テイクアンドギブニーズの利益構造の転換期
今回はテイクアンドギブニーズのビジネスの転換について書いてみたいと思います。
テイクアンドギブニーズはウェディング業界大手でハウスウェディングのパイオニアです。創業者の野尻会長はライブドアの堀江社長、サイバーエージェントの藤田社長と同年代で注目され一時は時価総額2000億円を超える時もありましたが結婚式場を作るのに多額の資金が必要な上に受注型のビジネスのため業績が景況に左右され安定せず時価総額は2023年2月時点では180億円前後です。
ウェデイング場の運営では、土地、建物の建設に加え、ウェディングプランナーやシェフの雇用など多額の資金がかかり、結婚する若者はますます少なくなってきます。バランスシートが大きいのに受注は不安定で将来ますます市場が少なくなってくるというのが残念ながらウェディング業界の現状です。
ただ、土地建物を必要としないことに加え、あらゆる式場のウェディングを一手にテイクアンドギブニーズが引き受けることができたら話は異なります。多額の資金を必要とせず、ウェディング運営に専念することで利益構造が変わってきます。
テイクアンドギブニーズはウェデイング運営の受託でそれを実現しようとしています。具体的には有名ホテルのウェディング部門を丸ごとテイクアンドギブニーズが受託するわけです。
これは業務委託をするホテル側にもメリットがあります。例えば数拠点しかないホテルはウェディングのためにウェデイングプランナーを雇用したり結婚式の最新のトレンドをキャッチアップする組織を編成することは難しく年間請負数トップのテイクアンドギブニーズに委託をすることで固定費も抑制でき、顧客満足度もあげられる可能性が出てきます。Win-Winな関係が築けるわけです。
既に、ハレクラニ沖縄や横浜グランドインターコンチネンタルなどの錚々たるホテルが運営委託を開始しています。
次にブティックホテルの運営です。現在渋谷の神宮前にトランクホテルというブティックホテルを運営していますが、稼働率は高く他にないユニークな空間で高単価を獲得できています。2023年には奥渋で最近有名になってきたエリアに出店します。
ホテル運営は式場と同様土地の取得、建設など多額の資金が必要です。ただここでも利益構造を考慮し、基本的には土地と建物を投資会社に建ててもらい、賃料のみを支払うスキームにしています。(トランクホテルについては三菱HCキャピタルというリース会社が貸借しています。)
この所有と運営を分離することでバランスシートへの影響力が抑えられ運営に専念でき、多店舗展開も可能になるということです。
懸念点は所有のリスクを投資家に預けることで賃料がその分自前で建てるよりも高くなってしまうことです。ここについては公表されておらず隠れたリース支払い義務のようなものがないか心配です。
まとめ
ウェデイング運営受託もブティックホテルの経営も利益構造の転換を迎える判断をして押し進めている点は素晴らしいです。
そして、この2つの事業はどの会社もできるものではなく、国内トップクラスのウェディング運営実績のあるテイクアンドギブニーズでなくては実現できない取り組みです。また、ブティックホテルも私財で沢山のホテルを見てきて(ホテリエとしてコラムを執筆するほどです)成功者として日本のあらゆる起業家と繋がっている野尻社長でしか作ることのできないホテル空間です。そこらへんのサラリーマン社長じゃセンスも想像力も他のホテルを見て回る時間も確保できません。ファイナンスも実行できないでしょう。
つまり、テイクアンドギブニーズの強みと歴史が実現したこの2軸なわけです。今後1年、2年で業績に大きく貢献してくることでしょう。