法だ。この声明に続いて、ファンさんの事務所が登記している江蘇省無錫市の税務局も調査に乗り出したことを明らかにした。
株式市場では、崔さんがこうした事態がファン・ビンビンさんやこの「手機2」だけで行われているわけではないことを明言したことで、映画関連株が急落した。
特に馮小剛監督がほぼ専属となっている映画会社「華誼兄弟」やファンさんが株主を務める製作会社「唐徳影視」などは10ポイントも値を下げた。その他の大手製作会社の株価も5ポイントから9ポイントの急落を見せたことからも、その衝撃の大きさがわかるだろう。
このあたりまでわたしは、「よくある脱税すれすれの理財話」かなぁ、と眺めていたのだが、後から次々と明らかになってきた報道を読んでいてイマドキの中国事情が見えてきたので、その一部をご紹介してみたい。
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