【ぶんぶくちゃいな】ロックダウン続く上海の住民をつなぐ――グループ購入とは
上海の全面ロックダウンはすでに3週間を超えた。
上海市政府は11日から、市内全域をそれぞれ地域ごとにおける直近間の感染確定者数に基づいて「封控区」(封鎖コントロール地区)、「控管区」(コントロール管理地区)、「防範区」(警戒地区)の三つに分け、過去14日間に陽性者がいない警戒地区では制限範囲内での外出を許可するとした。
当初の発表では最も管理が厳しい「封鎖コントロール地区」が7600地区あまり、次の「コントロール管理地区」が2400地区あまり、そして「警戒地区」は7500地区あまりと発表されている。だが、その後その数がどう変動しているのか、具体的に外出が許可された地区が増えているのか減っているのかは報告されていない。また最初に外出が許可された地域もすべて郊外で、市内居住人口の2割弱が暮らすとされてはいるものの、閉鎖が続いている市中心部には移動できないため、上海の機能復活にはまだまだ程遠い。
この「開放」を受ける形で、中国経済にとって大事な産業であり、上海がその中心的役割を果たす自動車業界が市郊外に設けている工場でも一部で生産が再開された。しかし、職員のほとんどが封鎖地区で暮らしており、まだ出勤できない状態では当然通常の生産には戻れず、自動車生産には大量の部品工場からの調達が必須で、製品及び部品の輸送手段も大事だがそれも完全再開には至っていない。つまり、郊外地区が開放されても相変わらず市内のほとんどでロックダウンが続く限り、経済活動の再開とはいえず、ただのパフォーマンスでしかない。
そんな国家経済のパフォーマンスよりも、市民にとって大事なのは食べ物や生活必需品、そして必要な医療サービスの確保だ。前回伝えたように既往症あるいは突然の体調不全に、本来なら対応できるはずのサービスがほぼ寸断され、精神を苛まれた挙げ句の自殺者も増えている。また、働けないまま最低限の生活条件を確保するための収入不安も増大しているはずだが、そうした人たちへの具体的なケアについてはまだ政府は対策を示していない。
つまり、SNSで流れてくる住民のナマの要求や不安はまだ解消されていない。ロックダウン終了を求める声が高まると、中央政府のお役人や医療専門家が出てきて「コロナゼロ化」の重要性を説いてそれに応える。食料や物資の不足に不満が爆発すると、突然「食品が配給された」という写真付きの書き込みが増える。あまりの豊かな配給をみなが不思議がっていると、「あそこは政府官吏の宿舎地区だから」という声が流れる。「一人暮らしの老人宅で食品がなくなった」という声が流れると、すぐにその老人にスポット的に食品が届けられたという美談も伝えられる。
だが、その声の裏にどれだけの「聞こえてこない声」があるのかは、誰も調べることができないし、伝えられない。一方でそうしたニュースや情報の交換に利用されているSNS「微信 WeChat」(以下、WeChat)では最近、「ユーザーの位置情報によってタイムラインを区分する機能を付け加えることになった。これから徹夜作業だ」というつぶやきも流れてきた。もしそれが本当なら、上海以外の土地に住む人は上海居住者の叫びを知ることができなくなる懸念もある。
そんな状況下で人々の生活をかろうじてつなぎ、支え続けているのが、「団購」と呼ばれる「団体購入」つまりグループ購入だ。こ今回はそのグループ購入について、その背景と、上海の現実についてご紹介したい。
●「野菜を奪い合う」
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