メドレー(4480)オンライン診療やらクラウド電子カルテやら

メドレー社の企業分析記事です。事業展開領域が広いため、調査をしながら追記していきます。最終更新2024年6月5日


会社概要

メドレーは2009年シリアルアントレプレナーの瀧口浩平氏によって設立されました。瀧口氏は開成中、学芸大附属高校を経て高校生のうちに起業しています。

マーケティングリサーチなどの事業を経て、家族に不幸があったことがきっかけで医療分野に興味を持ちメドレー社を起業。医療事典の「メドレー」と医療・福祉業界の転職サイト「ジョブメドレー」の事業を展開します。

事業の柱は医療・福祉業界に特化した採用成功報酬型の転職サイト「ジョブメドレー」で2023年通年の単体業績では売上140億円、営業利益60億円と高い収益性を誇っています。

ジョブメドレーの成功だけでは終わらず、2016年からオンライン診療やクラウド電子カルテを提供する「CLINICS」、2021年には中小病院向けにクラウド&オンプレミスの電子カルテを提供するパシフィックシステムの買収、2024年には歯科医院向けの転職サイトで成功しているグッピーズの買収など(その他には小規模の買収を継続している)転職分野だけに収まらず病院や歯科医院、薬局、介護領域など医療・福祉全般のDX化を加速させる事業展開をしています。

これだけ事業展開に積極的に投資をしながらも上場以来赤字はなく持って財務状況も良好で積極的に事業展開をしつつも規律を持って事業マネジメントを行っている会社です。

各事業について紹介します。

収入モデル

同社は、人材PF事業と医療PF事業があるが、祖業の人材PF事業のジョブメドレーはが主力事業になります。

ジョブメドレーでは、クリニックや病院、介護施設などの採用担当者がオンライン上で求人情報を投稿し、運営側の審査を経て掲載が開始されます。それと同時に採用企業はジョブメドレーに登録する人材DBにアクセスし、スカウトメールを送ることができます。
その後、求人情報から採用が決定し、入社後に成功報酬費用が発生する仕組みです。報酬額は職種や雇用形態などによって異なりますが、年収400万円の専門職で20万円〜30万円くらいが相場です。人材紹介会社の手数料が年収の30%(120万円)ほどになるため、採用企業は採用費用を抑えることができ、かつリスクがないため多くの医療・介護事業所が掲載をするモデルです。また、ジョブメドレーアカデミーというオンライン研修サービスをサブスクリプションで提供している。

医療PF事業ではクリニック向けにオンライン診療やクラウド電子カルテを提供するCLINICS、歯科医院向けのSaaS、Dentisなど業務ソフトをサブスクリプションモデルで提供している。

人材プラットフォーム

祖業はジョブメドレーで医療、介護業界の求人・求職のデファクトスタンダードになっています。

医療・介護業界は人員要件が定められており運営をするのに圧倒的に人が必要です。ただ、法人として資金が潤沢なところが少ないため「求人サイトに掲載して採用ができなかった」というとそれだけで1ヶ月分の利益がふっとぶような状況です。また、あまりにも人が足りない時に人材紹介会社を使いますが年収の30%を支払って採用をすることは財務的にかなりの負担で1年の利益が採用費に消えてしまうなんてこともあるわけです。

そんな中、採用するまで完全成功報酬で約10万円〜ほどの安価で採用ができるジョブメドレーというのはリスクがほぼゼロで採用コストも安価なのでまずは掲載をしておくべき求人サイトとして業界のスタンダードになっています。

また、ここで「医療業界に特化した成功報酬型の転職サイトなんて他にあるんじゃないの?」と感じた方もいるかもしれません。

あります。

しかし、掲載しても全く採用ができないのです。

成果が上がらないサイトだと掲載するだけ手間になります。現場を掛け持ちしながら何サイトにも求人情報を掲載するのは大変です。そういう意味でもリスクが少なく、集客力のあるジョブメドレーが支持されているのです。

ジョブメドレーは売上が約140億円、営業利益が60億円と営業利益率40%を超えるモンスターサービスです。(はたらこねっとやビズリーチなどと同様の利益率)

ここに2024年歯科分野の求人で知名度のあるグッピーズ社を買収しグループに加えています。同社の2023年時点で売上は約23億円純利益が4億22百万円という規模です。

グッピーズは求人サイトの収益を元に、歯科医院の診療以外の全業務の受け皿になるプラットフォームを目指していましたから、既に同じ戦略で動いていて、更にDentisと歯科医院向けの業務支援サービスを既に立ち上げているメドレーの傘下に入るほうが目指す姿の実現に近いと創業者の方も判断し株を売却したのではないかと想像します。

グッピーズの2024年第一四半期決算説明会資料より

その他に医療・介護事業所向けのオンライン研修サービスの「ジョブメドレーアカデミー」を展開したり、医療・介護現場の仕事相談ができるアプリを運営する「シゴトーク」なども買収しています。

医療プラットフォーム

  1. 電子カルテ(クリニック向け(CLINICS)、中小病院、大病院(MALL))

  2. 薬局・ドラッグストア向け(Pharms)

  3. 歯科診療所向け業務支援(Dentis)

  4. 介護・福祉事業所向け(介護のほんね、シゴトーク)

などを展開をしています。

電子カルテ・オンライン診療

電子カルテはクリニック向けと中小・大病院向けで別会社でサービスを提供しています。クリニック向けはメドレー社がサービスを提供する「CLINICS」。中小病院向けは「MALL」というサービスを提供する創業1997年のメディカルパシフィックを2021年に買収することでグループに組み込んでいます。

クリニック向けの電子カルテは院内にサーバーを設置する「オンプレミス型からクラウド化の流れ」や「オンライン診療からの薬自宅配送」などの追い風がありますが、競合環境も凄まじいです。

特にオンライン診療では無数に競合が存在しますが、私は「他の収益事業がありオンライン診療、クラウド電子カルテが普及するまで投資を継続できる企業」「電子カルテやオンライン診療単体の事業ではなく複合的に顧客との接点を持っている企業」「医療分野に本気に取り組んでいる企業」でないと最終的には生き残れないと思いますのでその意味では最も生き残る可能性が高いのはメドレーとエムスリーではないかと思っています。

理由としてはクリニック側も「今回の患者はLINEドクターから」「次の患者はメッドから」からとオンライン診療する度に経路が変わるのも大変でしょうし、電子カルテ、予約サービス、オンライン診療が連携されたシームレスなユーザー体験を最終的には選択するようになると思うからです。

ただ、問題はクラウド型の電子カルテの導入にもオンライン診療もなかなか浸透するまでには時間がかかります。それまで投資を継続できる財務体制と医療分野へのコミットが企業には求められます。

その覚悟がある企業はベンチャー企業ではメドレーとエムスリーくらいしかないかなと私は想像しています。

ソーシャルゲームを提供している企業や営業系の会社からも進出していますが、とても末長く継続するとは思えません。

中小病院、大病院向けの電子カルテはまた、プレイヤーが変わってきます。富士通はPHCホールディングス傘下のウィーメックス(売上379億円)などの企業があります。

メドレーはこの分野では、オンプレミスの電子カルテのディスラプトと富士通やワイズマン、NEC、IBM、ウィーメックスのような古い体制のサービスプロバイダーからのディスラプトを狙っているのではないかと想像します。

クラウド化の流れ、DXの流れ、既存プレイヤーが大企業病で機動力が弱い点、ここらへんを勝機と考え進出したのではないでしょうか?エムスリーはライバルですが打倒の相手ではないかと思います。エムスリーとメドレーの2強で残れれば良いと考えているのではないかと思います。

その他

その他、薬局向けや歯科医院向けにもサービスを展開していますがメドレーは医療・福祉分野を全方位で変革するビジョンではないかと思います。

なぜならジョブメドレー、ジョブメドレーアカデミーなどと複雑に絡み合い、顧客企業、ユーザーとの接点が粘着力を増しよりそれぞれの事業のシナジーを高めるからだと私は想像します。

その上で世の中にまだないサービスは自社で立ち上げ、既にあるサービスで新規参入の勝算が難しい領域はM&Aで参入するという戦略をとっているのかと思います。

なお、代表の瀧口氏は接骨院へ業務管理システムや金融サービスを提供するリグア(7090)の第二筆頭株主でもあります。接骨院分野への進出も今後あるかもしれないですね。

おそらくジョブメドレーの顧客の医療・福祉・医療美容業界については基幹システムまで含めて全進出で行きたいのではないかと想像しています。
多角化に見える人もいるかもしれませんが、既存サービスとのシナジー効果も見込め、複数展開することでよりユーザーのエンゲージがますと考えているのかと思います。

収益事業の投資分野としては素晴らしいと思います。

同社の強み

2015年に開成中学時代の同級生であり、米国で医師をしていた豊田氏が代表取締役医師として加わり医療プラットフォーム事業を拡大させてきました。

瀧口氏は豊田氏をメドレー社に迎える際に、自身と同じ代表取締役という肩書きと自身の株式を譲渡しています。

豊田氏以外にも
元々Googleでエヴェンジェリストをしていた田中氏が執行役員として参画(後にTURING取締役になる)。(中学の同級生)
コーポレート部門の責任者をしていた田丸氏も弁護士資格を持たれている方(中学の同級生)
また、業績が良い時のクックパッドで執行役員をされていた加藤氏が人事の責任者を務めていたなど錚々たるメンバーが初期のメドレーに参画し同社の土台を作ってきました。

医療業界で最も注目されているベンチャー企業の一つですが、私なりに同社の強みは何かと分析した結果、瀧口氏が若い頃からベンチャー起業家であり交友関係が広いこと、名門中高に通っていたことから社会に出て活躍をしている同級生が多く転職サイトやヘッドハンティングでは絶対に獲得ができない優秀な仲間がメドレーの初期段階からいたという点だと思っています。

同社はジョブメドレーから事業をはじめ、その後オンライン診療、クラウド電子カルテ、大中小病院向けの電子カルテなどの分野に事業進出し業態を拡大しています。

転職サイトの成功では満足せず、医療の非効率性を大幅に改善でき、日本の医療・福祉業界に大きなインパクトがあり、かつ収益性も高くビックビジネスに取り組むなかなか本格的なベンチャー企業だと私は思っています。

同社の懸念点

同社の唯一の懸念点というと代表の瀧口氏が背が高くてかっこいいところくらいでしょうか。

若くして数百億円の資産を持ちイケメンというのはリスクです。

ユニクロの柳井氏、ソフトバンクの孫氏のように成功する前から結婚していて背が低くてあまりイケメンでない方は事業に専念するでしょうがイケメンは遊んで途中で他のことが楽しくなってしまうかもしれません。

今のところ、スキャンダルのようなものは出てきていないので大丈夫だとは思いますが資産家でイケメン、背が高いというのはそれなりのリスクがあるかとは思っています。

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