【ぶんぶくちゃいな】混乱続く中国不動産業界 痛し痒しの当局がまたも…
中国の不動産業界がまた揺れている。
昨年、大手開発業者の恒大集団のデフォルト騒ぎが伝えられ、大きな注目を浴びたが、当局はそれが社会に、さらには世界中の中国経済の評価に影響すると判断したのであろう、その後はずっと情報が抑えられている。
今週に入って、あるメディアが「恒大が国内で初めてデフォルト」というタイトルのニュースを流したが、わたしが気がついた時にはすでにサイトから削除されていた。このメディアは非常に信頼性の高い経済メディアなので、「デマ」を流して削除するはめになったわけではないだろう。となると、やはり恒大集団の報道がかなり規制を受けているのは間違いない。経済や市場、それこそ株式市場にもかかわる重要な情報がこうして公的に隠されてしまうところが、「やっぱり中国」だ。中国政府がのどから手が出るほど欲しがっている「自由経済体」の実態とはまだまだ遠いと言わざるを得ない。
だが、事態が深刻になればなるほど、情報は別のところから流れ出す。
というのも、4月中旬に河南省を中心とした「村鎮銀行」で取り付け騒ぎが起こり、自分の預貯金を取り戻すため行動を起こそうとした顧客の健康コードが一律「赤」になった。健康コードは今や中国の通行手形だ。「赤」は「要隔離」だから公共交通機関には乗れないし、自家用車でも高速道路に上がれない。だが、健康条件とはまったく関係なく、ある銀行の顧客だけを狙って「コードが急変」したことがメディアで暴露されると、世の中が「いったい誰が恣意的に操作できるんだ」と大議論になった。
騒ぎが大きくなりすぎた結果、一部河南省の地方役人たちが「越権行為があった」として処分され、「コード急変」問題はある程度収まったものの、次に当の取り付け騒ぎに注目が集まり始める。なぜ田舎の農村銀行の顧客が全国に散らばっており、その人たちが一挙に自分の資金を引き出せなくなったのか。先週10日には、顧客たち3000人が河南省の人民銀行(中央銀行の河南省支店)前に集結して抗議活動を展開。それだけでも注目の出来事だったのに、そこに正体不明の男たちが無差別襲撃をしかけ、これが衆人環視のもと、写真や動画で拡散されてまた大ニュースとなり、全国を駆け巡った。
それまで多くの人たちが、この取り付け騒ぎを「地方銀行が高利でカネを集めた後に資金難に陥った」程度の事件だと考えていた。だが、健康コードといい、この暴力事件といい、なにかとてつもない大きな裏があるとみなが考え始め、金融業界の闇に目を向け始めた。すると、今度は「爛尾楼」に苦しむ人たちが銀行への「ローン不払い」を宣言、銀行業界が慌て始めたのである。
「爛尾」とは「しっぽの部分がずさん」、つまり「ものごとが途中でほっぽり出される」ことを意味し、「爛尾楼」とはマンション建設途中に開発業者が投げ出してしまった事態を指す。つまり、開発業者の資金が建設途中にショートし、デフォルトを起こした状態のことだ。だが、すでに銀行とローン契約を結び、頭金も支払って毎月ローンを支払い続けている人たちは、どうみても契約通りに引き渡しができないマンションの残骸を前に途方にくれた。購入者の中には自分が買った階までまだ建設が進んでいないケースもあるという。
そんなふうに完成がおぼつかない「爛尾楼」に支払われ続けているローン総額はなんと2兆元(約41兆円)に上るというのだから、次々とあちこちから巻き起こった「ローン不払い運動」宣言は金融業界に衝撃をもたらした。そして、政府も対策に乗り出さざるを得ない大問題に発展しつつある。
そしてそこで噴き出した大量の「爛尾楼」報道に、「うち約3分の1が恒大集団にかかわるとされる」という表記があった。つまり、当局が手を尽くしてひた隠しにしている恒大集団のデフォルトの全容がここで明らかになった。
不動産業界といえば、近年過熱を理由に当局はがっちりと不動産購入条件を引き締めてきたが、上海、そして同時にその他の多くの地区でも行われていたロックダウンを解除した6月以降にそれをどんどん緩和し始めている。各地の不動産用地の売却も熱心に進めているが、実際には業界は前述したような状況で業者自体に力がない。さらに、ロックダウンによって資金フローが弱体化し、庶民の財布の紐が堅くなっている。そして、政府が期待したほどには経済効果を上げられていない状況なのである。
●2000年代の上昇ムードを演出したSOHO中国
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