通信の安定性を左右するジッターとワンダーを徹底解説
高速で便利な現代のネットワーク通信。その裏には、常に新たな課題が潜んでいます。今回は、移動体ネットワークの要となる「同期イーサネット(Sync-E)」に焦点を当て、特にジッターとワンダーについて詳しく解説します。これらは、データやビデオ配信の品質を左右する重要な要素なのです。
1. ジッターとワンダー:Sync-Eの安定性を脅かす存在
ジッターとワンダー。この2つの現象は、Sync-Eの性能に大きな影響を与えます。ジッターは信号の微細な揺れ、ワンダーはゆっくりとした揺れを指します。車の運転に例えると、ジッターは瞬間的なハンドルのブレ、ワンダーは長時間かけて道路から逸れていく感じでしょうか。どちらもSync-Eの信号安定性にとって重大な問題となります。
**ジッター(Sync-Eの高周波数変動)**10Hz以上の周波数変動を指すジッター。Sync-Eにおいて、このジッターが過度に発生すると、データの誤りや損失につながる可能性があります。まるで、どんなに慎重に運転しても、車が勝手に揺れ動くようなものです。
**ワンダー(Sync-Eの低周波数変動)**10Hz未満の低周波変動であるワンダー。Sync-Eのタイミングを制御する内部クロックの安定性を損なう原因となります。長距離ドライブで、気づかないうちに少しずつ道を外れていくような現象です。
2. Sync-Eにおけるジッターとワンダーの発生要因
Sync-Eシステムでジッターやワンダーが発生する原因は、内部要因と外部要因の両方に存在します。
Sync-E機器自体が生み出すジッターSync-Eのクロック発振器のノイズや外部信号の影響により、微細なジッターが発生します。例えば、スマートフォンの時計が徐々にずれていくようなイメージです。Sync-Eで正確なデータを送信しても、デバイス内部でわずかな誤差が生じることがあります。
Sync-Eにおけるワンダーの発生要因Sync-Eネットワークのタイミング回復や再生プロセスがワンダーの原因となります。特に、Sync-Eで基準として使用されるクロックの微小な誤差が、長期的なワンダーを引き起こします。温度変化やSync-E機器の経年劣化も、タイミングのズレを助長する要因となります。
3. ITU-T規格:Sync-Eにおけるジッターとワンダーの国際標準
Sync-Eシステムにおけるジッターやワンダーの許容範囲は、国際電気通信連合(ITU-T)が定める規格によって厳密に管理されています。特に、G.8261とG.8262という標準が、Sync-Eのジッターとワンダーの許容範囲を規定しています。
Sync-Eにおけるジッターとワンダーの制限値これらの規格は、Sync-E機器が生成可能なジッターとワンダーの上限を明確に定めています。例えば、EEC(Ethernet Equipment Clock)が許容するジッターのピーク値が規定され、Sync-Eネットワーク内の各機器がこの値を超えないよう制限されています。
Sync-Eの測定方法と機器ITU-T規格は、Sync-Eのジッターとワンダーを測定するためのテスト装置の要件も詳細に規定しています。ジッター測定では、Sync-E信号のクロックを復元して位相変化を検出します。ワンダー測定はより複雑で、時間間隔誤差(TIE)を大量に収集し、MTIE(最大時間間隔誤差)やTDEV(時間偏差)などのパラメータを算出します。
4. Sync-Eにおけるジッターの測定
Sync-Eシステムでのジッター測定は、高精度な手法が求められます。
Sync-Eの出力ジッター測定Sync-Eにおけるジッターの単位は「UI(Unit Interval)」です。1 UIは1ビット周期に相当し、例えば1ギガビット・イーサネットの場合、1ビット周期は800ピコ秒です。Sync-Eの出力ジッター測定には、高周波数フィルターを使用し、ジッター成分を適切に分離して計測します。
Sync-E機器のジッター耐性テストSync-E機器のジッター耐性は、デバイスがどれだけのジッターに耐えられるかを確認するためのテストです。専用の測定器でジッターを徐々に増加させ、Sync-E機器がエラーを検出するまでの耐性を測定します。これは、スマートフォンの耐振動テストに似ています。
5. Sync-Eにおけるワンダーの測定
Sync-Eのワンダー測定は、ジッター測定とは異なり、外部の基準クロックとの比較で行われます。基本的な測定方法は、時間間隔誤差(TIE)を計算し、それを基にMTIEやTDEVなどの指標を算出します。
最大時間間隔誤差(MTIE)in Sync-EMTIEは、Sync-Eシステムにおいて指定された観察期間内のTIEの最大値を計測したものです。観察期間が長くなるほどMTIEも大きくなる傾向があります。
時間偏差(TDEV)in Sync-ETDEVは、Sync-Eにおけるワンダーのスペクトル内容を計測するための重要な指標です。特定の観察期間ごとにTIEを分析し、周波数成分を抽出することで、Sync-Eシステムの安定性を評価します。
6. Sync-Eの測定機器に関する考慮点
Sync-Eシステムのジッターやワンダーを測定する際は、使用する機器の選択が極めて重要です。一般的なオシロスコープやスペクトラムアナライザーでも基本的な測定は可能ですが、ITU-T規格に準拠した正確な測定結果を得るためには、Sync-E専用のテスト装置が推奨されます。これらの専用装置は、データの収集や解析を自動化し、Sync-Eシステムの性能評価における結果の信頼性を大幅に向上させます。
もっと詳しく知りたい方は、是非以下のサイトをご参照ください。
※CX3002 Technical Brief SyncE Jitter and Wander.pdf