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遺伝子組換え技術を3ステップに分けて紹介します!

遺伝子組換えとは、ある遺伝子を含むDNA断片を取り出して、それを別のDNAに繋いで細胞に導入する技術のことだ。そして遺伝子組替えは主に3つのステップから構成されている。3つのステップとは、DNAの切断・別のDNAとの連結・組換えDNAの導入だ。本記事ではそれぞれのステップについて紹介していく。

<DNAの切断>

まずDNAの切断では制限酵素と呼ばれる酵素の一種が利用される。制限酵素という名前は大腸菌のある種の株でファージと呼ばれるウイルスの増殖が制限されていたため調べてみると、その菌からファージのような外来DNAを切断する酵素が発見された事に由来している。制限酵素は様々な種類があり、それぞれ特定の塩基配列を識別して切断する。DNAを構成している2本のヌクレオチド鎖を切断する時に2本とも同じ場所で切断するのではなく数塩基ずれた位置で切断されるため切断部には互いに相補的、つまりヌクレオチド鎖の一方の塩基が決まるともう一方の塩基も自動的に決まるような塩基配列を持った一本鎖の突出部が出来上がる。

<DNAの連結>

同じ制限酵素で2つの異なるDNAを切断し、DNA断片を混合すると突出部の相補的な塩基どうしが水素結合によって結合する。これは制限酵素がランダムにDNAを切断するのではなく、特定の塩基配列を識別して切断するため成り立っている。突出部の塩基が水素結合したのちにDNAリガーゼという酵素を作用させて突出部の末端どうしを連結することで組換えDNAが完成する。

<組換えDNAの細胞への導入>

遺伝子はベクター(運び屋)に組み込まれて導入されることが多い。具体的にベクターに使われるものとしてはウイルスのDNAや大腸菌がもつプラスミドと呼ばれる小さな環状のDNAなどがある。プラスミドは大腸菌が元々持っている自身のDNAとは別に独立して増殖するDNAである。

遺伝子組換え技術の可能性は非常に大きい。例えば大腸菌にヒトのインスリンを生産させる場合、プラスミドとヒトのインスリン遺伝子を含むDNAを同じ制限酵素で切断し、DNAリガーゼを作用させることでヒトインスリン遺伝子を含むプラスミド(組換えDNA)ができる。このプラスミドを大腸菌に取り込ませて培養すると、大腸菌が増殖し、大腸菌細胞内ではプラスミドが増殖する。その結果、多量のインスリンを得ることができるのだ。

参考文献:嶋田正和ほか22名,「生物」,数研出版,(2017).

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