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Diorを着たいというより、Diorが似合う女になるのが理想
「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展
行ってみればわかるだろう、その人気の理由。
約70年間このブランドが女の子たちを魅了してきた歴史と夢がたくさん詰め込まれている。
19世紀の西洋美術歴史ファンなだけの超一般人の私が、ディオール展で感じとったのは、
「ああ、女性に生まれてよかった」ということ。
1)美しいものは時代が移っても変わらない
1946年に創業されたブランド
半世紀以上前に作られたドレスなのに、それらに込められた様々なテーマが当時の流行や作者の想いを物語っていて、展示では上手く伝わってくる。
シンプルで要らない部分を削ぎ落としたデザイン。
デザインとしては今とほとんど変わらないのでは?
バレエのチュチュのような跳ね上がったフワッとしたり丸みを帯びた裾が可愛いんだ。
この頃から女の子の理想的な形は既に完成していたんだな、とわかる。
下の写真には1960年代のものと2020年のものと混在しているが、どれだかわかりますか?
私はわからない。全部もう今っぽく見えちゃう。笑
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良くも悪くも音楽なんかは「昔っぽーい」と顕著に時代の移りを感じてしまうけど
ディオールのドレスには古臭さなんて感じない。
むしろ向けられるのはキラキラした瞳ばかり。
2)19世紀の日本美術の影響力
展示はイントロが終わると、ディオールと日本というテーマから始まる。
19世紀末、パリ万博での日本展は多くのフランス人を虜にして日本をはじめとした「東洋」の文化に好奇心を抱かせるきっかけとなった大イベントだ。
ジャポニズムは西欧美術に爪痕を残したが、有名なところではオランダのヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。日本美術の色使い、影を描かない、黒を用いたアウトラインなどの特徴を真似して自分のアートに取り入れたのだ。
クリスチャン・ディオールは葛飾北斎の浮世絵からインスピレーションを得て作品を残した。
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大波の荒々しさが伝わってくる。
あの襟の部分はどうなっているの?どう着るのさ?
よく観光地に売っている日本らしさ全開のお土産Tシャツにも、もしかしたら北斎Tシャツがあるかもしれない。
でもそれらとの差を見せつけるのはディテール。
襟を頭上で縛っているのもそうだが、やはりこの細かなこだわりが立体感を表してるのかな。
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他にも和服・着物から着想を得たんだろうとわかるような独特なデザインが並べられている。こんなことされたら、日本人として日本の文化を誇りに感じてしまうではないかっ!笑
元々自然が好きだと言うディオールが、日本の作品に草花、動物などが多く描かれていることに好感を抱いたそう。
日本の桜を彷彿とさせる作品も素敵だった。
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3)動と静
展示物は動かない。
人がドレスを着て歩いてる訳でも立っている訳でもないから。
そのドレスひとつひとつが私たちに生を感じさせるのだ。
展示の中に写真家の高木由里子さんの作品を入れたのはなぜだろう?
彼女の写真があることで、躍動感やディオールのドレスの動いてこそわかるデザインとか表情を見てとれる。
あ、この服の中はこうなっていたんだ!
動くとこんなふうになるんだ!
マネキンが着ても素敵だが、やはり服は人のためにあるものだもんな。
また、プロジェクションマッピングを用いることで、動かない展示物に動きを与える。
展示の邪魔には決してならないし、むしろ観客へ退屈さを感じさせない工夫なのかな。
他にも暗い部屋では鏡を用いて奥行きを出している。実際は狭い空間にいるのにまだ奥に空間があるような気分にさせるだけでもゴージャスな気持ちになれる。
これらの現代らしい展示方法にもこだわりを感じることができる。
演劇の場面展開のように、
色鮮やかなお花畑、プラネタリウム、純白の世界。
私たちが次のテーマに進むごとに新しい出会いをさせてくれるんだ。
これはワクワクしないわけがないよね。
4)女の子の憧れを詰めたときめき展示
これいつ着るの?な服。
ディオールのCMをスクリーンで放映する部屋がある。
私だったら「洗濯大変そう」「着心地いいのかな」と思って着れない。めっちゃ現実的。
でもCMで女の子がはしゃいだり、ドレスに夢中な姿。女性の石像までも動き出してドレスに見惚れちゃう演出。
見たことあります?なんかめっちゃ良くないですか?
あんな高級で美しいドレス着てはしゃいで、汚れちゃうとかもう気にかけないで。
しかもあんな笑顔で…。
そりゃ憧れてしまうわな。
たくさんの純白のトワル、
色ごとに揃えられたディオール作品、
真白な部屋に自然モチーフのミスディオール、
2階に渡るドレスたちの巨大なディスプレイ、
なんなんだろう。
ディオールは女の子が本能的に求めるものを具現化している
全部素敵なんだ。
そんな魅力を最大限に引き出した展示方法も素晴らしい。
ディオールというブランドが与えたいもの、夢ってこれなんだなと自分の中で確立するんじゃないだろうか。
誰かが載せた写真でも十分素晴らしさは伝わるだろう。
でも作品そのもの、テーマの切り替え、世界観の作り方が圧巻なんだ。
来客を飽きさせない。テーマが変わるごとにうわーっと声が出てしまう。
なんという夢心地。
まだ行ったことない人はぜひ体感して欲しい。
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