見出し画像

解決方法が見つからないのではない。問題を見つけることができないだけだ

なぜこれほど多くの人々はあんなに働いてからディズニーランドに逃げ込むのだろう?

大ヒット映画「ガタカ」が描いた完璧な遺伝子を求める近未来は、どことなく過去の優生学運動を彷彿させた(中略)大規模な遺伝子科学の始まりには、戦後の広島と長崎の被爆者研究が少なからず起因していたため、この分野は放射線による悲惨な先天性異常や疾患と結び付けられて考えられるようになった(中略)(※ベテランの訴訟弁護士クリス・)ハンセンはACLUのナショナルリーガルスタッフであり、その中でもひと握りの特定任務を負わない───つまり自分が最も重要だと考える案件ならどんなことでも、権限と予算を行使して追求することのできる在野の戦士、ジェダイ・マスターだった。ハンセンは言う。「私の仕事は、この国のどこか、どんなところからでも、不正義を探し出してくることでした。テーマとする領域に制限はなく、地理制限もありません。見つけるべきは市民の自由に関連する不正義であり、その解決策を考え出すのが責務でした(中略)現在八八歳になった(※ロバート・W・)スウィート判事は文明の利器に感謝していた(中略)スウィート判事は、普段と同じように、朝の始まりをスカイリンクで過ごした───その広大な室内アイススケート場からは、ハドソン川が一望できる。驚くほどの才能をもった未就学児から、スウィートと同じくらいの年長者までが、ハリー・ポッターの楽曲やアンドレア・ボチェッリに合わせて滑りながら、乳白色の氷で被覆された眼下の川を一瞥している。スウィートは、旧ソ連のオリンピック選手であるトレーナーの下、新しいダンスの型に取り組んでいた。九〇歳にもなろうという老紳士が、このような娯楽に興じているのを好奇の目で見る人もいたが、スウィートは屈しなかった。ヘルメットを被り、膝当てをして滑る彼は、氷上で大きな怪我をしたことはない。しかし何よりも、彼にとってスケートは健康を保つだけでなく、審理や動議が行われる長い一日の始まりに、頭脳を明晰に保つために最適な方法でもあった ※引用者加筆.

サイコパシーは現実の世界の役者である(中略)彼ら(※サイコパシー)の多くは、礼儀正しく魅力的である(中略)この種の人間は演技力に長けるため、私たちと同じ健常者であるかのように完璧な演技をするのである(中略)彼らの多くは健常者のように自由な生活を送っている(中略)彼らは私たち健常者と同じに見えるため、長い間、周りの人間を欺き続けることが多い(中略)読者の中には「製造の時点」で「不良品」である人間がいるという事実が信じられないだろう ※引用者加筆.

ベイズの定理とは、一八世紀のイギリスの牧師トーマス・ベイズが賭けゲームの勝率を計算しやすくするために考案した公式で、ある事前情報が新しいデータや条件に即して真である確率を記述する。予測誤差が生じたとき、私たちはその新しいデータに照らして、それまでもっていた信念を更新する。

ダーウィンは思いやりのある人物だったが、大英帝国の上流階級に属しており、イギリス人は他の誰よりもすぐれているとみなしていた。

「先天的対後天的」という表現は、チャールズ・ダーウィンのいとこであるフランシス・ゴルトンが広く一般に広めた(中略)ゴルトンは1000人近くの「著名」人を調べたが、ごく一部を除いて皆、イギリス生まれの男性であり、なかには彼自身の親戚も含まれていた(中略)天才は家系によるもので、遺伝であるから、人の能力は出生児に受け継がれるもの、という見方だ(中略)できることなら、ゴルトンのこの選抜育種の発想が、優生学の始まりになったことは忘れたい。なぜならこれが、国家社会主義の死の収容所につながったのだから。ゴルトンの考えはとにかく間違っていた(中略)ゴルトンはグレゴール・メンデルの業績を知らなかった(中略)それぞれの遺伝子が、その性質を現すか否か、現すならいつ現すかをコントロールしているのは、このスイッチ(※各遺伝子にくっついている小さなタグであるエピジーン)だ。簡単に言うと、遺伝子は生物の特徴の先天的な側面で、エピジーンは後天的な側面ということだ。人というものは、どのように育てられるかと、自分が生活する環境、そして自分がその環境や自分自身をいかにコントロールするかがそれぞれの遺伝子の活性化(表現)に影響する。※引用者加筆.

バイアスは統計学的な概念だが、これは非常に不安定なものだ。データの切り取り方次第で簡単に消えてしまうことも多い。一方、差別というのは因果的な概念である。現実を反映しており、常に安定している(※1810年、フランシス・ゴルトンの「遺伝の法則の典型」と題された講演。そこで使われたゴルトン・ボードを数学的に証明したのがピエール=シモン・ラプラス)(中略)現代の私たちがゴルトンの研究の欠陥を指摘するのは簡単だ。そもそも「優れている」とは何だろうか(中略)ゴルトンは、メンデルやハーディ、ワインベルクの業績をまったく知ることなく研究をしていた(中略)たとえ「ホイッグ史観」と罵られても私は言うべきことを堂々と言わなくてはいけないと思っている。※引用者加筆.

もの静かな修道士メンデルは、表舞台に出ない運命にあったようだ。

優生学(eugenics)という言葉は、一八八三年に、イギリス人フランシス・ゴルトン(一八二二〜一九一一)によって造られた。

遺伝病などさまざまな遺伝子異常を持つ人は「分類」され、レッテルを貼られ、職業や結婚など社会生活のすべての側面で差別される

(※1869年、フランシス・ゴルトンは)『遺伝と天才』(日本では1916年に早稲田大学出版部が発行)を発表(中略)彼らは自らの計画を「優れた種」を意味するギリシャ語にちなんで「優生学(eugenis)」と呼んだ(中略)しかし、そこには負の面もあった(中略)ゴルトンは、精神障害者や犯罪者、貧困者らは「下層階級となる子孫を残す機会を制限するために」修道院に収容されるべきだと主張した。人種改良の発想は、雑草排除の考えに変わっていった(中略)(※ハリー・)ラフリンは劣った血統の市民を排除するための法案を通過させる力を持った政治家に働きかけるロビー活動家の役割を担当(中略)優生記録所にははっきりした使命があった(中略)劣った家系を見分けて、彼らの結婚や子作りを防ぐのだ(中略)自由にうろついているその類の人々には不妊手術を施すことだった(中略)望ましくない特徴の家系図の作成を指示(中略)計画では、不適格者のみならず、家族に不適格者がおり、不適格者となっていた恐れのある者も対象となっていた(中略)遺伝子プールからそのような血統を完全に断つこと(中略)リストには(1)知的障害者、(2)貧困者、(3)アルコール中毒者、(4)犯罪者、(5)てんかん患者、(6)精神障害者、(7)生まれつきの虚弱者、(8)性病患者、(9)奇形の者、(10)盲・聾・唖の者、の10項目. ※引用者加筆.

一八九八年にドイツの『体育教育学雑誌』に、「体を激しく動かすと、子宮の位置がずれ、あるいは子宮が緩み、脱腸や出血を起こし、結果的に不妊症になり、丈夫な子どもを産むことができなくなる」という論文が掲載されていたりする。コレこそが、意味があいまいな目的のために科学を捻じ曲げて利用した、長い黒歴史の一部である。アメリカで広がった優生学もその一例である。一九三一年にアメリカのの二九の州で、遺伝的に不適合と判断された人について、強制的に不妊手術することを認める法律が制定された。ハーバード大学の元学長チャールズ・ウィリアム・エリオットは、道徳的退廃から州を守るためには優生保護法が必要だと述べた。残念ながら、優生保護法が廃止されるまでに、七万人近くの人びとが不妊手術を受けさせられた。

(※優生学とは)劣る資質の持ち主は(20世紀初頭のアメリカでは、北ヨーロッパ人以外を意味していた)子どもをもうけない方がいいとされた(中略)「欠陥」とされる資質を持つ人は不妊手術を行うべきだ、と。ビネーのIQテストを改訂した20年後、ターマンはヒューマン・ベターメント・ファウンデーションを共同設立した───「劣った」人種への不妊手術を擁護する団体である(中略)軍のためにプリンストン大学でSAT(※「Scholastic Aptitude Test(学力適正テスト)」)を研究した心理学者のカール・ブリガム(※反ユダヤ主義者)が、ターマンの後を継いだ。彼はターマンほど狂信的ではなかったものの、優生学を熱心に支持していた。しかし何年かのち、彼はテストにたいする考えを一変させた(中略)優生学者の集まりで講演するために招待されたブリガムは、その場で自身の疑念を口にした(中略)この分野の研究を進めれば進めるほど、心理学者たちが大きな罪を犯してきたと思えてならない(中略)死ぬ直前、彼(※ブリガム)は自身が作成したテストを「輝かしい誤り」と呼び、つぎのように書いている(中略)いまはそれを誰も信じていないことを願う───ブリガム(中略)(※ところが)ハーバード大学のふたりの革新論者(※優生学運動には手を染めていない左翼の改革派コナントとチョーンシーによる上流階級主義への対抗策としてSATを利用)が、SATの評判を救出し、猛烈に勢いづけることになった(※その後コナントは原爆開発マンハッタン計画の統括者に)(中略)彼らの努力が、アメリカ人の人生にSATを永遠に固定させる結果となった(中略)しかし最終的に、このテストの流行をもっとも痛烈に批判したのは、もっとも初期の主導者だったルイス・ターマンその人だった(中略)(※しかしながら)IQテストが予測装置として機能しないという事実も、知能テストにたいするアメリカの熱意を冷ましてはくれなかった(中略)21世紀のいま、SATは全世界の大学で実施されつつある。※引用者加筆.

教科書の一つ『私たちの健康生活』(中教出版)では、優生学の創始者の一人とされるイギリスのフランシス・ゴルトン(1822ー1911、進化論のチャールズ・ダーウィンのいとこである)の肖像画まで掲載して、「優生学という学問は、遺伝の学問を基礎にして、民族の質をよくすることを研究する学問である。英国のゴルトンは1869年『遺伝的天才』を発表して、優生学の基礎をおいた。優生学はわが国でも研究されている」と解説(中略)項目の中で、「悪い遺伝によって不幸な人の生まれることは、その家庭にとっても重荷であるばかりでなく、社会にとっても困ることであるから、わが国では、1948年に優生保護法という法律を出して、社会の健康をはかるために、なるべく悪い病気のある者に手術をほどこして、その子供が生まれないようにすることが認められた」と誇らしげに述べている。それと前後して「色盲の遺伝」と題した家系図の解説がつらなる(中略)『保健体育科辞典』(恒星社厚生閣)の「色弱」の項目にも、「職業選択などの日常生活に注意するとともに、結婚などにおける優生対策が予防上大切である」という記述がある(中略)「色覚異常」が、排除のための装置として安易に利用されている(中略)遺伝学者がそのまま優生論者であったことも多い(中略)日本では1970年代まで、中学・高校の「保健」の授業で、「結婚」について、「色盲」などの「先天遺伝疾患」の持ち主が結婚し家庭を持つことには慎重であれという指導を行なっていた(中略)その根拠となった「優生保護法」は1996年まで「現役」だった(中略)娘が先天色覚異常の男と結婚しようとするなら、一族をあげて大反対する。あるいは結婚相手の身辺調査をして先天色覚異常の親類はいないか確認する。先天色覚異常の当事者たちは、ひたすら黙り込み、自制を強いられる。生まれつき劣等に生まれた者として、自らの出自を呪い、その呪いの遺伝子が娘や孫に伝わることを恐れる(中略)本当に無茶苦茶な話だが、こういったことが「社会のため、本人のため」という理由で実際に行われていた。色覚異常の当事者たちは、まさにこのような社会の中で、学校の教科書に書いてある公の指導として「不用意に結婚したり、子供を産んだりすることを避けなければならない」と言われ続けたのである。

人間の改良を目指す人為選択を促進するために、「優生学」という言葉を造語したのは彼(※ダーウィンの半いとこフランシス・ゴルトン)だった(中略)フランシス・ゴルトンは、個体の能力と社会的な争いのあいだには単純な関係があると想定していた(中略)ところがニワトリ実験が示唆するところは、優生学が普通に実践されている家畜を対象にしてさえ、この理論は誤っていたということだ(中略)なぜなら、それはグループのメンバー同士がどう振る舞い合うかに依存するからだ(中略)(※トマス・ヘンリー・)ハクスリーは優生学を「ハト愛好家の政体」と呼んで嘲笑した(※優生学を否定し「ハト愛好家の政体」だとして揶揄した) ※引用者加筆.

小説家H・G・ウェルズは、次のような文章を書いた。「私たちは、数は少なくとも、優秀な子供たちを望む(中略)私たちを苦しめてきた、生まれも育ちも悪い下等市民が大勢いては、私たちが目指す社会生活も世界平和も、実現は不可能だ」。(中略)(※マーガレット・サンガーは)「適合者の子供を増やし、不適合者の子供を減らす」ことができると主張(中略)(※コーンフレークの)ケロッグは、異常者になるべく運命づけられた者は「情欲の結果として生まれた」と発言(中略)(※ピグマリオン、マイ・フェア・レディの脚本家の)ジョージ・バーナード・ショーも、優生学の支持者だった(中略)ショーは下層階級の排除を全面的に支持していた(中略)『ピグマリオン』の主人公イライザ・ドゥーリトルのような貧しい花売り娘はもうたくさんということだろうか(中略)セオドア・ルーズベルトも優生論に加担した一人(中略)マディソン・グラントは、KKKや国家社会主義ドイツ労働党(ナチス)の偏見に科学的根拠を与えることとなった(中略)のちに染色体の研究でノーベル賞を受賞した遺伝学者のトーマス・ハント・モーガンは、グラントのいうような北方人種やアーリア人は存在しないと述べた。生物学的にいえば、すべての人間は多数の遺伝的背景が混ざり合った結果誕生している。人種はただ一つ、人類しか存在しない(中略)おそらく、最も鋭く反対意見を書き連ねたのは、イギリスの作家で詩人のG・K・チェスタトン(中略)チェスタトンはグレゴール・メンデルの科学と、マディソン・グラントの擬似科学の間にくさびを打ち込んだ(中略)米国の優生論者は、ヒトラーの活動を喜んで受け入れた(中略)IBM社は、ユダヤ人かどうかを判定できるように、家系図を整理するための装置をナチスに提供(中略)赤狩りに加わることを拒否した劇作家のリリアン・ヘルマンは、下院非米活動委員会で声明文を読み上げた。その有名な一節をここで紹介しよう。「私は今の風潮に迎合して良心を捨てることはできないし、そうすることはしない」。※引用者加筆.

(※ダーウィンのいとこのフランシス・)ゴルトンは優生学の父として、また人びとのあいだの身体的格差の計測に貢献したことで歴史に名を残している。彼の奇妙なプロジェクトの一つは、イギリスの「美人地図」だった。一九世紀の終わりごろ、さまざまな地域の女性をひそかに観察して、最も醜いレベルから最も魅力的なものまで格付けすることで作成されたものだ(中略)ばかげた取り組みと見なされたであろう研究を、まっとうな科学らしい体裁で取り繕ったのだ。※引用者加筆.

優生学の目標は、「より目的に適う種族または血統が、そうではないものよりもすばやく増殖するようにすること」だった(中略)優生学のイデオロギーは、人間の優劣にもとづくヒエラルキーが存在(中略)そのヒエラルキーに由来する社会的、政治的、経済的な不平等は───優れた者はより多くを得、劣った者はより少なく得るのは───不可避であり、自然であり、正統であり、必要だというのが、優生学の思想(中略)(※チャールズ・ダーウィンの従兄で、「優生学」という言葉を造った人物)フランシス・ゴルトン以来、優生学推進派の思想家たちは、間違った情報のキャンペーンを着実に推し進め、新たな社会を思い描いても無駄だと人々に信じさせることに成功してきた(※ゴルトンが目指したのは、イギリスの階級構造は、生物学的に受け継がれた「卓越性」によって生じたと論証することだった)(中略)ゴルトンは、DNAの何たるかを知らなかった。なにしろDNAはまだ発見されていなかったのだから(中略)遺伝的差異と社会的不平等との関係についての人々の理解は、ゴルトンの最初の定式化からほとんど変わっていない(中略)遺伝(※へレディティ)の研究には、この分野が科学として発展しはじめたごく初期から、レイシズム的な行動を正当化するレイシズム的な概念が織り込まれてきたし、遺伝学を利用しようとするレイシストたちの情熱は、二十一世紀に入って久しい今日も続いている(中略)下層階級の人たちが、ここまで道徳的に無防備なまま放置されたことは、いまだかつてない(中略)不平等を生み出している制度的な力に気づくことができなければ、その力が中立性と受動性の仮面をかぶり続けることを許してしまうことになるのだ(中略)不平等を作り出す制度的な力としての遺伝くじに気づくことができなければ、優生学的遺伝学の思うツボだ───遺伝に関連する不平等が批判的検討を免れて、「自然」なことであるかのように生き延びるのを許してしまうのだ(中略)日本では、旧優生保護法(一九四八〜一九九六)のもと、遺伝性疾患やハンセン病、精神障害のある人たちに対し、子どもを持てなくする不妊手術が行われていたことが近年大きく注目されているからだ。手術が強制的だったケースだけでも一万六千五百件(中略)法律改正から二十年あまりを経て、ようやく被害者たちが声を上げはじめ、ドキュメンタリーなども制作されるようになり、被害者への補償をめぐって法廷での戦いが続いている(中略)一九世紀に誕生した優生学というニセ科学(中略)今ではまとめて優生思想と呼ばれるこうした考えは、歴史上に無数のおぞましい爪あとを残したにもかかわらず、いまだに葬り去られたとは到底いえない状況だ。とくに現代においては、SNSという媒体を得て猖獗をきわめている(中略)一方、科学としての遺伝学は、優生学とはほぼ同じ頃に産声を上げたが、誕生するやいなや優生学に取り込まれ、抑圧と差別を正当化するために利用されてきたという残念な歴史がある(中略)遺伝学を優生学から奪還しなければならない(中略)なぜなら、遺伝学は自然を記述する重要な科学であるばかりか、平等な社会を願う人たちにとってけっして敵ではなく、むしろ手放してはならない強力な味方だと考えるからだ───訳者(※青木薫氏)あとがき ※引用者加筆.

結局のところ優生学は、現状維持より改革に、利己主義より社会的責任に、自由経済よりは計画経済に重きを置くものだった(中略)これらの運動はダーウィンの理論の誤解によって勢いを増した(中略)優生学運動はナチスと結びついたことで決定的に信用を失った(中略)博学者フランシス・ゴールトンが当初発表したのは、「優秀な人間同士の結婚を優遇し、その子孫を増やすことができれば、人間の遺伝材料を改良できるかもしれない」という考え(積極的優生学)だったが、その考えが広まったときには、「不適者」の生殖を抑制するという考え(消極的優生学)にまで拡大解釈されていた(中略)同性愛者の大虐殺も、消極的優生学の論理的延長にすぎないといわれることが少なくない(中略)今日わたしたちがこれらをただの時代錯誤ではなく、間違った考えだと思えるのは、より良い歴史的、科学的理解を享受しているからにほかならない。

優生学理論──第二次大戦の終結後まで米国の医学にはびこっていた

(※クリスパーと呼ばれるゲノム編集技術を発明したジェニファー・)ダウドナが最も心配するのは、リスクや適切さについての議論がなされないうちにヒトの生殖細胞が改変されることだ。精子や卵子、受精卵の遺伝子を書き換えることは、まだ生まれていない子供や、その次の世代にまで影響を及ぼすことを意味する。未来の人間のDNAを永久的に書き換える準備が、私たちにできているのだろうか。それは一歩間違えれば、『ガタカ』で描かれたような、より「優れた」人間を作るための操作、さらにはナチスドイツが信奉し、ユダヤ人や同性愛者・精神疾患患者・身体障害者らのホロコーストを引き起こした優生学の復活につながりかねない(中略)映画『ガタカ』は、ヒトの遺伝子操作が当たり前になった近未来を舞台に、人間の自由意志の強さを描く美しい映画だ。序盤にこんなシーンがある(中略)自然妊娠によって生まれた主人公は、生後すぐに、三十代前半で心臓病によって死ぬ運命にあると宣告される。両親は次の子を「普通のやり方」で得ようと決める。体外受精ののち、確実に健康に育つ受精卵を選別して子宮に戻す方法だ。主な遺伝病の可能性がなく、目や髪の色もあらかじめ指定した通りの幾つかの受精卵が候補になる。遺伝学者は、両親に性別を選ばせると、さりげなく付け加える。「勝手ながら、早期脱毛、近視、アルコール中毒、中毒に対する脆弱性、暴力や肥満などの傾向など、潜在的に有害な条件も取り除きました」。遺伝子操作で生まれながらに優れた知力・体力が約束された「適正者」とそうでない者が区別され、「不適正者」には職業を選ぶ権利すらない──。『ガタカ』の世界は、公開当時はまさしくフィクションだったが、二十年後の今、そうとも言い切れなくなっている。※引用者加筆. 

SFは、私たちが熟考すべき警告も発している。『ガタカ』〔訳注 1997年公開のアメリカのSF映画。アンドリュー・ニコル監督作品〕は、私がこれまでに見たなかで、最も深く掘り下げられている一方で最も気が滅入る映画の一つだ。『ガタカ』が描くあまりに現実的な未来では、富裕層が自分の子どもたちに遺伝子操作を施して、あらゆる点───容姿、運動能力、知性、視力など───でほぼ完璧にし、産児制限活動家マーガレット・サンガーをはじめとする優生学支持者らの思想をディストピア的未来に実現させている。ストーリーは、遺伝子操作を受けていない1人の人間と、彼が生涯の夢を叶えるためにせねばならない苦労を中心に展開する。それは私なら、とても生きていたいなどとは思えない未来だ。

遺伝子スクリーニングと選別の可能性は、イーサン・ホークとユマ・サーマンが主演した一九九七年の映画『ガタカ』(Gattaca)(このタイトルはDNAの四つの塩基を表す文字A、T、G、Cでできている)によって人々の想像力をかきたてた。その映画は、最高の遺伝体質を持つ子どもを産むために、遺伝子選択が一般的に行われるようになった未来を描いている(中略)ホークが演じた主人公は、着床前遺伝子操作の恩恵あるいは重荷を受けることなく宿され、宇宙飛行士になるという夢を叶えるために遺伝に関する差別と戦わなくてはならない(中略)まるで『ガタカ』のワンシーンのようだが、二〇一九年には現実に、着床前診断を利用して赤ちゃんを設計するサービスが、ニュージャージー州のスタートアップ、ゲノミック・プレディクションによって開始された(中略)一〇年以内にIQの予測が可能となり、両親はとても賢い子どもを選べるようになる、とその創設者は言う(中略)オリンピックで金メダルを獲得したスキー選手、イーロ・マンチランタで発見された珍しい遺伝子も、身体能力を強化する。マンチランタは当初ドーピングを疑われたが、調べたところ、赤血球の数を二五パーセント以上増やす遺伝子を持っていることがわかった。そのせいで持久力と酸素利用能力が自然に高くなったのだ(中略)記憶力は、精神的機能の中で最初に工学的に改善できる可能性があり、幸い、IQに比べて、それほど異論の多いテーマではない。マウスではすでに、神経細胞のNMDA受容体の遺伝子を強化するなどして、記憶力の向上が計られてきた。人間の場合、それらの遺伝子を強化すると、高齢者の記憶障害を防ぐだけでなく、若い人の記憶力を高めることが期待できる。おそらく認知スキルが向上すれば、わたしたちはテクノロジーをより賢く使いこなせるようになるだろう。しかし「賢く」というのはどういう意味だろう。ヒトの知性に組み込まれているあらゆる複雑な要素の中で、賢さは最もとらえどころのないものだろう(中略)自ら発明したゲノム編集技術をどう使うかを熟考しなくてはならない。賢さを伴わない発明は危険だ ※引用者加筆.

『ガタカ』流に、子どもたちに遺伝的「不適合者」のレッテルを貼るためにポリジェニックスコア(※農業で言う「推定育種価・EBV」の人間バージョン)を使おうと言い出した者はまだいないが、著名な行動遺伝学者の中には、教育と職業の選抜にポリジェニックスコアを使おうと提案した人たちはいる。その筆頭が、(※『ブループリント』著書の)心理学者で行動遺伝学者のロバート・プロミンだ(中略)ポリジェニックスコアは高いけれども親の社会・経済的地位がもっとも低い階層に属する子どもたちは、ポリジェニックスコアは低いけれども親が裕福な子どもたちよりも、大人になってからの暮らし向きは平均として良くない(中略)貧しい家庭に生まれれば、遺伝的には有利ではないが富裕な家庭に生まれた子どもたちと比べて、成人後の社会経済的な地位は低いままなのだ(中略)大切なことなのでもう一度言うが、まともな学者の中に、不平等が百パーセント「遺伝」のために生じていると考えている者はいない(中略)残念ながら、教育、心理学、社会学の各分野で仕事をしている科学者たちは、この問題に取り組むどころか、自分たちには関係のない問題だと言うことにして片づけてしまうことが多い(中略)社会科学の多くの領域には、今なお一種の認識論的「暗黙の共謀」がある(中略)自分ではその問題を取り上げず、他の研究者の仕事を評価する場合にも、その点には目をつぶるのだ(中略)人々のあいだの遺伝的差異は、社会学者たちが理解して変化させようとしている環境的差異と絡み合っている。しかしその考えを人前で口にすると、敵意を向けられることがある(中略)あなたの自由意志が働ける領域を決めているのは、あなたの遺伝型でもなければ環境でもなく、あなたというひとりの人間の表現型空間である(中略)あなたがどんな人間になるかを選択するとき、哲学者ダニエル・デネットが言うところの「自由の余地」がどれだけあるかを教えている ※引用者加筆.

今日、従業員は、アメリカ連邦法によって職場における遺伝情報差別から守られている。この法律「遺伝情報差別禁止法」(GINAジーナ)の趣旨は、雇用と健康法保険に関して、遺伝子の差別から人々を守ることにある(中略)この法律は、一部の人によって「反ガタカ法」と呼ばれ(噂によると、遺伝子によって階級が二分される未来を描いた1997年のSF映画『ガタカ』を見て、法案を支持することにした政治家たちがいたという)(中略)だが残念なことに、GINAは、生命保険と身体障害者保険に対する差別からの保護策にはなっていない(中略)保険会社はいまだに合法的に高額の保険料を請求したり、保険販売を拒否したりすることができるのだ(中略)どうか見極めるよう、口をすっぱくして助言している理由だ。なぜなら、そういった検査によって判明する情報は、健康には欠かせないものかもしれなくても、あなた自身、あなたの直近の家族、そしてあなたの遺伝子を受け継ぐ子孫すべてに対して、傷害保険と生命保険の販売が拒否される要因になりかねないからだ。

歌舞伎の演目「勧進帳」は、指名手配中の源義経が武蔵坊弁慶とともに変装して安宅関所を超えるという話です。義経が弁慶の弟子として関所を通ろうとすると、その関所を守っている富樫に怪しまれます。「それ、義経じゃないか」と言われた時に、弁慶が主人である義経に対して、「おまえがモタモタしているから、こんな疑いをかけられるんじゃないか」と言って棒で打つという筋です。この時、富樫はそれを見て騙されたと思うのは野暮な解釈です。関所を守る富樫は、仕える者が主人を打つという、当時としてはありえないことをあえてする弁慶を見て、「この主人をそこまでして守りたいと思っているんだな」と理解し、見て見ぬフリをして義経を通します。観客としては、「関所を守っている富樫にバレないか」というサスペンスで見るのか、「2人の主従関係に感銘を受けて冨樫が気づかぬフリをして通してくれた」と考えるかで、野暮な人と粋な人に分かれます。ここで面白いのは、「勧進帳」の主人公が富樫になっていることです(中略)洞察力をつけるためには、自分がその難しさを体験してみることです。そうすれば、一見、簡単そうなことでも、それをするためにどれだけのハードルを越えて、修羅場をかいくぐってきたかがわかります。修羅場をかいくぐっているから、洞察力がついてくるのです。

ヴィンセントという名前はラテン語の 'vincere' を語源としており、 '征服' あるいは '克服' を意味している(中略)名づけたのは、ヴィンセントに短命の確率を克服して欲しいという親心からしたことだ。

損保美術館 引用者撮影.

ハーバードの哲学者マイケル・サンデルが述べた通り、「(DNA研究のパイオニアジェームズ・)ワトソンの言葉には、古い優生学の気配が少なからず漂っている」。コールド・スプリング・ハーバーがかつて優生学研究を牽引したことを思うと、それはその研究所から漂ってくるとりわけ不快な気配だった(中略)一九八六年以来、コールド・スプリング・ハーバー研究所では、ワトソンが立ち上げたヒトゲノムに関する会議が毎年開かれてきたが、二〇一五年秋から新たにクリスパー・ゲノム編集に焦点を当てた会議が開かれることになった(中略)出席者の中には、それを歴史的瞬間だと感じた人もいたようだ、スタンフォードの生物学者、デヴィッド・キングスレーは、ワトソンとダウドナが話しているところを写真に収めた。しかし、四年後の二〇一九年の会議をわたしが訪れた時、最前列にワトソンの姿はなかった。会議から追放され、肖像画(※ルイス・ミラー作)も撤去されていた。現在、彼は国外追放の身となり、妻のベスとともにコールド・スプリング・ハーバーの北端にあるバリバングと呼ばれるパラディオ様式の邸宅で、優雅だが孤独に苛まれる日々を送っている(※ワトソンはアフリカ人が遺伝的に劣っているとほのめかし、そのことについて挽回の機会を与えられるも挽回、前言撤回しなかった為。しかし統合失調症で40代後半のワトソンの息子はこう弁明する「父の発言は、父が偏屈で差別的だという印象を与えるが、それはただ、父が遺伝的運命をかなり狭く解釈していることの表れにすぎない」と)(中略)マイケル・サンデルも参加した生命倫理科学(中略)この(※生命倫理評議会の)報告書の著者たちは安全面より主に哲学的な問題に焦点を絞り、幸福の追求とはどういうことか、天武の才を大切にするとはどういうことか、与えられた人生を生きるとはどういうことか、といったことについて論じた(中略)「わたしたちは優れた子どもを望んでいるが、それは出産を製造に変えたり、他の子どもより優秀になるよう脳を改造したりすることによってではない。わたしたちは人生において優れた成果をあげたいと思っているが、それは自分を化学者の製造物や非人間的な方法で勝利や成功を収める道具に変えることによってではない」。大勢の信徒がアーメン(「その通りです」)とうなずく後方で、数人が「わたしはそうは思わない」とつぶやく様子が目に浮かぶようだ。※引用者加筆.

ベイズやラプラスが発見したのは何かというと、要するに正しく推論する方法だった。それはどんなに薄弱な観察でもすべてたどり、最もありそうな原因にさかのぼるべく、確率によって推理することだ

占いにはさまざまな手法があった(イギリスの哲学者トマス・ホッブスは、キリスト教プロテスタントが受け入れている占い以外はおおむね軽蔑していて、著書『リヴァイアサン』[岩波文庫ほか]に見事なリストを掲げている)。当時の人々はほぼ占いに重きを置いた。このため、キケロは経験的知識と占いの知識を注意深く区別したが、この区別を真に受けた人は皆無で、たいていの人は予言者や占い師の言葉を医師、水先案内人、将軍の言葉と同列に見た(中略)『易経』の歴史は、エリートの占いから神や霊魂がしだいに消えていき、人事に関わりのない哲学的な未来思考がしだいに重要性を増した(中略)きわめて豊富かつ複雑で、ときには難解ともいえる書になった(中略)(※最古の例は定式文の集大成『周易』。文言は64の異なる「卦」に対応し、それぞれの卦は3本の長い線または2分された線から構成された「爻(こう)」2つからなる)卦に関する豊富な解釈が中国における思想や哲学の中核に取り込まれていき、森羅万象を表す古代の太極図(陰〈点線〉と陽〈実線〉に2分されている)の形成につながった。卦と解釈をまとめて、人生と未来に関する一種の百科事典と考えてみるのも悪くないかもしれない。もちろん、この事典は占いに典型的な不透明な言葉で書かれている(中略)それぞれの卦から導かれる曖昧な「占い」の解釈はあまりに複雑で、『易経』に心惹かれた心理学者のカール・ユングがこう述べたことがあるほどだ。「『易経』の理論についてはあまり考えない方がよく眠れる」(中略)(※『易経』の)決まり文句は当時の人にとってもわかりにくかった。しかし、占いの多くの手法と同じく、占いにはわかりずらさはつきものだ。わかりづらいことから、占いが的中しなかったといいづらい。また占いに隠れた意味があるかどうか客に慎重に考えさせ、直感や示された意見について考えるように促す。実際のところ、占いはただの予測ではない。新しい可能性に気づくように人の心を開かせるものなのだ(中略)いろいろな意味で、カルダーノの未来思考はまったく近代的ではなかった。困ったときには、「占い師や魔法使いに会いに行き、私のさまざまな問題に何らかの解決策を見つけようとした」と彼は告白している。賭け事で負けが込んだときには、「運に見放されたのさ」と説明した(中略)(※カルダーノ、パスカル、フェルマーが取り組んだ「点数の問題(賭け金の問題)」での)パスカルの答えは、仮想の標本空間(※コイントスのようなプロセスの、起こるかもしれない結果すべての集合。これはカルダーノのアイデア)に「起こるかもしれないすべての結果を残らず列挙する」ことだった。数学は美しくてエレガントではあるが、現実世界の不確定要素を見捨てがちだ。したがって、パスカルの答えは確率論的な思考がはらむ典型的な危険性を浮き彫りにしてくれる(中略)選択の自由は幻想だと説いたラプラス(中略)自由選択など幻想にすぎない、とラプラスは論じている(中略)ラプラスが(※1662年、パスカルの友人2人による現実世界において起こりうる事象の根拠を確立論なら明確に示せるという『論理学、あるいは思考の技法(法政大学出版局)』が展開された。その)2世紀後に述べるように、確率論は確率の「計算論法」だ。しかし、その計算論法を現実世界に適用するにあたり、私たちは自分が根拠の薄い確信に頼っていることを忘れてはならない(中略)次の3世紀で、確率論の数学はどんどん洗練されていった。※引用者加筆.

ラプラスの考え方は、だれでも究めようと思えば究められる科学法則が存在すること、この一点のみに基づいていた。こうしてかつては預言者と神秘論者の領分だった予言は、客観的で合理的な近代科学の領域に持ちこまれた。

合理的な議論や誤謬が詭弁に陥ったときには、別の合理的な議論でそれを指摘し、正すことができる(中略)シモン・ラプラス〔フランスの数学者、物理学者〕が仮想した悪魔、宇宙のあらゆる粒子の位置と運動量を知っている「ラプラスの悪魔」なら、その知識を物理法則の方程式に代入することで、未来を完璧に予測できるのではないだろうか?〔このように未来は過去の状態と因果法則に規定されて1通りに決まるとする考え方を「決定論」という。ニュートン物理学は決定的な理論〕(中略)確証バイアスとは、何らかのパターンを予期すると、それに当てはまる例ばかりを探し、当てはまらない例を無視する傾向のこと(中略)リスクの認識を歪めるのは利用可能性バイアスだけではない(中略)ベイズ問題に正しい事前確立などない(中略)そもそも基準率のデータが存在しないという場合もある(中略)非ランダムなパターンを非ランダムなプロセスと勘違いするのは人間の愚かさの最たるもの

1930年代にはクルト・ゲーデルの「不完全性定理」によって、いかなる論理体系にも真であることを証明できない主張が必ず含まれていることが証明された。計算科学の分野ではアラン・チューリングが、どんなコンピュータプログラムでもその結果を前もって決定するのは不可能であることを証明した(中略)20世紀初めには量子物理学によって、素粒子のスケールでは多くの事象が本質的に予測不可能であることが示され、物理学における決定論がおびやかされた。2つの穴の開いた壁に光を当てて、特定の光子がどちらの穴を通過するかを予測しようとしても、それは不可能だ。つまり物理学者のリチャード・ファインマンがいうように、「未来は予測不可能である」(中略)予測不可能な素粒子が何億兆通りもの形に組み合わさってこの宇宙ができているとしたら、それはラプラスの極端な決定論を否定する強力な証拠となる。一般的な法則やトレンドは確かに存在するが、未来を詳細に至るまで決定するのは不可能で、原理的にすら完璧な予測などかなわないのだ。

近代科学はラプラス流の決定論をおおむね放棄している。放射性同位体の崩壊など多くの事象が純粋にランダムであると認めているのだ。これらの事象に「隠れた原因」はないので、原理的には予測しがたい。このことは確率論が無知に対処する方法ではなく、現実の多くの側面を記述するもっとも正確な方法であることを意味する。宇宙の大きなスケールでは一般的な法則によって支配されるが、宇宙の一瞬一瞬の変化および私たちの未来は確率論的なのだ。

何が問題なのかを見つけ出そう 解決方法が見つからないのではない。問題を見つけることができないだけだ。──G・K・チェスタートン(※優生学に対し最も鋭く反対意見書き連ねたイギリスの作家)※引用者加筆.

映画「アーヤと魔女」のラストシーンは、アーヤがテレビでハウルを見ているところで終わる。話を優生学に戻すと、成人後の就職時の健康診断で染色体欠損が発見され、優生学中心の現実世界、魔女狩りのレッテルという魔法世界への脳の可塑性が遅れるケースが多い。魔法はレッテルなので、私はまったく幸運ではないのだが、4歳のときに原因不明のウイルスに感染、同時に原因不明の細菌に感染して歩けなくなり、後にウイルスや細菌ではなく染色体の病気であると判明。当時も現在と同じように優生保護法が盛んだったが、小学校に入学した頃から、優生保護法をめぐって別室に呼び出され、時間を奪われ続けた。私は時間なく大検一発合格後に大学受験予備校(寄附金を納める窓口)に行ったので、実際に高校で原発の授業があったかどうかは知らないが、大検の問題集にプルサーマルなど原発関連の嘘が列挙されていたこと、そのため優生保護法とは無縁の高校生らは実際に原発が事故を起こしたら取り返しのつかないことになるだろうと感じていた。また、私は10代で優生保護法という時間のロスを避けるためにクリニックを訪れたが、返ってきた言葉は「10代でのパイプカットは配偶者の同意書が必要で、成人して21歳以降になれば同意書なしで手術が受けられる」というものだった。ちなみに私は、緑内障の遺伝子を持っているため、医師の言うことを先に答えられるくらいの精密検査を受け続けた。その結果、緑内障の予防法をマスターすることになった。緑内障や目の病気で気をつけるべきことは、目の中に放射性物質を入れないことだけだった。なぜ本を読むスピードが遺伝子によって決まるのか、自分自身のためだろう。下位5%に属する優生保護法の対象者の場合、漫画の内容や知識階級の関心事に関心があるのは彼ら自身に関係しているからに他ならない。人口の90%を占める中間層は、実際にガンや不治の病にかかるまで、知識階級の関心事には関心がない。この意味での健忘症(ここまでを理解しないと認知症)が蔓延している。

関連リンク↓

https://note.com/wandering_1234/n/n48d3b126785e

https://note.com/wandering_1234/n/n03dc10c28941