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繰り返される中国ロケットの「無制御」再突入②:一般的な再突入の方法

任務を完了したロケットは、地上への損害リスクを低減させる方法で大気圏に再突入させて処分する等の方法をとることが求められる。ロケットを引き続き操作できるようにするために、必要な装備を追加させたり、落下範囲を定め、影響を受けるおそれのある船舶等に事前に通告したりしており、またロケット自体を再使用する方法もある。

 ロケットなどの大きな宇宙機器を、制御された方法で再突入させて処分することが必要である。ペイロードを輸送して任務を完了した後もロケットのエンジンを稼働させて、船舶など海洋上の活動が少ない海域を目指して再突入し、人や財産への損害リスクを低くする方法がある。ロケットには再突入時の熱に耐えられない材料が選択されることもあるため、地上のコントロールチームが誘導できるロケットを構築することが必要になる。

 一般的にはロケットの運用工程(ステージ)を複数段階に分け、サイズが小さく軽い第2段以降のロケットステージは地球周回軌道に残されることを許容し、サイズが大きい第1段ロケットステージなどを打ち上げの早い段階で切り離し地表に落下させる方法が多い。その場合、事前に落下地点の予測範囲を設定し、航空機や船舶などに対して事前通告が行われる。例えば、NASAのSpace Launch System については、ロケットを海に着水させるため、事前に廃棄計画が立てられているという。大きなロケットステージは地上の人々により大きなリスクをもたらすため、オペレーターが軌道離脱操作と制御された再突入を計画する。また、ロケットのブースター自体は、安全に廃棄されることを保証した構造で製造されることがほとんどである。

 SpaceX社は、第1段ロケットのブースターに装備されたグリッド・フィン(小さな翼)を展開して、窒素ガスを噴射するスラスターを操作して機体を制御し、海上に設置された着陸船等にピンポイントで軟着陸させる方法を実現している。

 しかし、これらの方法で第1段ロケットを処分・回収することは決して容易なことではない。追加の機器を装備することによって、その分、開発費用と期待の重量が増加し、結果的に打ち上げコストが上昇することになる。

 中国の長征5号Bロケットは、第1段ロケットのブースターを海上の安全なエリアに誘導する方法を一切備えていない。ブースターのエンジンは1度しか作動しないため、落下途中で破壊のスパイラルに陥る。ブースターは上層大気の境界を擦って滑るような形で徐々に落下していく。太陽活動によって大気密度が変化することで、その落下速度に影響を与えるため、「無制御」の再突入は不確実な過程を経ていくことになる。

 今回の再突入では残骸物の行方は確定していないが、長征5号Bロケットのシリーズは、2020年に西アフリカ上空で「無制御」のまま再突入し、その残骸の一部がコートジボワールの村に、2022年7月にも東南アジア上空で「無制御」のまま再突入し、その破片はマレーシアに落下した。過去 50 年間、長征5号Bロケットのような大型の宇宙機器を制御しないまま、どこにでも落ちることを意図して打ち上げてきたことはないとして、このような中国の方法は許容できないと批判されている。

※冒頭の写真は、EUの宇宙監視・追跡システム(EUSST)がとらえた長征5号Bロケットが回転している様子(@EU_SST)

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