初雪と揚げ餅のみぞれ汁
首都圏で初雪があった日、バイト先で昼休憩の時間になった。
「よし、練習のために外食にチャレンジしてみよう」と意気込んだ。幸いにも忙しくない職場なので何を食べるかスマホで調べていて既にランチメニューは決めていた。
まずは大手チェーン店ならカロリー表示してあるから大丈夫。海老と帆立の香草レモン鍋定食、とっても美味しそう。単品ならあったかいし単品なのに176calで大満足(今のわたしにはもっとカロリーが必要なのだが外食する努力点を認める)。余裕があったら五穀ご飯小盛りを付けてみよう。ビルとビルの間の少しの移動なのに、寒さは厳しく一層鍋欲が高まった。
しかし痛恨のミス。
オフィス街なので土曜が定休日だと言うことをすっかり忘れていたのだ。
そこでしかたなく近くのお茶漬け屋さんに入った。グランドメニューは定食・丼もののみ。カロリー表示がない。しかも女性向けのおしゃれなお店なのに結構がっつりでボリュームがありそうだ。
行き当たりばったりで席に座ってしまったことを心底後悔し、食べられないものを見つけてはパニックになって私はただうろたえることしかできなかった。
「一度入ったら出られない…」昼時ピークが過ぎ、ほかのお客さんも少なくってそのまま店を後にするのは気が引けてしまった。もう最初からコンビニのサラダにすればよかったと考えていた矢先に、店員さんがお冷やとお手拭きををテーブルに置く。終わった、絶望だと思ったが
「何か当店のメニューについてお困りですか?」と尋ねてくれた。
これはチャンスだと思って、お茶漬け定食のシステムと、たくさん食べられないのでここぞとばかりに単品は可能か勇気を出して聞いて見た。おかずのみでも、汁物のみでも可能と言うことだった。その時はとっても安心した。(しかも単品にも美味しいサラダバーが付くらしい) どんなメニューがあるかみ詳しく丁寧に説明してくれた(摂食障害の患者は量やカロリーなど見通しが立つと安心して食べられるようになるらしい)。
そうしてやっとの思いでオーダー出来たのは、揚げ餅のみぞれ汁だった。すりおろし大根のおかげでお茶漬け屋さん自慢の出汁が香ばしく焼かれた一口大の丸餅によく絡み味が引き立つ。少々薄味だったが、テーブルサイドの海苔や鰹節で味変を楽しんだ。
男性店員は食事中にこまめにお茶を組んでくれた。他にも何か困った事があったら遠慮なさらないで下さいね、と微笑む接客の凄さを知った。こんなにも心遣いでお店が好きになる事があるのだと初めて思った瞬間だった。
不安だったわたしに安心感を与える対応をしてくれて気がついたらわたしは泣きながら食べていた。土曜昼に女一人で汁だけ飲みながらな泣いるのか、店員は訝しく思っただろう。本当にありがとうございました、美味しかったです。また来ます。
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