投票立会人をやってみた上での雑感

第50回衆議院議員総選挙(2024年)の投票立会人を体験した。
自治会の役員をやっていたのが契機となり自分にお鉢が回ってきた。
半日交代勤務を選択できたものの、終日(AM6:45〜PM8:00)引き受けた。
実際やってみると、長時間座りっぱなしの身体的しんどさはあったが、精神的負担感は無く、それよりも長時間にわたる選挙人(投票する人)の観察や、投票箱の開票所への送致など、日頃得難い貴重な体験となった。

約13時間もの間、投票に来る人を目の前でリアルに観察できるチャンスは滅多に無い。目標を定めて取り組めば投票立会人は得るものが多いと思われる。

以下、体験したことや体験を通じて思ったこと等を箇条書きにしてみた。

1.投票立会人を公募している自治体もあるようだが、自分のところでは公募でなく自治会に推薦依頼がくるパターンのようである。投票立会人を任命されるまでの過程を見てみると、区の選挙管理委員会が自治会長に投票立会人の推薦を要請し、自治会長からの返信である推薦状を判断した後に、立会人となる人の元に選挙管理委員会から選任書と投票立会人の心得が送られてくる。

2.自治会長が作成する推薦状への記述の際のお願い事項として、「できるだけ選挙運動に携わらない方を推薦いただきますよう、お願いいたします。」とある。
私見だが、これは公職選挙法第三十八条 4 「同一の政党その他の政治団体に属する者は、一の投票区において、二人以上を投票立会人に選任することができない。」を意識した上で、この法律に抵触しないようにする事前の配慮だと思われる。

3.事前にドレスコードの制約が無いことを確認していたので、スーツなどを着ずに投票所となる中学校に向かい午前6時半過ぎに到着した。立会人は私とは別の自治会の役員さんと私の計2名。有権者数が約1万人強と比較的多い投票所のせいか、投票開始の午前7時から投票にくる選挙人(投票する人)がひっきりなしで、途切れたのが19時40分ごろだったので意外と暇ではなかった。にもかかわらず投票率は前回の衆議院議員選挙より低く広島県は全国で最低と聞いて驚いた。

4.生まれてはじめて投票開始直前の空の投票箱の中を自分の目で確認することができた。当たり前だけど、やはり空なのだなと妙に感じ入ってしまった。将来、もしネット選挙になった場合、どのように確認するのだろうか。

5.制服の高校生が散見された。ひとり、友達連れ、親子、さまざま。
選挙権年齢が18歳になっているので当たり前ではあるが、20歳以上だった世代の私が目の当たりにすると新鮮な感じがした。

6.親が就学前の小さな我が子に投票用紙を投函させる光景も度々あった。多少後ろに投函待ちの行列はできるけど、投票に対する心構えや習慣を身につけさせる妙案の一つだなと思った。

7.シニアカー(セニアカー)が入所可能だった。特に混乱は無かったが、万一投票所内が混雑する場合には少し危ないと感じた。

8.個々バラバラに4〜5人、なぜか全て50代以上おじいさん未満のおじさん達が、異口同音に「比例の略称が同一の党が2つあり、どっちがどっちなのかわからん」とのご意見を仰っていた。結局どのように記入されたのかを知る由もないが、このことで、おそらく新たにどちらかの党に入れた人が増えるのではと体感でき、実際その通りになった。

9.投票所内で、候補者の名を確認したり、しばし思案したり、親族や知り合いとあーだこーだ言い合ったりして時間を要する人は少数派。多くの人が予め候補者や政党を決めて来所し迷わずに投票用紙に記入して帰っていくように見えた。

10.幸か不幸か悪態ついたり警察沙汰になるような人は来なかったが、投票用紙を持って帰りそうな人を、投票所を出る寸前で声掛けして選挙管理人に後処理を依頼することもあった。この場合、最高裁裁判官国民審査に対する不満があった模様で、この場合はご本人と管理人との会話の上で用紙は回収され棄権と処理された。

11.途中で1回ほど、小太り気味(失礼!)でメガネをかけたスーツ姿の愛想の良いお巡りさんの巡回あり。また、午前中に中国新聞、昼下がり〜夕方頃に朝日新聞の出口調査が来ていた。朝日の記者さんは長時間出口に逗留していた。

12.閉所30分前の19時半を過ぎても投票に来る人がいた。皆さんはいろんな事情をお持ちであり、やむを得ず閉所時刻ギリギリに来ざるを得ないケースもあると思うので、投票時間繰り上げはすべきではないと感じた。

13.私は当日に投票できないかもしれないと思い、わざわざ期日前投票を済ませていたのだが、もうお一方の立会人さんは当日の来場者が減った隙に投票をされていた。当然の権利として当日投票は当たり前と言えば当たり前だなと後から思った。

14.閉所後、投票箱をタクシーに乗せて開票所に送致した。その前に投票箱閉鎖後の投票録に投票立会人として署名をして割印も行った。印鑑文化は健在であったが、今後のDX化に伴い例えばスマホでQRコードを読んでピッと電子署名(割印)するような世の中になるのだろうか?将来の動向の行方が楽しみである。
話を送致に戻すが、当初は以下のイラストのような窓に金網が貼ってあるような車両を使うのかと少し期待したが実際はそうではなく、ごく一般的なセダン型のタクシーであった。

トランクに二箱、後部座席の真ん中に一箱乗せてその両端に投票管理人と立会人が乗って移動。
各々四千票ずつ入った3つの投票箱は意外と軽かった。開票所手前で他の投票所からのタクシーも集まっており渋滞。ごった返す開票所に投票箱を搬入したら、内容齟齬の有無などを確認するための受入手続き待ちで並んだ。奥の方に開票用の台がいくつも並べられ、開票開始を待つ人たちのざわめきや熱気が夜遅いことを感じさせないほどだった。

15.投票立会人は税引き後の日当が11,596円で、昼食(豚生姜焼き弁当)と夕方の軽食(おむすび2個と鶏唐揚げ,ちくわ,たくわんのパッケージ)は広島駅弁当(株)製。休憩スペースにお菓子とインスタントコーヒーがあった。休憩時間に本人確認や投票用紙を渡したりする係の人達と一緒になった。話のネタでオオタニさんを切り出されたけど、思わずカープ9月失速の話を持ち出してその場をお通夜状態にしてしまった。

16.立会人席へのスマホの持ち込みは可能だったが目前を観察しているほうが面白いので見ることはなかった。念の為に筆記用具とノートも持参したが、その場で何かを書くこともなかった。但し、電気蚊とり器を持参して使用させて頂いた。

17.立会いは下手をすると長時間パイプ椅子に座りっぱなしになる。投票所からの外出はできないが、腰痛やエコノミークラス症候群にならないように適宜トイレや休憩室に行ってストレッチ体操を行った。

18.休憩時間の間に聞いた話だが、投票所の本人確認用PCはサーバー接続されておらず、その日使う分のデータをUSBメモリに入れてPCに挿して使っていると聞いた。おそらく、期日前に投票が済んだ有権者のデータについて前日夜間バッチでデータを作っているのだろうと思われる。下手にネット接続して当日システム障害であたふたするよりは賢明だと思われる。

19.高校生や大学生に立会人を経験していただくことで、選挙に対する考え方も良い意味で前向きになると期待でき、成り手不足の解消にもつながる。
また、居住している自治体が公募の場合、小使い稼ぎがてら、あるいは、社会勉強(物見遊山)がてらに応募してやってみて損はないと思った。

目標を定めて取り組めば投票立会人は得るものが多いはず。
投票にくる有権者を直接観察し、現地で問合せを受け、有権者を肌で感じるだけでも有意義と思われる。
立会人は期日前と投票当日は別々で担当することになるし、当日分についても自治体によって半日のみ負担すれば良いケースもある。
世間では投票立会人の負担云々を言われているようだが、この懸念を払拭する方法はいくつもあると感じた。

私の体験や感じたことは以上であるが、立会をする前に投票立会人についてカジュアルにわかりやすくまとまっている動画を見つけて視聴した。

動画:「投票立会人」をやってきたから体験談と解説と雑談をするよ

以下は、学生による立会人の事例である。

他所の事例であるが、足立区の日当は¥15,000とのこと。

上記の情報以外にも、noteの中で「投票立会人」で検索すると記事が散見されるので参考になると思われる。

最後に、投票立会人の経験を記述したものがネット上や書籍等でまだ少ないなと思ったこともあり、ここに記述してみることにした。私の場合、面白おかしい記事を書くことを目指しておらず、自分自身の備忘を兼ねて、未経験者が投票立会人を受ける際の一助となることを考えた上で、差し支えのない範囲で経験した情報を極力多く書き残すことに注力した。
できればプロのライターの方にきちんとまとめた記事を出して頂きたいと思う次第である。

以上