【ぶんぶくちゃいな】新政党「紫荊党」旗揚げは香港版「和平演変」か?
11月に香港立法会から4人の民選民主派議員が、中国政府下の全国人民代表大会常務委員会による決議に基づいて香港政府によってその資格を抹消された。そして、それに抗議して立法会に残っていた「非・親中派」議員が2人を残して総辞職したことは、「抹消される香港」で書いた。
そのとき、即時辞職した民主党所属の許智峯氏、及び翌日に辞職した、古参議員の毛孟静氏の2人以外の議員は、手元の公務処理を終えて11月いっぱいで議席を後にした。
この間に起きた香港の変化、そしてあっさりと立法会議員の職を去った許議員に関する出来事をまとめた記事がちょうどネットで公開されたので、ぜひご覧いただきたい。
さて、民主派議員が抜けた後、立法会では植民地時代にイギリスから引き継いだ「議会政治」が終焉を迎えたと称されている。民主派は、「建制派」(制度構築派)と称する親中派や中国政府に「反対派」と呼ばれていたが、その「反対派」が議会から姿を消してしまったことになるからだ。
周知の通り、中国の議会は「全会一致」あるいは「大多数一致」が習慣化している。政府は反対されることに「慣れて」いない。もし反対に直面すれば、その力で反対する者を表舞台から引きずり下ろし、その発言権を削ごうとすることは、中国で起きているさまざまな事象から説明の必要はないだろう。
実際に香港でも9月に予定されていた立法会選挙に立候補した民主派に対して、選挙主任(選挙管理委員会の担当者だが、香港政府の公務員が担当する)から「行政長官が議会に提出する予算案に反対するか否か」という質問が寄せられた。まだ目にしてもいない議案に反対するかどうかと尋ねられても誰も答えることは出来ないのは言わずもがなだ。しかし、政府職員が敢えて突きつけたその質問から、いかに「議会で反対の声を挙げること」が忌避されるべき態度とみなされているかをうかがい知ることができる。
「意義を唱えること」「反対すること」自体が禁じられれば、議会では討論は行えず、当然ながらそれでは議会政治は行えない。
そして、香港の最高議決機関から反対派がいなくなった。さらに、今後の選挙に彼らが立候補しようとも、選挙委員は今回の総辞職を理由にその立候補資格を剥奪するだろうと予想されている。
議会に反対する者がいなくなれば、香港政府は自由自在に議案を提出し、それを通すことができる。それだけではない。林鄭月娥・行政長官は11月末に発表した3万字に及ぶ施政報告の中で、43回も「中央政府」に触れ、いかに中央政府が香港を支援してくれており、その協調が必要かを強調した。
つまり、中央政府べったりの姿勢をすでに隠そうとしなくなり、「中央政府の香港向けスポークスマン」とまで陰口を叩かれるようになった林鄭長官を通じて、今後中国政府は香港を思い通りに変えていくだろう、そして議会に残った親中派はおとなしくそれを可決し、立法会はゴム印化していくのだろう――と誰もが感じていた。
●香港建制派の「限界」
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