【ぶんぶくちゃいな】春節大ヒットドラマに見る、中国汚職問題の「根深さ」と「矛盾」
3年ぶりの「コロナ明け」となった今年の旧暦正月は、中国国内では久しぶりの帰省に、そして香港では久しぶりの海外旅行に出かける人たちが話題の的になった。
ただ、それらを伝えるニュースは「日常が戻ってきた」という単純な喜びではなく、まだまだ「コロナ前に日常だった頃」との距離を推し量りつつ、行間に「以前のような日々に戻れるだろうか」という一抹の不安を漂わせるものが多かった。
ネガティブ話題を嫌う中国ではあまりその「不安」を切り口にするニュースはないものの、香港のニュースを読むと、香港自体にコロナ期間中にもたらされた大きな変化ともあいまって、「今後」の不安を漂わせる論調が多い。そういう意味では、とにもかくにも「コロナ復興」に全力を尽くせる中国と違って、2019年デモ関連の裁判が続き、さらに「体制立て直し」を画策する香港ではまだまだ社会の重苦しさは当然のものといえるだろう。
だからだろうか? 昨年の香港では久方ぶりに映画の話題作が続いた。特に今年の旧暦正月に公開された、スタンダップコメディアンの黄子華さん主演の「毒舌大状」が大人気を博しており、封切りから23日後に興行成績が9000万香港ドル(約15億円)を突破した。このままいけば、香港映画の史上初1億香港ドルを超えると言われている。
映画のタイトルにある「大状」とは、法廷での弁護を担当する弁護士「バリスタ−」のこと。かつて、貧しい被告人の弁護に失敗し、被告人が入獄することになったことを苦しむ主人公の法廷弁護士が新しい証拠を手に入れたのを期に、新たに被告人のための弁論に立つ。そこに立ちはだかるのは、大金持ちとそれをバックアップする社会権力という構造でストーリーが展開する。
作品については筆者もまだ見ていないので詳しいことは論じられないが、ここ数年の香港の司法事情から考えても主演がコメディアンの黄氏だから観る人たちを「スカッ」とさせる要素が沢山盛り込まれているのだろうな、と予想がついた。しかし、それをただの娯楽ニュースだと思っていた筆者にとって意外だったのは、実際に法廷に立つ弁護士が新聞のコラムなどで「実際の法廷ではありえないことだが、見ていて非常に楽しめた」「辻褄が合わないところもあるのだが、非常に考えさせられる場面もあった」とする声が上がっていたことだ。
そうした声を読んでみると、作品は法廷劇の形をとりながら、「法律とはなにか」「平等とはなにか」「貧富の差」「社会の平等性」といった疑問を観る者に投げかける形になっているらしい。
実はこうした「現実への反問」こそが、昨年以降の映画界を支えている。香港映画といえばかつてはアクションやドタバタコメディが主流だったが、昨年は底辺の庶民の生活を描いたり、家族の関係をテーマにした作品が活況を呈したというのも特徴だった。
そんな昨年の人気作の一部が3月10日から19日に開かれる「大阪アジアン映画祭」で早速取り上げられるらしい。「毒舌〜」はさすがにまだのようだが、昨年公開された作品が一挙に6本も上映されることになっている。ご興味ある方は、ぜひウェブサイトで確認していただきたい。
●過去9年間で視聴率ナンバー1となったドラマ
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