弱小成人向けクリエイターが「刑法175条」の廃止を実現するために実践してること【できる範囲で】
どうも、萬朶櫻です。
私は普段、成人向けのイラストやマンガを描いてゐます。
そんな成人向けクリエイターが避けられないのが「刑法175条」。
刑法175条とは、このやうな内容の条文です。
何やら難しいことが書いてありますが、簡単にまとめると、現状、AV・エロマンガ等にモザイクや黒塗りを強制するだけの法律です。法律(刑法)なので、違反する(無修正で出す)と、逮捕されます。
↓より詳しい内容や、その問題点を書いた記事。
憲法的法律的な整合性や、実際の運用上の杜撰さなど、様々な面で「無くした方が良いのでは?」とツッコミが入りまくつてゐる条文で、筆者も大いに同意してゐます。(ちなみに刑法の条文が削除されたことは今まで何度かあります)
しかしながら、たかが個人が政治を直接動かすことはできません。そこで、個人でもできる草の根活動的なことを実践してゐます。
筆者の立場
その前に自己紹介しておきます。近い属性の人の参考になるかもしれませんので。
成人向けマンガ・イラストを制作
電子メイン 同人メイン 商業経験あり(1件)
1作あたり平均100部ほど売れる
フォロワー数に基づく知名度
Twitterフォロワー約1,000人
pixivフォロワー約10,000人
その他の業界職種(出版編集サイド・実写系など)には疎いです。
「あんまりパッとしない同人作家」といふ意味では、タイトルにある通り「弱小成人向けクリエイター」と見なして差し支へないと思ひます。
基本方針
簡単に3行で表すと以下の通りです。
筆者が実践してゐることは、全てこの3つの内の1つ以上になります。
署名活動「刑法175条の廃止を求めます」に参加
主催者Twitterアカウント:STOP!刑法175条(塚本 紘士)
筆者はとりあへずこの署名に參加してみました。
政治家ではなく、立候補もできない。Twitterのインフルエンサーでもなければ、作家としての知名度もない。ネット署名は、そんな弱小個人でも簡単に実践できる数少ない行動だと思ひます。
幸ひにも、このキャンペーンの主催者の方は、例へば政治家のフォーラムに参加したり、なにか問題があれば当該省庁に問ひ合はせたり、国会議員にかけあつて請願を国会に提出したり、Twitterでハッシュタグ「#刑法175条を廃止して表現の自由を守ろう」で投稿を呼びかけたり……。かなり熱心に活動されてゐるやうです。
更には、筆者が以前やり取りした時は、事実上の「成就するまでやめない宣言」に等しいことを仰つてゐました。といふわけで、筆者は彼の活動と熱意に便乗することとしました。
運営が個人の方なので心もとない(いつ事情が変はつて活動停止されるか分からない)ですが、刑法175条に特化した団体等が無い以上、これを軸にするしかありません。今後、もつと強靭で持続可能な拠り所ができれば、また考へます。
ちなみに、この署名運動はリンクフリーなので、みなさん積極的にリンクしませう!
「刑法175条」の知名度を上げつつ、署名活動に誘導
現状、刑法175条撤廃の最大の壁は、知名度の低さだと思ひます。
恥づかしながら当事者の私でさへ、つい最近まで知りませんでした。「何だかよく分からんけど、性器はボカシを入れるものなんだなぁ」と、本当に何の疑問もなく無批判に受け容れてゐたんです。何なら国連とか国際条約で決められたグローバルな合意事項なんだとすら思つてました。(言ふまでもなく、モザイクは日本のローカルルール。海外の殆どの地域では「無修正」が当たり前です)
このやうな経験から、まづは知つてもらふ事から始めようと思ひました。たとへば多くの人が「憲法9条? ああ、戦争放棄のアレね」と即答できるやうに、多くの人が「刑法175条? ああ、モザイクのアレね」と認識できる境地まで持つていきたいところです。
そんなわけで、筆者の活動の方針は「みんなの脳ミソに“刑法175条”の単語を刻み込む」ことです。これと平行して、「モザイクまみれの現状つて、をかしくない?」と呼びかけ、更には「刑法175条の廃止を求めます」の署名に誘導して署名数を増やすこと。
たとへば、ある人が「刑法175条にはこれだけの問題点があるんですよ!」と力説しても、単なる個人の主観にすぎません。また、Twitterのタイムラインを見せて「こんなにたくさん意見がありますよ」「こんなに“いいね”やRTが付いてますよ」と言ふだけでは、どうも説得力がない。
しかし「刑法175条撤廃の署名が○○筆も集まつてますよ」と、署名数を以て客観的な数字として示すことができれば、政治家等への説得材料となるはずです。
実践例(日常篇)
「修正」を「修正」と呼ばない
これは実践といふより心がけ的なことです。
そもそも「修正」といふ言葉の意味は何でせうか? 辞書を開いてみると…
とあります。
筆者は自分の作品に「足りないところや誤り、不十分」な部分を含めた覚えはありません。私の作品は、いつだつて完璧であると確信してゐます。
にも拘はらず、逮捕・裁判・懲役リスクのために、不愉快なノイズを混入させられてゐる。いつたい、これのどこが「修正」なのでせうか? このやうな風潮には腹立たしさすら覚えます。
ゆゑに、筆者はいはゆる「修正/無修正」を「修正/無修正」と呼ばないやうにしてゐます。ちなみに、英語ではきちんと「検閲(censored)/無検閲(uncensored)」と表記されてゐます。みなさんも実態に合はせて「検閲/無検閲」と呼びませんか?
Twitterで発信。ハッシュタグ「#刑法175条を廃止して表現の自由を守ろう 」に参加など
先述の署名主催者のSTOP!刑法175条(塚本 紘士)さんがTwitterで定期的にやつてゐる「#刑法175条を廃止して表現の自由を守ろう」といふタグに毎回ゆるく参加してゐます。意味があるのかは分かりませんが、やらないよりはマシかと思ひます。
選挙で刑法175条問題に取り組む人に投票する
私達のやうな一般市民が、政治に関与できる数少ない機会です。もちろん表現の自由を重視する候補者(表現族とでも呼ぶべきか)に投票しませう。
ただ、表現の自由を掲げる候補者でも、刑法175条に直接言及する人は少ない印象です。なんとかならないものか。
衆院選や地方選挙はともかく、参院選の全国比例では、その候補者個人の名前を直接書けるさうなので、表現の自由に好意的な候補者に投票すると良いでせう。
実践例(作品制作・公開篇)
pixiv等の作品ページに署名リンク記載。
筆者を含め、国内で何かしらの創作活動をしてをり、かつネットに発表してゐる人は、必ず Pixiv を利用してゐると思はれます。大いに活用できるはずです。Pixivでなくても、YouTubeやnote、ブログ等に書いておくのは効果的でせう。
最近の作品はもちろん、ある程度伸びてゐる過去作にも、遡つて書き込んでゐます。いちわう念のため、全年齢作品にも書いてゐます。
筆者の投稿には、平均で約5000の閲覧数があるので、そのうちの1%でもリンクを踏んでくれれば、かなり貢献できさうです。
Pixivに限らず、R-18コンテンツを見に来たユーザーは、不愉快なノイズにウンザリしてゐるはず。「モザイクが無くなる(かもしれない)」といふ文言に好意的な反応すると思はれます。もとより何の疑問もなくモザイクを受け容れてゐる人にもハッと気づかせることができるかもしれません。
(ちなみに、「モザイクがある方が想像力が掻き立てられて高ぶる」的なことを言つてくる人がゐますが、アレはたぶんネタで言つてるか、もしくは「酸つぱい葡萄」的な、やせ我慢的な自己暗示が殆どだと思ひます)
有料イラストにはテキストファイルの案内を入れておく
筆者はPixivFANBOXで定期的に有料イラストを配信してゐます。その中にテキストファイルとしていろいろ書いてゐます。
以下、内容。コピペ用可。
Pixivのキャプションだと表示制限がありますが、こちらは存分に書くことができるので、モザイクの異常性の啓発や海外ではモザイク不要の旨など、より詳細な説明になつてゐます。
謝罪の文言について。本来、モザイク云々に関しては、刑法175条に強制されてゐるのであつて、クリエイター側が謝罪しなければならない道理などありません。しかしPixivの作品と違ひ、こちらは有料作品。お金を取つてゐるにも拘はらず、最も大事な部分を汚損した作品をお見せするなんて、商売人として、そしてクリエイターとして申し訳ない。さういふ気持ちから、敢へて「お詫び」とした次第です。
なほ、全年齢作品や「見えない構図」でモザイク不要の作品にも同様のファイルを入れてゐますが、そちらは上記のPixivのものと同じ、軽い案内程度に留めてゐます。
同人誌の表紙に「検閲」ラベル それからQRコードで署名リンク記載
筆者が定期的に出してゐる同人誌。もちろん多くのページが無惨に塗りつぶされてゐます。紙の本、電子版どちらも同じことをしてゐます。
★まづは表紙。
このラベルには、次の3つのメッセージが込められてゐます。
国や公的機関、あるいは印刷会社やプラットフォーム、イベント運営等によつて検閲されてゐること
その原因は刑法175条にあり、それが不当であること
「モザイクはそもそも表現を損ねるもので、本来存在してはならないものである」といふことに気づいてほしいこと
これにより、刑法175条に関係する色々なことを啓発できると思ひます。
↓せつかくなので利用したい方のために素材を置いておきます。いくつかバリエーションあります。
もしかすると、「せつかくの表紙にこんなデカいラベルなんか置いたら、美観を損ねるのでは」と思ふ人が居るかもしれません。ですが、よく考へてみてください。その作品は、すでにモザイクによつて完膚なきまでに美観を破壊されてゐるではありませんか。どうせ汚れるなら、ラスボスに一矢報いて汚れませう!
★次に序盤(前書き、あらすぢページ)。
ページをめくると、目立たないけど、間髪いれずにもう一度。大事なことなので何度も伝へます。
ここでは、いはゆる「後出し修正」について注意書きをしてゐます。特に電子版特有の問題ですが、当時は普通にOKだつたけど、数年後にサイトから「やつぱりモザイク不十分だから、濃くしなさい」と指導が入つて、なんかいつの間にかモザイクが濃くなつてる現象のことです。
ひどい時は掲載作品が削除されたり、作家アカウントが凍結させられたり…。
更にひどい場合は、警察から間髮いれずに直接摘発される例も。もちろん、国会議員や法律の専門家から多くの批判があります。
まるで「警察(や警察に追従した民間プラットフォーム)が他人の本棚に勝手に手を突つ込んで、本の中に墨を塗りたくる」やうなもの。これも刑法175条の悪い作用ですね。「こんなヒドイ事をさせられる可能性がありますよ、読者のみなさん、ごめんね。気をつけてね」といふメッセージになつてゐます。
★最後に後書き・奥付けページ
左下に1割ほどのスペースを確保して、最後のひと押しをしました。文言は次のとほり。
スマホから簡単にアクセスできるやうにしてあります。読者の1%でも参加してくれるといいのですが……。
★会場配布用のチラシの裏にお知らせ
C99の時に時間が余つたので作りました。もちろん伝へたいことは刑法175条の知名度向上と署名誘導です。配布にあたつては
①:自分のスペースに無料配布として置いておく
②:ポスターとして掲示
③:同人誌に挿んで一緒に頒布」
といふ形をとつてゐました。しかし、①はあまり取つて行く人が居らず、また②は効果があつたか確認できず。結果的に③がメインになりました。既述の「★最後に後書き・奥付けページ」とダブつてしまひ、あまり効果が無いやうに思はれました。
★同人誌即売会の会場ポスター
自スペースから見て裏側なので、どこまで影響があるかは判りませんが、いちわうやつてみました。
まとめ・要望
以上、筆者のやつてゐることを書きました。
改めて、ここまで読まれた方で論旨に賛成いただけるなら、ぜひとも署名にご参加ください。
クリエイター(全年齢・成人向けに関係なく)の方へ
ここに挙げた行動のひとつひとつは非常に些細なことで、筆者のやうな弱小クリエイターでは文字通り微力です。
しかし多くの人が同じやうなことを発信すると、読者・消費者の方に「言はれてみれば、モザイクつて意味不明だよね」といふ意識を持つてもらふことができるはずです。刑法175条の問題に取組む政治家を増やすことにも繋がるでせう。
もちろん、著名なクリエイターさんが発信されたりすると効果は抜群でせう。
この方(当時約10万フォロワー)のツイートをリアルタイムで見てゐたんですが、このツイートひとつで署名数が100以上増えて驚いた記憶があります。リプにも好意的な意見が多く付いてゐました。
他にも、他作家さんからの引用ですが、興味深い事例が。
これは、Pixivの恣意的で理不尽な検閲に対する予防的な措置としての投稿ですが。このやうな機会に刑法175条反対の旨を明示しておくのは良い試みだと思ひました(欲を言へば、署名ページへの誘導があれば、もつと效率が良いのですが…)
会社所属や商業クリエイターの方は、会社や先方との調整があるので難しいかもしれませんが、同人・趣味作品や普通のツイート等では自由に行へるはずです。
企業(出版社・電子版サイト・同人誌即売会運営)の方へ
※筆者はこちら方面には詳しくないので、実現可能性は分からないです。あくまで妄想として捉へてください。
やはり個人に比べると、法人・企業の影響力は段違ひでせう。
たとへば、出版社や電子版サイトなら、刑法175条を簡単に解説する特設ページを作つて、サイトのトップページにバナーを置いて誘導するとか。他にも自社で配信するコンテンツの冒頭に「この作品は“刑法175条”の規制によりモザイクがかけられてゐます」などといつたテロップ(ホラー映画の「ショッキングな映像があります。心臓の弱い方はご注意」のやうなもの)を表示するなど。
同人誌即売会なら、会場にポスターを貼つたり、ビラを配つたり、成人向けサークルに対して「刑法175条の規制により、あなたの作品を検閲(運営側はしばしば「見本誌チェック」などとボカした言ひ方をしてゐるが、実態は検閲に他ならない)します」と検閲の根拠を明示する形で案内するなど。
様々な方法で刑法175条の啓発は行へるはずです。
法人・企業の場合、1社が単独で行動すると、警察から「あっ! 御社、わいせつ物頒布してるの見っけ!」と言はれてしまふ可能性が考へられます。なので、業界各社で示し合はせの上、事前に粘り強く政治家にロビイングするなど工夫が必要かもしれません。
読者・消費者の方へ
成人向けコンテンツの消費者の方には、モザイク(しかもお金を払つても消えない!)がかけられたコンテンツを当たり前のものとして受け容れないでほしいです。あんなもの、普通に異常事態ではありませんか。
「よく考へてみると、モザイクつて普通にウザいよなぁ」「なんで金払つてるのに全部見れないの?」といつた、些細な疑問を頭の片隅に持ち続けていただけると嬉しいです。
もちろん、署名へのご参加もお願ひいたします。