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千葉で水循環を見て感じて考えたこと

はじめに

2024年9月28日に、「サステナブルコミュニティ」の現地ツアー「台地から低地までの水循環とグリーンインフラを考えるツアー~千葉の水循環で体感する企業活動と生態系の関係性~」に参加してきました。

国立環境研究所の西廣淳さまを筆頭に現地の様々な方のご協力もいただき、一日案内していただけた、とても贅沢なツアーでした。

実際に見て回った順番に捉われずに、高いところから低いところへの水の流れを意識して私の学びの一部をまとめてみようと思います。

台地に降った雨が印旛沼に流れるまで

ツアーの場所は、千葉県の印旛沼の周辺です。この辺りは台地が多くて平らな土地が多く、雨は印旛沼に流れていきます。
「水が高いところから低いところに流れる」なんて、当たり前のことだけど、実際にどう流れていくのか、普段の生活の中で意識して確かめたことってほとんどないですよね?
今回は、それを解説してもらいながら体感できたツアーでした。
まず一番高いところはにんじん畑です。

台地の上ににんじん畑があります

台地の上ににんじん畑があります。にんじん畑の外側は森になっていて、くだり斜面になっています。
斜面を下ると、こんな感じの湿地(谷津(やつ)という)があります。

谷津(やつ)です。奥の森の斜面を上がるとにんじん畑があります

にんじん畑に降った雨水は、畑の土壌にしみ込んで、地面の下を通って、時間をかけて谷津に湧いています。谷津は「やつ」と読みます。
写真を見ると、水だらけで荒れた土地に見えちゃうかもしれませんが、この谷津の機能がとても大事ということを西廣さんに教わりました。後ほど、学びをまとめます。

谷津にはサワガニなどのいろいろな生き物がいます

そして、谷津をゆっくりと流れてしみ込んだ水が、川に流れて出ていきます。

谷津を管理しているNPOの方々が立看板をつくってくれています

谷津の中で、小さな堰を作って、水の流れをコントロールしています。管理は地元のNPOの方々がされていて、今回はご厚意で見学させていただきました。
谷津を通って川に出てくるところはこんな感じです。

写真の真ん中あたりの土管から谷津の水が流れ出ている

そして川となって印旛沼に流れていきます。この川は工事して農業で使いやすいようにまっすぐに整備されたものだそうです。

川が印旛沼に向かって流れています

そしてここから10kmくらいで印旛沼に到達するそうです。

ツアーの最後(夕方)に辿り着いた印旛沼。奥に見える水面を覆う植物は菱(ヒシ)

水をゆっくりと流すという学び

台地の畑に降った雨が印旛沼に流れるまでの水の流れを観察しましたが、「べつに驚くようなことではないのでは?普通では?」と思われた方もいると思います。
しかし、実は、このような水の流れはどんどん少なくなってきているそうです。
「なんで?」と思われるかもしれませんが、人工的に排水路を作ったり、水の流れをまっすぐにしたりすると、水はどんどん速く印旛沼に流れ込むようになり、途中で谷津を通るようなゆっくりとした流れが失われるからです。
畑に降った水を排水路を作って直接川に流すことはできます。不必要な水が畑に溜まってぬかるみになることもなくなるので、別に悪いことではないのでは?と思ってしまいそうになりますが、実はそれがどういうことかをもっと深く理解しようというのが今回の現地ツアーの狙いのひとつだったと思っています。また、そういうことを考えたこともなかった私にとっては大きな気づきと学びとなりました。

印旛沼の水質について学んだこと

畑に降った雨が直接川に出て沼に流れていくと、畑に撒かれた肥料の成分が雨と一緒に流れてそのまま沼に入ってしまいます。肥料は多く撒かれすぎてるということではなく、適量であっても、野菜(植物)の苗が根から全部吸収するわけではないので、このようなことが起こります。

一方で、谷津を通って川に流れていくと、谷津を通る過程で肥料の成分が分解されてから川に出ていくそうです。谷津にはたくさんの生物(微生物を含む)が住んでいて肥料の成分を分解する働きをします。そのような違いがあることは、科学的な計測から確かめられています。

では、肥料の成分が直接沼まで流れてしまうと何が問題なのでしょうか?
沼の水に肥料の成分が流れ込むと、沼に棲む生き物(植物含む)にとっての栄養分が増えてしまいます。水質が変化するということです。

沼の水の栄養分が増えるのはよいことでは?と感じる方もいるかもしれません。たしかにこのような栄養が増えると嬉しい生き物もいます。しかし、そうでない生き物もいるということです。

栄養が増えることである生き物が増えてしまうと、それにより住みにくくなる生き物もいて、そういう生き物は減ってしまうということが起こります。

つまり生態系のバランスが変わってしまうということが起こります。

でも、自然ってそういう変化が起こってもおかしくないのでは?と思う方もいると思います。確かに、自然の生態系のバランスは、人間が何かしなくても”自然に”変化するものではあります。

しかし、人間の活動が知らず知らずの内に、”自然に”変化するよりもずっと早いスピードで環境を変えてしまっていて、気づいたときに沼が昔と変わってしまっていて、もう戻らないかもしれないということは知っておくべきかと思いました。印旛沼周辺で起きている変化はそういう変化です。私は知らないままでいたら悲しい・・・と感じました。

かなり大まかに問題を書いてみましたが、深く解説しているサイトがありましたのでリンクを貼っておきます。興味のある方はこちらをご覧ください。

印旛沼の水質について説明されているあたりが、ここでご紹介した内容に関連性が高いかと思います。

印旛沼の水質水質汚濁の要因

谷津の水の流れについて学んだこと

ここで終わりにすると、畑を作っている農家さんだけが悪いかのようになってしまうので、もう少し見てきたことを整理します。いろいろな人間の活動が環境を変えているのをツアーで見せてもらいましたので。

こちらの写真も谷津ですの上流部分です。しかし、地面は湿っているものの、ただの林のように見えますね。

ある谷津の上流部

しかし、この辺りは教えてもらったところ、昔はこの辺りは、一年中水がたくさん湧いていたのだそうです。

よく見てみると、祠があります。これは地元の方が水の神様を祀っているいるものだそうです。祠の周りは池のようになっていたようです。

水の神を祀る祠

この上の台地に降った雨が地面にしみ込んで、10年以上かけてここから湧き出して、印旛沼の方にゆっくりと流れていくということが昔は起こっていたそうです。昔は台地は広々とした草原になっていたそうです。

なお、この祠の少し下の方には少し水が流れていて、そこにはオニヤンマのヤゴとか生き物が棲んでいるいることも教えてもらいました。

オニヤンマのヤゴ

では、今、上流の台地はどうなっているのかというと、物流センターやデータセンターがありました。

昔は草原だったところ

短絡的に、物流センターやデータセンターが悪いというつもりはありません。しかし、このような人間の活動により、コンクリートで地面が覆われて、降った雨が地面にしみ込む量が減ってしまったため、谷津の祠の周りに水が湧かなくなったと言われて、実際に見せられると、いろいろと考えさせられます。

私は、ちょっぴり千と千尋の神隠しの川の神様のエピソードを思い出してしまいました。

降った雨がどういう風に川や沼に流れて最後に海に至るのか、これまであんまり深く考える機会がありませんでしたが、これは大事なことだと思いました。

また、台地から沼までの水の流れが、科学的に説明できるようになっていて、色々なものがどのようにつながっているのかを知ることができるということも今回学ぶことができました。

そして、このような水の流れのつながりを理解した上で適切な対策を論じていくには、もっとたくさんの人に知ったもらうことが必要と感じました。

この課題に対して千葉県が公表する計画のリンクを貼っておきます。

うち、「2 印旛沼・流域の現状と課題」で説明されているあたりが、ここでご紹介した内容に関連性が高いかと思います。

https://www.pref.chiba.lg.jp/kakan/iken/2021/documents/masterplan-2.pdf

おわりに

1日かけて、長靴を履いて、印旛沼周辺の谷津をめぐり、水循環を目で見て実感して、考えるというとても貴重な体験をしましたが、振り返ると、現地を見て体験することはとてつもなく重要であると感じました。書ききれていませんが、ほかにも色々と見せてもらっています。

解説資料は探せばネット上にたくさんありますが、それを読んだだけでは理解できないことがたくさんあり、そのためには現地に足を運んで、現地で実践している方に会って話を聞いて考えてみないと気づかないことがあるということにあらためて気づかされました。

企画いただいた方々や、ご対応いただいた協力者の皆さまには、たくさんの準備から当日の対応まで、感謝しかありません。ありがとうございました。




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