《中国、外交カード化 邦人拘束11人に、また政治利用か》(産経新聞)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170525-00000068-san-cn
記事が伝えている拘束事件については、詳細を待ちます。ただ、中国では土地は国家資産であり、外国人による地質調査は基本的に違法とされています。なので、法に触れる可能性が高いです。詳細が全く書かれていない記事ですし、今後の事態の展開を知りたいです。
記事内に触れられている「フジタ」の事件について。
フジタの社員が拘束されたのは、2010年に尖閣沖で中国漁船が海上保安庁の巡視艇に体当たりを食らわせた直後で日中関係が緊張感を高めていたという背景があったことは間違いありません。ですが、当時の日本のマスメディアは拘束に至った客観的事実を取材して知っていたのに、それをきちんと記事にしたところはわたしの記憶ではありません。
フジタが中国で旧日本軍遺棄兵器処理施設建設を請け負っていたのは報道された通り事実です。ですが、拘束されたのは、その建設とはまったく関係のない軍事用地に勝手に立ち入って撮影したためです。フジタは次の同様施設建設計画の受注を期待していて、その候補予定地だった用地に立ち入り、フライングの現地視察をしていたのでした。
その後釈放されたフジタ社員たちの記者会見でもフジタ側は拘束されたときの詳細を語らず、また自分たちの正当性も主張していません。そのため、会見に出席した記者たち(中国国内で取材にあたっていた中国駐在記者ではなく、日本国内の政治関係記者たち。担当が違うので視点も違い、日本に帰ってきたのだから、関係者の口から全容が明らかになると期待していたようです)は肩透かしを喰らい、その中途半端な会見を大変不満に感じていたという話を、直接マスメディアの記者さんからわたしは耳にしました。
上記の話は報道されていないために皆さんご存じないと思いますが、念のために記しておきます(わたし個人は当時、ツイッターなどでも散々発信しています)。
事件の背景には当時、緊張感が高まっていた日中関係がまったく影響していなかったと言い切ることはできません。ですが、その不快な緊張感は日本側にもあって、ちょうど訪日中だった中国人ジャーナリストに日本人がまるで彼の責任のように非難を浴びせていたのを、随行していたわたしも見ています。
つまり、この記事を読む限り、この事件を「政治利用」しようとしているのは産経新聞ではないかと思われます。
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