映画【夜明けのすべて】
ネタバレありです。ご注意ください。
月に一度やってくる、イライラや感情の落ち込みを抑えるのが困難なPMS(月経前症候群)という疾患を抱える藤沢美砂。
上白石萌音ちゃんが演じています。
映画の冒頭、
PMSが原因で仕事にも支障をきたしてしまい、精神的に追い詰められる藤沢さんの様子が描かれますが見ていて本当に辛い。
新しい職場は、すべてを理解し受け入れ応援してくれる場所。
けれどある日、松村北斗さん演じる山添孝俊の些細な行動にイライラが抑えきれず、また感情を爆発させてしまう藤沢さん。
転職してきた山添くんは、職場の人たちと交わろうともせずいつも覇気がない。藤沢さんにとっては何を考えているのかわからず、やる気の感じられない後輩でした。
しかしそんな山添くんもまた、パニック障害を抱えながら転職してきた一人だったのです。
主に子供向けの理科工作キットなどの企画製作、そして販売までをおこなう町の小さな会社。
藤沢さんと山添くんを温かく受け入れ見守る社長と社員の大先輩たち。こんな会社で働けたらいいだろうなぁと、見ていて優しい気持ちになりました。
あることがきっかけで山添くんが自分と似たような境遇にあることを知った藤沢さんは、以後あれやこれやと山添くんの世話を焼こうとします。
はじめは煙たがっていた山添くんでしたが、次第に藤沢さんのペースに飲まれてゆきます。
互いに忖度なく言いたいことを言っては笑い、時に気遣い支え合う。
やがて親友のような関係を築いていく2人。
普通はここから恋愛に発展するんだろうけど違いました。もしかしたら、お互いの胸の内は「友達以上、恋人未満」かもしれない2人。
少なくともストーリー中でそれ以上の進展は何もない。お話が終わったこの先で、いつか2人が仲良くなればいいなぁと思わされました。
でも、安易に恋愛に進展しないところがとてもよい。あくまでこれは、人と人との出逢いのお話。
自分の人生においてかけがえのない誰かとの、
出逢いのお話なのだから。
そして、もしも目の前に困っている誰かがいたら迷わず手を差し出せる自分でいたいと思わせてくれる。そばにいる人を大切にして、丁寧に生きたくなる。そんなお話だと思いました。
こんなふうに映像化する監督さんって誰なんだろうと思ったら、【そして、バトンは渡された】の監督さんでした。あの映画もとてもよかったです。
山あり谷ありで目が離せない韓国映画も好きだし、
人間ドラマを感動的に描く欧米の映画も好きだけど。こういう邦画を観ると、やっぱり日本の映画はいいなぁとしみじみ思います。