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誰かの願いが届くとき 15 重要な秘書

直輝は、これからの事を考えて、もう1人マネージャーとして有能なスタッフが欲しかった。

自分に気が付かない部分を細やかに配慮し、冷静に全体を見渡し、しっかりとサポートしてくれる人物。

デビュー前なので何とかなっていたが、
色々とやらかしていた。

主にケアレスミスなのだが、日時や手配の勘違いとか、忘れ物とか、ダブルブッキングとか、、

こういうのは、本来あってはならないが、無理なお願いをして何とかして来た。

デビュー前の冬に使える資金は限られていたが、幸いCMが決まったので早速募集をかけた。

日本語以外に英語も使えて、管理能力があり、周囲と円滑に調和が取れ、交渉力があり、冷静沈着で健康な人物。

何人か面接したが、この人だと思う的確な人材は中々見つからない。

そんな時、カメラマンの松田が話を持ってきた。

「ナオキマン、ワシの従妹でCAやっとったんじゃが、腰を痛めて辞めた子がおるんじゃ。

クールビューティーで、メチャしっかりしとるんよ!

但し、やるかどうかは分からんがの」

松田の従妹と聞いて危ぶんだが、CAの経験者となると話は別だ。

「えっ!?マジで?会いたい!!直ぐにでも。

連絡して良いか?」

松田は気軽にスマホを操作し始めた。

「え~よ~、おととい、じーちゃんの葬式で会うたんよ。

え~とな、、沙織ちゃん、沙織ちゃんと」

マッサンのじーちゃん、ありがとう!天国に迷わず行けよと、直輝は言って、早速、松田の従妹の大林沙織に連絡を取り、話をする事になった。

事務所に約束の5分前にやって来た大林沙織は、大手航空会社の元キャビンアテンダントというだけあって、見るからに美人でTPOをわきまえ、ビジネスマナーを身につけた素晴らしい人だった。

彼女はハッキリとした口調で言った。

「お話はわかりましたが、私はマネージャーという職業に知識はございません。

お役に立てないと思います」

一通り面談を終えた後、大林に断られそうな直輝は、これ以上の人は他にいないと思った。

それで近くのスタジオでダンスレッスンしていた冬に、何でもいいから急いで事務所に来るように言いつけた。

「とりあえず、マネージメントする本人に会ってから返事を、、」

そう言って大林を待たせていると、元気に走ってやって来た冬が息を切らせて入ってきた。

髪の毛はクシャクシャで、相変わらずラフなジャージとパーカー姿だったが、入って来た途端に、場の空気がパッと一変したのがわかった。

大林は、直輝が最初そうだった様に、冬を見た途端、言葉を失い目が釘付けになっていた。

「、、直輝さん、どうしたの?」

ハァハァ息をしている冬に、直輝は説明する。

「こちら、大林沙織さん。

冬のマネージメントのサポートをしてもらおうと思ってる。

挨拶して欲しい。

大林さん、これがウチのwho youです。

是非、もう少し考えて貰えませんか?」


直輝の意図を正確に読み取った冬は、照れもせず直ぐに挨拶を始めた。

「お待たせしてすみません、大林さん。

僕が冬です、初めまして。

この事務所に不釣り合いなほど、素敵な方ですね。

先はどうなるかわかりませんが、沢山楽しいこと、良い事があると思ってやっています。

どうぞ僕らに力を貸してください」

大林の目を見て熱心に話しかけた冬は、言い終わるとキチンとお辞儀をした。

それを受けた大林は、まだ少年の面影が濃く残る冬を見て感心した。

「、、、凄く丁寧なお辞儀ですね、とても好感が持てます。

私は身体を壊して、前職を諦めたのですが、貴方の期待通りに務まるでしょうか?」

大林も率直に返した。

冬の持つオーラもだが、物言いが丁寧で優しくて素直な事に驚きつつも、一番自分の心配な事を切り出す。

「妥協はしないけど、無理強いはしません。
大林さん次第です。

大丈夫としか、僕には言えません」

冬はひたむきに、じっと彼女を見つめる。

直輝も畳み込むように、冬の持つ可能性と、冬の真っ直ぐで純粋な美しい表現者の力を信じていると、熱く語る。

「大林さん、僕らも想像出来ない旅を一緒にしませんか?

夢見る力なら、何処にも負けません!」

冬の持つ未来への可能性を感じ、妙に熱量の多い2人の催眠術に、すっかりかかってしまった大林沙織は

「やります。

私の能力全てを差し出します」

と、何故だか分からないうちに言ってしまった。

それを受けた直輝と冬は、大喜びした。

「良かったね!直輝さん

これで、色々迷子にならなくてすむよ」

喜び合う2人を見て、大林は意味が分からずだったが、後で嫌というほど、この2人がボケかまし、とんでもない目に遭わされ、運命を変えられるとは知るよしも無かった。

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