《蓮舫氏の台湾籍放棄 何が問題なの? 論点を整理》(朝日新聞)

http://www.asahi.com/articles/ASJ975FTQJ97UTFK00D.html

《日本政府は台湾と国交がないため、日本国内で台湾籍を持つ人には、中国の法律が適用されるとの立場をとる。中国の国籍法は「外国に定住している中国人で、自己の意思で外国籍を取得した者は、中国籍を自動的に失う」などと規定。中国法に基づけば、蓮舫氏が日本国籍を取得した85年の時点で、中国籍を喪失したという解釈が成り立つ余地がある。》

「日本は建前上台湾を中国と認めている→中国は他国の国籍を取得した時点で中国籍を捨てたと判断する」という情報は新しい。確かにその通りだな。

ただ、中国政府の態度もかなり曖昧。というのも、昨年起こった香港書店主拉致事件では、拉致された5人のうち2人は中国出身でスウェーデンとイギリス国籍の取得者だったが、拉致後の中国側の言い分は「中国籍を抜いていないので中国公民である」だった。つまり、ここにきて中国政府は「二重国籍状態になった」人に具体的に「中国籍を抜く」手続きが必要となることを明らかにした。

わたしの知り合いで日本籍を取った中国出身者は、「バカ」がつくほど真面目な人なのだが日本の国籍取得後、大使館で中国籍離脱手続きを取ったという。しかし、実際には中国国内では海外のパスポートを取得したあとも、そのまま中国の身分証明書(IDカード)を使い続けている人はゴマンといるそうだ。ご存知のとおり、中国では外国人と国内人がいろんな面で大きな待遇の差を受ける(高速鉄道の切符も外国人は窓口に並ばないといけないが、中国人はIDカードで自販機で買える)ので、たとえ政府を信じていなくても便宜上IDカードが手元にあったほうが便利なのである。わたしも中国にいた時に、「ニセモノのIDカード作っちゃえ!」と勧められたことは1度や2度ではない。

さらに「国籍の離脱」手続きについて、アメリカ人(父)と日本人(母)の間に生まれた知り合いは今は「アメリカ籍」だが、日本の国籍を抜く手続きはしていないという。「日本のパスポートの期限が切れた時点でそのまんまになっている」のが実情だとか。だから「日本の国籍が残っている可能性はある」と。ついでにいうなら、「もしトランプが当選したら、その辺のことを調べようと思っている」とのことだった。

なお、二重国籍を認めている台湾(中華民国)の場合、「他国籍を取っても台湾では後腐れがないので、わざわざ離脱手続きをしに行くヒマ人はいないよ」というのが、かつて家族ごとの移民を目指した台湾人の友人の話だった。二重国籍を認めている側は、あまり離脱には熱心ではないというのはわかる。それをわざわざ離脱手続きに行った蓮舫さんのお父さんは、根本的に真面目だったのかもしれない。#私的NC

********************************************************************
人々の知る権利と考える権利。
21世紀以降高まる権利意識とともに
大きな変化を遂げたメディアと市民社会を描く、
拙著『中国メディア戦争 ネット・中産階級・巨大企業』(NHK出版新書)
書籍版、Kindle版ともに発売中です。
********************************************************************

このアカウントは、完全フリーランスのライターが運営しています。もし記事が少しでも参考になった、あるいは気に入っていただけたら、下の「サポートをする」から少しだけでもサポートをいただけますと励みになります。サポートはできなくてもSNSでシェアしていただけると嬉しいです。