素敵な大人
前回の記事にも書いたように、
小学5年生で転校した私。
初登校の日、
職員室に通され待機していた時のこと。
抜きん出て威勢のいい、見るからにコワモテの男の先生が目に留まりました。
「あの人が担任じゃありませんように」と思った小学生の私。今でいうフラグってやつですね。
その後のクラス分け発表、案の定でした。
色は浅黒くちょっとダミ声で、
威勢がよくガニ股歩き。
怒るとめーっちゃ怖いけど、誰に対しても平等で、怒るポイントはいたってシンプルだったように思います。
6年に上がってもクラス替えはなく、
担任もそのまま。
そんなクラスに北関東から転校生がやって来ました。名前は忘れてしまったけど、笑顔の可愛いホンワカした男の子。
国語の授業でのエピソードです。
転校生の男の子が教科書を音読し始めた時のこと。
小学生にとっては北関東の独特の訛りやイントネーションが聞いていて面白く、どこからともなくクスクス笑いが教室のあちこちから漏れ始めました。
ただ、仲良しのクラスだったのでべつに意地悪な空気ではなかったはずです。
が、先生はそれを見逃さなかった。
バン!という音と共に教壇に教科書を置き、
「笑うな。」と一言。
しん‥となる教室。
男の子を座らせると先生は
「そういうの、俺は一番嫌いや。」と静かに言いました。「誰が笑ったとか、そんなんはどうでもええ。」とも。
しばらく沈黙の時間。
そして先生は言いました。
「よし、国語の授業はやめや。皆んな校庭に出ろ。」
外に出て何のお仕置きが待ってるのかと皆んなドキドキしながら外へ出ました。
学校の裏手には林のような山のような、
とにかく木が鬱蒼と茂った場所がありました。
先生が私たちにやらせたのは、裏山と校庭をフルに使っての鬼ごっこでした。
先生も混ざっての本気の鬼ごっこ。
笑った子達の罪悪感も、
笑われてしまった男の子が感じたであろう気まずい空気も、ぜーんぶあっという間になくなって。
皆んなでキャーキャー鬼ごっこ。
そんな先生に会ったのは、後にも先にもあの2年間だけ。今でもずーっと忘れられない、私が出会った素敵な大人。何でもかんでも忘れる私が、ずっと覚えている素敵な大人。
あのクラスにいた人皆んなが何十年もの間、
ずっとそう思ってるんじゃないかなぁ。