国際捕鯨員会の勧告は正当か
国際捕鯨員会(IWC)の勧告は、単純多数決で成立し、法的拘束力のある国際捕鯨取締条約の付表改正(4分の3以上で成立)とはその性格を異にする。一般的にはソフトローに分類されるが、場合によっては決議内容の実施の積み重ねなどによって、いずれは実質的に法的拘束力が認められる場合もある。
ただし、これまでに成立したIWCの勧告はさまざまな性格をもっており、単に「実施の積み重ねなど」があるからといってその法的性格を評価することには慎重にならなければいけないと思う。
例えば、勧告の内容が鯨の保護とその持続可能な利用といった条約上の2つの目的のどちらか一方のみを強調するにすぎないものになっていたり、IWC内に設置されている科学委員会の結論を無視した内容であったりしている。
したがって、法的性格の問題(成文化後のありよう)以前に、そもそも、その「正当性」(成文化するまでの経緯)にも問題があるものと思われる。
しかも、IWCはその加盟国の構成が移ろいやすい歴史を歩んできたし、その時々の構成状況によって勧告決議の内容が左右されてきたことも考慮しなければならないと思う。
この点については、IWCの法的規律の形成方法といった組織上の問題と考えることもできる(さらに、勧告決議の賛成国数をみると「国際的な合意」とすることはできないと思う)。
いずれにしろ、ソフトローの研究としては、勧告にしたがって実施されているかどうかだけでなく、その成立過程についても検討することが重要な視点になるのではないか、といったことが、この捕鯨問題からみることができる。
※写真は、商業捕鯨の再開を目指した日本の提案が否決された国際捕鯨委員会総会=2018年9月、ブラジル・フロリアノポリス(2019年6月30日共同通信)
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