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誰かの願いが届くとき 39 魔性系ピアニストの子

「舞島くんのコンチェルトと、最後は皆んなで気持ちよく歌って終わるような曲があるといいな。

ホールニューワールドか、サウンドオブミュージックのエーデルワイスみたいなの。

想像したら凄く楽しくない?

知らない人同士が、帰り道、幸せな気持ちを抱いて、これから先も楽しいことが沢山待ってるって、皆んな同じ気持ちなのかもって感じられたら、、」


またまた帆乃がお題を出してきて、追いつかない冬は目眩を覚えた。

直輝は考えながら言う。


「このピアノコンチェルトのコンサートをやるとして、映画と、映画のサウンドトラックのアルバムツアーをファンに届けられるな!

冬、ファンに心配かけたから、これでメチャクチャいい恩返しが出来るじゃないか!」


確かに、新しく生まれ変わったwho youを見てもらうのに最高だと思う。

それにしても、ピアノと映画の主演、監督、楽曲制作、コンサートが、何とかなるだろうかと冬が考えていると助監督の村雨くんが言った。


「冬、映画の監督は帆乃ちゃんでいいんじゃない?

演出も、、

誰よりも、冬の魅せ方を心得ている気がするんだけど」


それを聞いて帆乃は慌てて否定する。

「そんなことないです!全くの素人で経験も知識も無くて、無理です!

どうしよう、、舞島くん、私出しゃばり過ぎてる?」


帆乃が心配顔で冬を覗き込んだ。

冬は帆乃の願いを何でも叶えたいので


「難しく考えなくて良いんだ。

帆乃が一番わかってるんだから、当然だよ。

どんなビジョンか、帆乃には全部見えているんだろう?

オレはそれに、ひたすら超えて行けるように尽くすだけだよ」


冬の帆乃に対するダダ漏れな思いを感じた直輝は言った。


「そうそう!帆乃ちゃん。

いい作品が出来るなら、監督や演出なんて皆んなで考えながらやるんだし。

ただ方向性を決めるのは、やはり核となる帆乃と冬ってことだから、思いっきり皆んなを使いまくって好きなようにやればいい。

俺らはその為にいるんだから、いいね!」


直輝の温かい言葉に、帆乃は少し自信を持った。

「映画の中に出てくる人、エキストラさん達にファンの人がやってくれないかな?

舞島くんのファンなら、きっと幸せな気持ちで演じてくれるでしょう?

そう言うのが凄くこの映画で大切なの。

画面の隅々まで幸せな気持ちを溢れさせたいの。

あと、ファンタジーなシーンはアニメーション使いたいな。

手の込んだのじゃなくて、私が良いなーって思う素敵なクリエイターさんがいるの。

それから、杏役の女優さんは歌と踊りが出来る人がいいな。

舞島くんの真舟役と、一緒にダンスして歌ったら素敵じゃない?」


溢れまくる帆乃のアイデアは尽きることがなく、皆は必死で頭を回してそれに応えられるかを考えている。

松田がコンチェルトのYouTubeを観ながら言った。

「これ、2章のピアノの合間に冬を早着替えして天使に生まれ変わらせたらええんでないかの?

バックにイメージ映像作って、ライティングで演出してもええな。

もちろん、そのイメージも帆乃にはあるんよな?

帆乃ちゃんや、是非絵コンテか文章かにしてワシらにアイデア下ろしてくれんかの。頼むで!」

助監督の村雨くんも言う。

「そうだね。

どんな絵が欲しいか言ってくれたら、近づけるから、是非アイデアを共有して欲しい」


どんどん具体的な話が進む中、冬の母から電話がかかってきた。


「冬!灰谷さんにオケ振ってもらえるわ。

私があなたの中学時代のショパンの映像と、この前のwho youのライブ映像を見るように言ったら、灰谷さんの恩師が見る前から分かった、話付けるって。

それで、君は一体何を育ててたんだって笑ってらしたわ」

そう言って冬の母は明るく笑い電話を切った。

何だかよくわからない話だったが、電話ひとつでオーケストラと新進気鋭の指揮者が決まったのだから、冬の母が凄いのは良くわかった。

冬は思い出したように言う。

「僕のお母さん、昔は凄く自由奔放なピアニストだったって聞いたことある、、

それが今になって役に立つんだね、、」

直輝は気になって調べたくなったが、冬のルックスは母譲りなので、きっとモテてモテて大変だったのはわかる気がした。


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