細胞分裂の限界はどこなのか?
私たちの体は何十兆もの細胞からできている。そしてこれらの細胞は、元々受精卵という1つの細胞が複製・分裂を繰り返して増えたものだ。分裂した細胞は受精卵と同様に全ての遺伝情報を持つのだが、全ての遺伝子が常に働いているわけではなく、発生・成長の段階や存在する部位に応じてその時に必要な遺伝子が働く。これを分化という。分化によって、筋肉や骨といった特定の形や働きをもった細胞ができるのだ。
また、細胞によっては複製・分裂を停止する休止期に入る場合がある。例えば、分化した筋細胞や神経細胞は複製・分裂を行わない。肝臓の細胞は普段は休止期なのだが、肝臓が傷ついた場合などに複製・分裂を開始する。
それでは休止期に入らない細胞は永遠に分裂し続けるのだろうか?答えはNoだ。真核細胞の末端部にはテロメアと呼ばれる特殊な構造がある。ヒトなどの細胞は分裂するとテロメアが徐々に短くなり、一定以下の長さになると分裂できなくなる。つまり細胞の分裂回数には限度がある。この限界を打ち破る方法はないのだろうか?
実はテロメアは生殖細胞などで発生するテロメラーゼという酵素によって、その長さが回復し、それに伴い細胞分裂の能力も回復する。ガン化した細胞の多くでテロメラーゼが強く作用するため、がん細胞はテロメアが短くならず、分裂回数の制限がなくなると考えられている。
参考文献:嶋田正和ほか14名,「生物基礎」,数研出版,(2016).