業界メディアに記事を盗まれたら、スノーボーダー最高って思えた話
6月21日(日)に出した「コロナ禍のスキー場運営はどうなる?冬を迎える南半球よりレポートと考察」という記事、たくさんの方に読んでいただきました。ありがとうございます。
各地のスキー場運営者や業界人にも届いたようで、シェアしてくれた人に私が何者であるかの問合せ電話が入ったりもしたようです。すごい。
私はお仕事関係ですこしスノー業界に携わっている者です。現在はオーストラリアに住んでいますが、日本のスノーリゾートのために力を尽くしたいという出処不明のパッションがあります。
さてこの記事について、そっくりな内容の記事がBackside Magazineという業界人なら誰もが知るスノーボードメディアに出たことで、大変お騒がせしてしまいました。
まったく揉めたい気持ちはなかったのですが、結果的に「なんかバトってんな……」と見えてしまっていたらすみません。モヤモヤを残したままでは嫌なので、その経緯と媒体側からの反応を私からご報告して、この記事をもって終わりにしたいと思います。
今回のことの経緯
「コロナ禍のスキー場運営はどうなる?冬を迎える南半球よりレポートと考察」の記事を出したのは21日(日)の午前でした。現地のニュースサイトより9記事ほどと、Facebookをはじめとしたソーシャルメディア、現地で見聞きし感じている肌感などの情報をもとに、自分の視点でまとめたものです。
その翌日の22日(月)に、Backside Magazineに「来冬のゲレンデ営業はいったいどうなる? シーズンインしたばかりの豪州の今を知る」というタイトルで似た記事が出ていることにフォロワーさんのおかげで気づきました。「タイミング被っただけで独自リサーチなのかな」と思いつつじっくり読むと、内容がほとんど同じものでした。
ツイートのとおり、同じ英語ニュースを読んだとしても同じ順番・内容・表現の記事になる可能性はゼロに近いので、私の記事を9割がたソースにして書かれたことは明白でした。
それをTwitter上で指摘したところ、Backsideさんのアカウントで発表された対応はこうです。
「参考サイトを貼っていなくて誤解を与えた」とのこと。後から貼られたサイトは、主に各リゾートの公式サイトでした。英語がわかる方ならすぐに気づくのですが、情報は各サイトに分散しているため、仮にこれらをすべて読み込んだとしても同じ内容が書けることはまずありえません。
案の定、この発表後に複数の方が検証?分析?してくれ、パクりであると主張してくれたり議論してくれたりしていました。どうもありがとうございます、すみません。
媒体側にお願いしたことと、編集長からの反応
Twitterのリプライで、記事が似ていることを指摘し見解を教えてほしいとお願いしたところ、公式アカウントからDMを頂きました。
最終的に「DMはご自由にシェアしていただいて構いません」とのことだったので、内容だけお伝えします。(本当は私のバイアスがかからないよう原文のまま掲載したほうがよいのですが、「晒した」という見え方になってしまうとよくないので、要点だけまとめます)
記事が出た当日の夜に頂いたDMの内容はこうです。
・不快感を与えてしまいお詫び申し上げます
・外注キュレーターから情報を入手していた
・内容が類似しているようなので確認した
・情報ソースがほぼ同じだったことが原因と考えている
盗用は認めてもらえず、謝罪もありませんでした。このメッセージへの返信で、①盗用を認めた上での当該記事の削除、②公に向けた見解の発表、③編集長から直接のご連絡、をお願いしました(ごく一般的な対応だと思います)。翌日に頂いたメッセージがこちらです。
・コロナ禍におけるスノーボードシーンの発信はこれまでもしてきた
・南半球のスノーリゾートを題材にした記事は以前から企画していた
・リゾートのオープン日だったためタイミングが重なった
・参考サイトの記載がなかったため誤解を与えた
・日本のスノーボードシーンを盛り上げていく立場として気持ちは同じ
2件目は編集長のお名前で頂いています。どれも本題には関係ない言い訳のような情報で、私は「内容が同じであること」について回答頂きたかったので、あまりコミュニケーションが取れないな、と感じました。最後の「私もあなたも気持ちは一緒」みたいなのはちょっと意味がわかりませんでした。
その後、24時間以上お返事がなかったのですが、翌日の夜にようやくご連絡をいただきました。
その内容にたいして思わず「吐きそうになるほど胸糞悪いDM」と恐ろしい表現でツイートしてしまったことは反省しています。そこに書かれていたのは、編集長の私的な、プライベートな情報でした。知りたくもないことまで詳細に。それが理由で返信が遅れたと。
私はこのメッセージを頂く前に「DMをシェアします」とお伝えしていたので、公にシェアされるかもしれない前提でその内容を送ってくることには驚きました。同情を誘いたかったのでしょうが、さすがに公開しません。
(本当に思い出すだけで気が乱れるのですが、この気の乱れの理由を説明しようとすれば私が損しかしないプライベート情報を書いていることが、気が乱れる原因です。お察しください)
返事が遅れたことへの謝罪のみだったので、改めて記事に対する見解をお聞きしたところ、最終的には下記のように頂いています。
オーストラリアを題材とした記事が同じタイミングでの公開となってしまい誤解を招いてしまったことについてはお詫び申し上げます。
しかし、盗作や著作権侵害といった事実は一切ございませんので、謝罪する立場にありません。よって、記事の削除も考えておりません。
そして、これらDMの内容をまとめたものが、Twitterでのみ公式見解として出されました。Facebook等の他媒体での発表はありませんでした。
追求したかった理由。パクりといえるのか?訴えられる?
気にしてくれた方にとってはモヤモヤの残る、納得いくはずがない結果になってしまい残念ですが、私はもうこれ以上なにもする気はありません。
そもそもこの件をきちんと追求したのには、「記事がパクられて悲しい」という気持ちはもちろんあったけど、どちらかというと別の動機がありました。本職がPR広報やコミュニケーションなので、メディアの記事盗用や低質なまとめ記事量産などに敏感だったりするからです。
問題が絶えないメディア業界なので、自分が当事者になったからにはスルーせずに対応したいと思っていました。最初は外部ライターがやらかしたとか、何かの間違いだろうと思ったというのもあります。謝罪して取り下げてもらって一件落着のつもりでした。
何人かの方が「訴えてはどうか?」などと言ってくださっていますが、今回のケースだとそういうことは難しいです。
厳密にいえば一言一句を真似しているわけではないため「盗用」とするには不十分です。「引用」や「一部抜粋」、「著作権侵害」などにもルールがありますが、どれにも該当しません。言葉にするとすれば「ほぼ全面的に他人の記事をソースにして書かれている」ということになります。100人が見て100人がパクりだと思っても、法的にパクりを証明・定義するのはとても難しいのです。それを媒体側もわかってやっているのだと思います。
敵視するほどのクオリティではなかったので、そこは別に気にしてはいません。だからもうこれ以上、訴えるとか何もする気はなく、終わり。
「みんな本物と偽物はちゃんとわかるから大丈夫」
と言っていただき感動しました。フェイクは勝手に消えていきますので、放置です。だからもうバッシングもやめていただいて大丈夫です。
100人のスノーボーダーたちが最高だった
この一件で、またスノーボーダーに対して悪いイメージがついてしまったり、やっぱりスノー業界は問題起こすなとか思われてしまったりすることだけは避けたい。だからこれは言っておこうと思って記事を書いています。
今日までに200名近いスノーボーダーにフォローしていただき、ツイートの通り、各々のアクションをしてくださいました。途中からやりすぎだという声もありましたが、きちんと声を上げてくれるのは素晴らしいと思いました。
なんか、違ったら申し訳ないけど、ツイッター界に10年いてスノーボーダーたちがこんなにひとつの事象を追っているのを見たことがなかったので感動(自意識過剰だったらほんとすいません)。それぞれの正義がぶつかり合って揉めているケースもあったけど、なんかいいなーと思っていました。
個人的な好みの問題ですが、こういうのが好きなところです。
リプライやDMをいろんな方から頂きましたが、本当にスノーボーダーたちの業界に対する熱い思いというか、真っ直ぐな感じがとても伝わってきて、勝手にひとりで感動しているんです。最高でした。
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今回書いた記事はあくまで「オーストラリアの現状についての日本語情報がないから、まとめて参考になれば。ついでに自分の考察も加えとこ」というものだったので、価値があったのは“情報”であって、私自身が提供した価値はたいしたことないと思っています。でも今後も日本のスノー業界のためになることをやっていきたい所存。
それから、権威性と信頼性を高めていく決意をしました。今回の件は「組織」対「個人」であり、「男性・年上・業界で地位のある人」対「女性・年下・無名の一般人」の構図でもありました。
まあそうなるよねーって感じなんですが、今の時代にこんな旧態依然な体質でやっていたら業界まるごと共倒れなので、今回の件で繋がれたスノーボーダーさんたち含め、私自身がメディアとしてもっと有益な情報を届けられるようにがんばります。
感情をそのままぶつけないよう、サンライズを見に行った。
自然のパワーのおかげで冷静になれた。雪も波も偉大です。
最後になりますが、今回の件で行く宛なくさまよっているエネルギーのぶつけどころをお探しの方がもしいましたら、ぜひ私の愛する「白馬」に注いでみてはいただけないでしょうか。風景写真を買って地域を応援しようというプロジェクトです。売上は白馬のために使われますので、私も喜びます。
それでは!近々また書きますー。