地下の地図は産総研が作っています、という話
はじめに
先日、VentureCafeで機会をいただいた際に当方からさせていただいた話題提供について思いのほか反響をいただいたので、noteにまとめてみました。
地下の地図は産総研が作っています
「地上」の地図は国土交通省の国土地理院が作っています。
「地下」の地図は経済産業省所管の国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研、AIST、さんそうけん)がつくっています。
国立研究開発法人産業技術総合研究所法(通称「産総研法」)で研究所の業務の範囲を定める第11条の第三項に「地質の調査を行うこと。」と定められております。
地下の地図には、地質図や水文環境図と呼ばれるもの等があります。
地下の地図の調査研究は、100年以上前から綿々と続けられてきました。一般人が聞くとビックリするかも知れないことも分かってきているようです。
今回はその中からひとつの事例をご紹介します。門前の小僧の紹介なので、専門の研究者のような深い話はできませんが、分かりやすく伝えられるようにがんばります。
「地下水はどこからくるのか、ご存じですか?」
山や森に降った雨が地面にしみ込んで地下水になるというイメージを多くの方は持たれると思います。
では、地下水とつながる森のエリアはどのくらい特定できるのでしょう?
そんなにきっちり特定できるの?と思った方は、この後のお話を興味深く読めると思います。
秦野(はだの)盆地の地下水に関する産総研の調査結果からお伝えします。
まず、秦野では、秦野市域に存在する地下水を水源とする水を「秦野名水」と呼称し、市民共有の財産として利活用が図られています。
秦野盆地には、たくさんの湧水が存在し「秦野名水マップ」が作られています。
このような秦野地域の地下水の調査結果(「秦野市地下水総合保全管理計画(の内、第2章その2の54頁から60頁)」)を読むと、とても面白いことが書いてありました。
「秦野盆地における(多くの湧水のもととなる)深度20m以深の地下水の主たるかん養源の標高を推定した結果、丹沢山地の標高250~500m付近であることが示されました。」(調査結果を筆者が要約)
かん養(涵養)という言葉に不慣れな場合は、ざっくりとは「地面にしみこんで養い育てられること」と理解してください。
具体的には、地図の赤っぽい色の帯が該当するエリアです。(緑色のエリアは盆地の平らなところで、茶色のエリアは山の高いところとなります。)
少し補足すると、秦野盆地の地下水には浅層型(20m以浅)と深層型(20m以深)の2種類が存在するとのことで、上述のかん養標高は深層型に該当するものとなります。また、深層型の山地の森林エリアで涵養された湧水は、年間を通して安定した湧水量をもつようです。
なお、今回はなぜかん養源が特定できるのかその理由の説明はしております線が、出所の報告書には詳しく記載されていますので気になった方はそちらをご覧ください。
科学知識がアップデートされると人はどんな影響を受けるのか?
ここからは科学の専門家・研究者ではない、読み手の皆さまを含めての私たちに関するお話をしたいと思います。
地下水をかん養する山・森林のエリアが特定できる話を聞いたときに、私自身は感動しました。「そんなことが今は分かるんだ!」と。新しい科学知識による心地よい脳みそへの刺激です。
そしてこのような新しい科学の知識をもらって、想像・妄想が広がりました。
自分の地域ではどうなんだろう?
地域の未来を考えるときに、このようなことが分かると、何が変わるだろうか?
漠然とした思いは、科学知識や知恵を知ることで、より客観的な考えに進化できるのではないか?
この記事を読んでいただいた皆さんはいかがでしょう?同じような「問い」が浮かんだかもしれないし、別のことをお考えになったかもしれません。
機会があったら、そのことについてお話しできたら嬉しいです。
つたない文章でしたが、読んでいただいてありがとうございました。
なお、本記事の内容は、個人的意見・見解の表明であり、いかなる組織を代表したものではありません。