世界は悪意に溢れている。君たちはどう生きるか
空飛ぶ、わんたんです。
普段はキャラクター業界でキャラクターグッズを作ったりキャラクターの権利を管理したりしています。そしてpodcastで妖怪について発信しています。
さて、先日『君たちはどう生きるか』観てきました。
podcastで発信したけど、podcastってそこまで親しみない人もいるよね。
なので今回は台本文字起こしです!(でも配信聞いてね)
podcast
Spotify
先ず予めお伝えしたいことはこの記事は映画の評論でも解説でもありません。
キャラクタービジネスをする傍ら、民俗学や妖怪について数年勉強しているわんたんの解釈です。
ジブリって面白いよね!と色々な人に話しかけてみたいなと思い文章にしました。
それでは!
スタジオジブリは実在した!
わんたんは普段キャラクター業界でお仕事をしています。
その中で「スタジオジブリ」さんは「出会えない会社」という印象。
従業員数190人とありますが、一生名刺をもらえないのでは…。
なのでエンドロールのスタッフ名に感動しました。スタジオジブリは…本当にあったんだ!
アニメーターはもちろん、ジブリパークのスタッフの名前もあるところを見るとスタッフへの愛が深いとジーンとしました。
これから何十年と残る作品に名前が載ったというのは心の底から誇らしいことだと思いました。
そしてエンドロールといえば制作協力が豪華と話題になりましたね。
押井守「プロダクションIG」
細田守「スタジオ地図」
米林宏昌「スタジオポノック」
庵野秀明「スタジオカラー」
すげぇ〜
個人的な考えだけど、このエンタメ業界、他作品は「敵」ではない。
もちろんあのキャラクターいいなぁと思うことはたくさんあるけど、一人勝ちを望んでいるのではなく、全体が潤うことが大事なので。
わんたんはまだまだひよこ組さんなので業界全てのことを把握しているわけではないけど、先人は偉大だと思いました。
7人の小人?おばあさんの正体とは
今回注目したのはあのかわいいおばあちゃんたち!
ジブリにはかわいいおばあちゃんがたくさんいますよね。
作中、夏子さんのお屋敷のおばあちゃんが複数人だと気づいた瞬間、先ず数えました。
ひぃふぅみぃ…7人だ!!
わかった!
この話は白雪姫だ!!!
白雪姫といえば世界初の長編アニメーション作品。
そこに登場する個性的な7人の小人といえば、ドック(先生)、グランピー(おこりんぼ)、ハッピー(ごきげん)、スリーピー(ねぼすけ)、バッシュフル(てれすけ)、スニージー(くしゃみ)、ドーピー(おとぼけ)。
先生っぽいおばあちゃん、おとぼけっぽいおばあちゃんいましたよね!
これをベースに物語が進むのだとテンションがあがるわんたん。
真人が寝込んでいた時にお婆さんが世話をするシーン
真人が白雪姫で何かから目覚める話かな^^
あ、もしや宮崎駿の過去作から7作がオマージュになっているのかな^^
死の世界のキリコの家で6人の小人+キリコに囲まれていたシーン
キリコはグランピー、おこりんぼだ^^
もしかしたらそれぞれの小人が眞人に何かを与えるのかな^^
眞人は一体何で目覚めるのかな^^
…
…
白雪姫関係ないんかい!!!
結構真剣に白雪姫で追いかけていたのにとガックリ。
ただ、「7」という数字は白雪姫以外にも使われています。
妖怪の7人ミサキ、七不思議、七つの大罪などなど。
実は「7」という数字は究極数字として、特にキリスト教では最も重要な数字とされていました。
有名なものでは"神が七日間で世界を作成した"。
6日で世界を作成し、7日目に休んだ、とかね。
なので小人の数が7でなければならなかったのだろうけど白雪姫ではないんかい!と思っていました。
ただおばあさんのモチーフはやはり白雪姫の7人の小人だと思います。役割が違うけど。
でも実は他にもディズニー作品っぽい展開がありましたね。
中盤は白雪姫だ〜と思っていたけど、後半は不思議の国のアリスを思い出させる作品でした。
ハートの女王のインコ大王とトランプの兵隊インコ
崩れていく世界から脱出する眞人はアリスのような目まぐるしさを思い出させました。
同じこと思った人はいないかな。
死の世界を生きるそれぞれの悪意
なぜ、眞人は死の世界に行けたのか。
行ったのか、ではなく、行けたのか。
そして夏子やキリコもなぜ行けたのか。
この物語の重要なキーワードは「悪意」
実はあの世界で生活をする者には「悪意」があります。
眞人の「悪意」
戦争から疎開した学校でいじめられた眞人は帰宅中に自らに血が出るほどの怪我を負いました。
初日でそこまでプライド傷つくか??
と、思ったのはよくないね。
何故怪我を負ったのか。
戦争で母を亡くし、父は工場勤務で戦争で儲かっている複雑な心境。
その中で母の妹が義理の母親になる事実。
そんなフラストレーションかも知れないし、もしかしたらただ青鷺を捕まえたかった?
もしかしたらこの理由を特定することはできないかもしれない。
ただあの傷は「眞人の悪意」と言っていました。
眞人は悪意を持って死の世界に行ったのです。
夏子の悪意
夏子母さん、時系列おかしいですよね…。
「戦争が始まって3年目で母が亡くなり」
「4年目に疎開した」
夏子とはこの疎開先で出会います。
そしてその時夏子は臨月でした。
ん…
ん〜
もしかしてお母さんが生きていた時から関係があった?
お父さんは疎開先の工場勤務員と既に関係性が築けていたということは、疎開前から通っていたのだろう。
眞人が序盤喋らなかったのは新しい母ができることのモヤモヤではなく、浮気を知っていたからなのかも。
これが夏子の「悪意」
キリコの悪意
キリコ(若)にも眞人と同じ傷がありました。
あれは同じところに傷があるのではなく、同じような傷なのかな。
つまり、自らで自らを傷つけたということ。
※わんたんは見逃したのでSNS情報からの考察
キリコの部屋には綺麗なワンピースがあったようです。
それは死の世界には不釣り合いなもの。そしてキリコにも不釣り合いなもの。
おそらくこのワンピースはキリコがこの世界に着てきた服。
しかし現実世界のキリコも決して裕福な家柄ではなかったはず。
考えられることは誰かにもらったもの。
それはお金持ちで、キリコが近づける人。
つまり、大叔父様からのプレゼント。
もしかしたらキリコと大叔父様は関係があったのかもしれません。
他のおばあちゃんが吸わないタバコが好きというのも意味深ですよね。
と、いうと考えが飛躍しすぎ!と思うかもしれませんが、
何故、キリコがあの世界に行けたのかと考えたら、何か悪意があった、そして大叔父様の家系と深い関係がある、というのがあると思いました。
キリコは白雪姫の7人の小人のグランピー(おこりんぼ)。強くて優しい女性でした。
そして、、迷い込んでいない人にも悪意があると思いました。
ヒミの悪意
産屋に入ってはいけないとわかっていたのに眞人を案内した。
これはこの世界が何かを知った上で終わらせようとしたのかな。
インコの悪意
わんたんは鳥が大嫌いなのでこの時点で悪なのですが。
インコはピーチクパーチク煩いアニメファンなのかなと思いました。
インコは「敵」ポジションなのにどこかかわいい姿をしている。ただその手には刃物を持っている。
よりによって人間のような言葉を発することができるインコが採用されたのは
宮崎駿にとってのアニメファンは「煩くてかわいい子」なのかもしれない。
そして意外と悪意のなかったのが青鷺。
眞人からすると悪かもしれなかったけど、結局何故かいい人?鳥でした。
なんで??ってくらい、無駄にいい人(鳥)。
実はアオサギは日本では妖怪として伝わっていますが世界的にみたら縁起のいいものとされています。
エジプト神話では太陽は卵から生まれた、その卵を温めかえしたのがベヌウという鳥。
このベヌウはアオサギのような姿をしているとされています。
またヨーロッパではあの世とこの世を行き来するメッセンジャーのような役割があるともされています。
podcast 夜に光る!世界を作った妖怪青鷺【君たちはどう生きるか公開記念】
この中でのアオサギは見届け人(鳥)に過ぎないのかも。
君たちはどう生きるかはオムニバス
「君たちはどう生きるか」の作品の見方はオムニバスだと思いました。
抱き合わせ作品だと思ったら消化しやすい。※理解できるとは言ってない
実は作中勝手に話が変わっていると思うと見やすいです。
死の世界でお墓が出てきました。
明らかに岩石信仰です。
鳥居のようにも見える巨大な岩はもののけ姫のモロの家にも出てきました。
わんたんはきました古代の自然崇拝〜
そうか、ここで「見るなのタブー」も入れたのか〜
と思ったのですが、何も回収されていない、、
そして途中に登場する「ワラワラ」という生命体。
これも印象的なキャラクターの割にほんの少ししか登場しなかった。
もののけ姫の「こだま」は不気味な姿をして、物語の最後にも登場したのに、「ワラワラ」はただかわいいだけですぐいなくなる。
「ワラワラ」の正体はアニメーターだと思いました。
米林監督や庵野監督のようにアニメーターの卵から世界的な監督になる場合もある。
しかし多くは途中でペリカンに食べられたり火に燃やされたりする。
おそらくヒミの火は宮崎駿の才能。
宮崎駿の才能で命を奪われたアニメーターはたくさんいるし、宮崎駿の才能で生かされたアニメーターもいる。
これが「ワラワラ」のシーンだと思いました。
そしてそして、終盤に登場した13個の積み木。
13?キリスト?と思いましたが、実は宮崎作品の13のようですね。
それを積み上げろという大叔父と拒絶する眞人。
スタジオジブリそのものなのかな。
…と、意味深な描写も多かったのですが物語として繋がっている訳ではない。
今作は宮崎駿の人生そのもの。
全ては繋がっているとは限らない。
なので岩石信仰の話も実は途中で終わっていたのだろう。
今作はオムニバス形式で、勝手に終わっているので要注意。
最近の作品は「伏線ブーム」だけど、今作はそれに当てはまらない。
世界は悪意に溢れている。君たちはどう生きるか
では一体私たちは「君たちはどう生きるか」を見て何を感じたらいいのか。
今作のキーワードは「悪意」
この世界は悪意に溢れている、というのがメッセージなのかもしれない。
わんたんは、それでも生きている私たちは幸せなのだ、という諦めにも近い肯定を感じました。
実は漫画ナウシカもこの答えだったと記憶しています。
podcast 『君たちはどう生きるか』ナウシカが奪った未来の答え
ん 漫画ナウシカの葛藤(うすら記憶)は、
争いや悪意のない世界を望み世界浄化を図る旧人類と、そんなのは間違っていると主張するナウシカ。
ナウシカは争いや悪意のない世界を否定するために旧人類を滅ぼした(ようだった気がする)
実はこの頃と宮崎駿の主張は変わっていないのだろう。
今作はナウシカ2でもシンナウシカでもない。
しかし、世界は悪意に溢れている。君たちはどう生きるか。が根本テーマなのかもしれない。
最後に。
わんたんは本を読みません。映画もたいして詳しくありません。
なのできっとこの考えはいわゆる博学の人からすると「なんにもわかっていない」のだと思います。
でもこの世界は博学な人の方が少ない。
大勢いるあんまり頭のよくない人の感想文だと思って斜め読みしていただけたら幸。