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【ぶんぶくちゃいな】見えないボトムライン――地盤沈下続く香港メディア環境

5月3日の世界報道自由デーに世界的NGO「国境なき記者団」は、毎年恒例となっている世界報道自由度の2022年度ランキングを発表した。

それによると、トップはノルウェイ、デンマーク、スウェーデン、エストニア、フィンランド、アイルランドと、北欧を中心に、欧州諸国の名前がズラリと並ぶ。新鮮なところでは8位には中米のコスタリカが、またナミビアが18位に入っていたり、さらに上から順番に見ていくと、トリニダッドトバゴやスロバキア、アルゼンチン、ドミニカなど、日頃我われがその報道の自由について考えたことがないような国々が30位に入っている。そしてアメリカは42位で、意外にもイギリスやドイツよりもずっと低い。

アジア勢のトップはなんと東ティモール(17位)で、38位に台湾が、43位に韓国が並んでいる。日本はというとずっと下がって、全180カ国及び地域のうち71位で、昨年の発表から順位を4つ下げた。ウクライナ侵攻で国内に厳しい報道規制を敷くロシアは5つ下げて155位となった。

ランキングの最下位から逆に見ると、北朝鮮、エリトリア(アフリカ)、イラン、トルクメニスタン、ミャンマー、そして中国が175位となっている。

香港は昨年の80位から大きく順位を下げて148位となった。いたしかたないだろう。実際に、昨年6月には「蘋果日報」(アップル・デイリー)の運営及び編集責任者らが「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)違反容疑で逮捕され(しかし現時点ではまだ誰一人刑は確定していない)、資金を凍結されて廃刊に追い込まれた。そこに同12月末にネットメディア「立場新聞」が家宅捜索を受け、「アップル・デイリー」事件の直後に辞任したはずの元顧問ら6人(うち2人はすでに海外移住しており、国際指名手配されている)とともに元編集長、及び後任の代理編集長、さらに元編集長の妻であるアップル・デイリー副社長が再逮捕された。同時に資金を凍結されたことにより、立場新聞は即日その運営を停止した。

また、この立場新聞事件を受ける形で、ネットメディア「衆新聞」も運営停止を決定。一部では「衆新聞はそれほど危険ではなかったはずなのに?」とも言われるが、今回はまずその裏事情から始めたい。

●「報道の自由」を守るため設立されたメディアが…

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