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超大型ロケット「スターシップ」が及ぼす環境への影響

起業家のイーロン・マスク率いるスペースXが4月に行った大型宇宙船「スターシップ」の打ち上げをめぐり、米連邦航空局が周囲の環境に与える影響の評価を十分に行っていなかったのは連邦法違反にあたるとして、環境保護団体や文化財保存団体のグループが1日に提訴した。米魚類野生生物局によると、爆発によって鉄筋コンクリートや金属などの破片が広範囲に撒き散らされたほか、火災も発生して1万4000メートルほどのエリアが焼けたという。

今日はスペースXの超大型ロケット「スターシップ」の打ち上げが環境に与える影響について取り上げます。

スターシップは全長119m、1段目エンジンが33基という化け物サイズのロケットです。しかもエンジンは「フルフロー2段燃焼サイクル」という技術を使っており、構造は複雑ですが、高い性能をもつエンジンとなっています。

それで今回問題になっている、スターシップの打ち上げが環境に及ぼす影響ですが、注目すべきポイントは「発射時に周囲に与える影響」だと僕は思います。

ニュース記事の中には「爆発によって鉄筋コンクリートや金属などの破片が広範囲に撒き散らされたほか、火災も発生して1万4000メートルほどのエリアが焼けたという。」というロケット爆破時に注目するような一文もありますが、これはちょっと変です。

というのも、スターシップが制御不能になり、爆破されたのがメキシコ湾上空だからです。普通に考えたら海上で1万4000メートル(平方メートルのこと?)のエリアが焼けることはないし、鉄筋コンクリートの破片が飛び散るというのは(そもそもロケットに使われていないので)あり得ません。

おそらく問題になっているのはテキサス州にあるロケット発射施設付近の環境への影響だと思われます。実際に、鉄筋コンクリートでできた発射台が無惨な姿になっている写真が出回っています。

スターシップ発射台(発射前)
スターシップ発射台(発射後)

スターシップ発射後の発射台は、基礎部分が大きくえぐれて、一部の鉄筋コンクリートが破壊されていることが画像から分かります。この破壊された鉄筋コンクリートが周囲に吹っ飛んだのでしょう。

ただ、スペースXがロケット発射前に周囲の環境に及ぼす影響を検討していたのは間違いないです(だからこそロケット発射の許可が与えられた)。ですが、フルフロー2段燃焼サイクルエンジンを33基同時にフルパワーで動かすなんて、これまでに前例がないので、スペースXとしても予想できない部分が多かったのだと思います。

しかもスターシップのエンジンは発射直後に既に2〜3基が停止していて、もしかしたらこれも発射台が破壊された事と関係しているかもしれません。

今後、考えられる対策としては、反射板(フレームデフレクタ)や煙道の設置が挙げられます。どちらもロケットの噴射ガスや衝撃波をコントロールするためのもので、日本のロケット発射場(内之浦や種子島の発射場)でも煙道が設置されています。

スターシップの発射台でも反射板や煙道を設置し、噴射ガスや衝撃波をコントロールすることで、周囲への環境や自らのエンジンへの悪影響を抑えるようになるのではと予想しています。もしくは、発射台をより頑丈にしたり、発射台自体を高くするということもあり得るかもしれません。

いずれにせよ、次回のスターシップ発射に向けて発射台の改良をおこなうことは、周囲の環境への配慮という意味でも、自身のエンジンを守るという意味でも必ず必要になってくるでしょう。

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