ミトコンドリアや葉緑体は元々違う生物だった!?
ミトコンドリアや葉緑体は呼吸や光合成といったエネルギー変換において重要な役割を果たしている細胞小器官です。しかし、この2つには不思議な点があります。まずDNAは細胞の核の中にありますが、ミトコンドリアや葉緑体は核とは別にDNAをもち、細胞内でそれぞれが分裂によって増殖するのです。またどちらも原核生物には存在しません。
実は遠い昔、真核生物が現れる前の地球ではミトコンドリアや葉緑体は独立した原核生物だったと考えられています。正確には真核生物登場以前は酸素を使わずに有機物を分解する原核生物や酸素を使って有機物を分解する原核生物(好気性細菌)、光合成を行う原核生物(シアノバクテリアの仲間)などがいました。そして、その後に現れた真核生物に好気性細菌が取り込まれて共生することでミトコンドリアになり、シアノバクテリアが取り込まれることで葉緑体になったのです。これが現在考えられている「細胞内共生説」です。
※細胞内共生・・・ある生物の細胞内に他の生物が取り込まれて、密接な結びつきを保ちながら生活すること。
ミドリゾウリムシとクロレラ
真核生物とミトコンドリア・葉緑体の出会いは細胞内共生だったという話をしましたが、現在でも細胞内共生の様子を見ることができます。その一つがミドリゾウリムシです。
実は河川や池に生息するミドリゾウリムシはクロレラという単細胞生物と細胞内共生しています。ミドリゾウリムシはクロレラから有機物や酸素を供給してもらい、逆に光合成に必要な二酸化炭素やタンパク質を作るのに必要なアンモニアを与えているのです。
ただし、ミドリゾウリムシはクロレラがいなくても生活することはできます。
※冒頭の写真はミドリゾウリムシとクロレラが細胞内共生している様子。他にもアメーバやラッパムシの仲間も細胞内共生によってクロレラを持っている。
参考文献1:嶋田正和ほか14名,「生物基礎」,数研出版,(2016).