【読んでみましたアジア本】 日本語で聴ける貴重な当事者の証言/番外・ポッドキャスト『Asia Frontline』「白紙運動1周年:デモ参加者に聞く舞台裏と中国のいま」
とうとう11月が終わる。そして、すぐに2023年も終わる。あっという間だった。
そこで質問。みなさん、1年前はどんなふうにお過ごしだったか、覚えているだろうか?
ちょうど1年前は、我われもまだ生活の隅々でコロナの影響を大きく受けていた。そして、まさにそんなムードの下、東京JR新宿駅前では在日中国人たちが集まって、中国のコロナ対策、そしてその他さまざまな政策に抗議するデモが行われたというニュースを聞いた記憶があるのではないだろうか。
あのデモはもともと、中国国内で起こった「白紙運動」と呼ばれるデモに呼応したものだった。白紙運動とは、なんらの主張も書かない白い紙を手に、しかし政府の政策に対して不満を訴えるという形で南京の大学生が始めたものだった。それがネットを通じてあっという間に各地の若者たちの共感を呼び、同様のデモが各地で展開された。特に若者人口が多く、また日頃から経済的にも豊かでそれぞれの生活を楽しみ、また価値観を表現することに長けていた上海での行動が最も注目された。
政策に不満を唱えるデモなのに、手にした紙は白いまま(ほとんどが普通のコピー用紙だった)でその主張を書かないというのは、奇妙な組み合わせだが、それは中国の現実を生きる若者たちが生み出した、ギリギリの「主張」だった。
中国では一字でも政府や政治に対する「不満」や「反対」につながる言葉に触れれば、その行為はすぐに違法とみなされる。だが、それこそどこにでもあるような、普通のコピー用紙を手にしたことで罰せられるはずがない。そして、同調者も簡単に同じスタイルで参与できる。そして、そうやって手に手にコピー用紙を持って集まった人たちは、それぞれ心のなかで吐いている具体的な言葉は必ずしも同じではないものの、それを口にしないでとにかく「現状に不満である」とその意志を表明してみせたのである。
そしてその敷居の低さから、「白い紙を持って街角を練り歩く」という行動が全国各地に飛び火、かつては香港のデモを白眼視していた、香港の大学で学ぶ中国人留学生たちも運動に参加した。11月末に起きたこの「白紙運動」はこうして各地で12月に入っても続き、各地で義務化されていた毎日のPCR検査を拒絶する人が続出。そうして12月7日になって中国政府が対コロナ措置の解除を宣言すると、一夜にしてすべての規制が全面的に中止された。
このあと、中国ではコロナの大感染が起こり、国民のほとんどが「一度は感染した」とまで言われる事態へと陥るのだが、それでもその最中には措置が緩和されたことへの不平不満は起きなかった。一方で政府は、措置撤廃が反対運動の影響を受けた結果であることを認めようとせず、「すでに1カ月前から予定されていたことだ」との発言を繰り返した。
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