【ぶんぶくちゃいな】「香港」の復権
9月、中国と香港を騒がせた、なかなか興味深い事件があった。「美誠月餅事件」と呼ばせてもらおう。
「月餅」というお菓子は皆さん、ご存知であろう。中華圏の月餅とは、日本でいう「お月見団子」的な位置づけで、「中秋節」つまり「中秋の名月」にお月見をしながら味わうお菓子のことだ。だから、日本と違い、1年に中秋節を前にした時期にしか売られていない。
また、中華圏の中秋は新暦ではなく旧暦の8月15日で、やはり旧暦の「盂蘭盆」(お盆)と重なる。さらにこの日は道教では「中元」と呼ばれ、日本の「お中元」という言葉はここから来ている。
そして、面白いことに、中元=盂蘭盆=中秋節となる中華圏では、お中元の贈り物よろしく、お世話になった人、あるいはこれからお世話をお願いしたい人へと、月餅を贈り合う習慣がある。だから、中華圏の月餅ビジネスはお菓子業者にとって1年で大変重要な商機なのだ。
当然、今や中国で大人気の商品プロモーション及び販売手段であるライブコマース(人気インフルエンサーが生放送動画で商品を紹介し、即売する手段)でも、中秋節前にはそれぞれさまざまなブランドの月餅が取り上げられ、それこそ口からつばを飛ばしながら紹介され、販売される。
そのうちの1人、「瘋狂小楊哥」(クレージーな楊兄さん)が今年取り扱ったのが「香港美誠月餅」だった。
この香港美誠月餅、楊兄さんによると、「香港の有名なブランドで、ミシュランシェフによる黒トリュフ入りの高級月餅」だそうで、またそのライブ放送の最中に香港人著名俳優が出演して、その月餅を試食してみせた。観ていた人たちはてっきり、香港美誠月餅はそんなにすごい商品なのか、と思っただろう。
報道によると、香港美誠月餅はそうして30日間で約5000万元(約10億5000万円)を売り上げた。もちろん、楊兄さんにも、そして楊兄さんを擁するライブコマース会社にも、さらにくだんの香港人俳優氏にもたっぷりとコミッションが支払われるはずだった。
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