誰かの願いが届くとき 24 GOOD LUCK!
病室に入ってきたバッシーと松田に、冬は話しかけた。
「バッシー、明日、直輝さん来てくれるかも。
松田さん、ありがとう。
さっきの、、」
言いかけた冬に向かって、松田は思いっきり眉を吊り上げて静止させ、怪訝な顔を見せるバッシーに愛想よく言った。
「あ~、沙織ちゃん!
冬がどーしても、病院近くの商店街にあるタコ焼きが食べたいんと。
ワシが美味いって自慢しちまったからさぁ。
悪いがの、買うてきてくれるかい?」
ますます怪訝な顔をするバッシーだったが、松田の無言の圧力を感じた冬も、恐る恐るおねだりした。
「バッシー、もし、良かったら僕も食べてみたいなー?
あ、マヨネーズは無しでね!」
「、、良いですけど、間食は大丈夫なんですか?」
何か言いたげな表情をしたバッシーだったが、冬のお願いには弱かった。
「先生は、体重がかなり減ったから、食べたいものは何でも、食べれる時に食べて良いって言ってたよ」
冬がすっかり痩せてしまって、可哀想に思っていたバッシーは、仕方ありませんねと言って出て行くと、早速、松田はベッドサイドに座り話し始めた。
「実はの、沙織ちゃんはワシの許嫁なんじゃ。
しかし、沙織ちゃんは素直にワシと結婚するんが恥ずかしゅうて無視するんよ。
そこでじゃ!
冬、お前が沙織ちゃんに口添えしてくれんかの?」
意外な話をする松田に目を丸くして驚く冬だった。
「、、いとこって、結婚出来るの?」
「出来る。
それにワシと沙織ちゃんの叔母さん、つまりワシの母ちゃんは血が繋がってないの。
ワシは先妻の子じゃけん」
「へぇ、、そうなんだ。
ところで、松田さんはどうしてバッシーと結婚したいの?」
冬の素朴な疑問に、松田は回りくどく答えた。
「そりゃあ、沙織ちゃんは田舎のちょっとした家柄の1人娘で、後継がいるじゃろ。
今時じゃが田舎はまだまだ古いんよ。
それにワシは沙織ちゃんが小っちゃい時からよう知っとるけーのー。
沙織ちゃんの母ちゃんとワシの母ちゃんは姉妹で仲良いし、ワシの人柄もツーカーじゃけんの、気心知れとんの。
ピッタリじゃろ!」
「それだけ?
お互い好きなら、僕が口出さなくても。
余計なこと言ってバッシーに嫌われたくない」
冬は確信を突かずに誤魔化す松田に呆れて言った。
「おいコラ!
ワシの話をちゃんと聞いてねーな。
沙織ちゃんはワシのこと、たぶん嫌いではないが、わざわざ結婚する程でもないから、無視しとるんぞ!
そこを、お前が沙織ちゃんに上手いこと言っての。
そういうの大得意じゃろが!」
そんなこと言われても、と冬は思った。
困り果てて、
「、、松田さんは、バッシーの為に何が出来るの?」
「何って、、子供を作って、沙織ちゃんを眺めて、、飯も作るか、、片付けも出来る、、
ダメか?」
話にならないと、冬は首を振る。
「バッシーはタバコとお酒を飲む人が苦手だよ。
松田さんは、バッシーの為に辞められる?」
うっ!とベビースモーカーで酒好きの松田は困った。
「、、タバコは子供のためにも辞めるつもりじゃが、酒は、、、」
「それを約束してくれたら、バッシーに話しても良いよ」
冬が話すということは勝ったも同然なので、松田は苦渋の選択をした。
「、、、わかった、、」
冬は笑って
「あと、真剣にロマンティックに愛を伝えてね。
そうすればきっと良い返事もらえるよ!」
真剣とロマンティックが何より苦手な松田はマジかーーと唸った。
「、、、冬、鬼畜め、、お前、ワシをどうしたいん?」
キョトンとして冬は答える。
「2人とも幸せになってね。
僕の大切な人達だから。
GOOD LUCK!」