Spaceballs(1987)はとてもくだらないパロディSFだ。そしてバカバカしいSFは人々の疲れをいやし、なにひとつ世界を変えたりしない。
■スペースボールは、1987年に公開された、メル・ブルックス監督のSFコメディ映画である。
どこかで見たような、斜めに飛んでいく文字のオープニング(要眼鏡)が終わると、画面奥に向けて宇宙船が飛んでいく。しかしやたらに長い。やく1分半にわたって、いくらなんでも長すぎる宇宙船が延々と飛び続ける。スターデストロイヤーどころの大きさではないこの船は、スペースボール1と言って、なんと巨大なメイドロボに変形することができる。バカバカしい。
■スペースボールは『スターウォーズ』をはじめとするSF映画のパロディ作品である。昔、一度だけ深夜放送で見て、ひとめで気に入ったのだが、バカバカしすぎて定価で買うほどではないので、再び見る機会が無いかとずっと思っていたものである。きっと正当な許諾を得ていない気がするが、ファンが多いのかネットで容易に全編が見られることに気が付いた。吹き替えは吹き替えで、声優陣も豪華で良いが、オリジナルのものもある。言葉遊びなどは、オリジナル言語でないとわからないものも多い。(らしい)
ストーリーはどうでもいいのだが、一応説明しておこう。
■何らかの理由で空気を使い果たした邪悪なスペースボール星は、近隣の平和なドルイディアから空気を奪い取ろうとしていた。ドルイディア星はシールドで守られており、解除するには秘密の暗証番号が必要だ。そこで、スペースボール星のスクルーブ大統領は、無慈悲なダーク・ヘルメット卿を差し向け、美しき王の娘ヴェスパを誘拐し、暗証番号を聞き出して大気を奪おうとする。
一方、キャンピングカーに毛の生えたような宇宙船で宇宙を旅する勇敢な流れ者ローン・スター。ローン・スターは、醜いピザ人間、“ピザ・ザ・ハット”から巨額の借金100万ドルの取り立てを受けていた。娘を誘拐されそうになった哀れなドルイディアのローランド王は、100万ドルの報酬支払いを条件にローン・スターに王女の救出を依頼する。
■この、ローン・スターとかいうハンサムが、いわゆるルーク・スカイウォーカーであり、ハン・ソロである。どちらかというと、ハン・ソロである。
ルークとソロという2人のハンサムを登場させたことによって、スターウォーズは話がややこしくなった。その結果、レイア姫とルークが兄弟になったのは周知のことであろう。ハンサムを一人の人間として登場させることにより、スターウォーズの抱えていた問題をシンプルに解決する英断だ。
ちなみに、ローン・スターの相棒は半獣半人のバーフ。大雑把に言うと、雑なチューイだ。見ればわかる。なお、先述のピザ・ザ・ハットというのは言うまでもなくジャバであり、完全にダジャレだが、ジャバより生理的にキモイという特徴がある。
悪の戦艦スペースボール1で、王女たちを負うのは、無慈悲なダーク・ヘルメット卿とトンチキたちだ。ちなみに、トンチキは名前で、乗組員の大部分がトンチキ一族の親類で占められている。邪悪なダーク・ヘルメット卿は、巨大なヘルメットを特に意味もなくかぶっていて、魔法めいた力「シュワルツ」を操る強大な敵だ。決してフォースではない。
■逃亡したローン・スターと王女は、ワープ航法めいた移動の結果、渇いた砂の惑星にたどり着く。そこに現れるのが、謎めいた老師、ヨーグルトである。
ヨーグルトは、辺境の砂漠の星で、キャラクターグッズを販売している(Merchandising)という。スペースボールTシャツ、スペースボール塗り絵、スペースボールランチボックス、スペースボールシリアル…
言うまでもないが、この話は、ルーカスがスターウォーズの商品化権利をもとに、グッズの販売で儲けた結果、以後、ルーカスフィルムとして続編を作り続けることができた、というエピソードにちなんでいる。
別れ際、老師はこういう。
この映画で、自分がもっとも気に入っているシーンである。色々あって、愛すべき王女をさらわれたローン・スターは、決してヨーダではない老師から不思議なフォーチュンクッキーを受取り、王女の奪還に向かう。
■全部を解説するほど大した話ではないので、あとはかいつまんで見どころを列挙しておこう。言っておくが、くだらない事ばかりだ。
・やたら声帯模写がうまいレーダー手
(マイケル・ウィンスロー、ポリスアカデミーの名場面の数々を見て欲しい)
・肝心の暗証番号は、12345。
・アクションシーンのあとに、ローン・スター一行を捕らえるが、スタントマンだった。
・ダーク・ヘルメットは、実は、ローン・スターの父親・・・の弟の甥のいとこの以前のルームメイトである。要するに、いとこのルームメイト、つまり赤の他人だ。
(I am your father...’s brother’s nephew’s cousin’s former roommate. )
・ピザ・ザ・ハットは、自ら自らを食べてしまい、死ぬ。
終始、バカバカしい事ばかりが描かれる、とても素晴らしい映画だ。
本作の制作に際し、メル・ブルックスは、ジョージ・ルーカスに許可を求めた。メル・ブルックスのファンであったルーカスは制作を快諾。結果、本作のサウンドは、スカイウォーカーサウンドが手掛けており、無駄にホンモノっぽいゴージャスなものになっている。
■いったい誰に向けて、何のためにこの映画の話をしているのか、自分でもサッパリわからなくなってきたが、なにひとつ頭を使うことなくみれる作品なので、気晴らしにぜひ観てもらいたい。得られるものが何もない、何の役にも立たない素晴らしい時間が過ごせることだろう。
"May the Schwartz be with youuuuuu!"