【ブラック】ショートショート
母親と保育園のスモックを着た姉弟が立っていた。
バスを待っているのだ。
バスはもうそこまで来ていて「てってってってって・・・」と、原付のようなエンジン音が近づいて来る。
赤くて小さなコミュニティバスを更に一回り小さくしたようなバスに、黒い丸みを帯びた三角形のサイドカーがついていた。奇妙なことにそのサイドカーには目玉が一つと車輪が一つついていた。
バスとサイドカーは親子の前でゆっくりと止まった。
姉弟はサイドカーに手を差し出した。
サイドカーは隠れていた口を開くと姉弟の手を飲み込んだように見えた。
「ちゃりん、ちゃりん」
小銭がサイドカーに飲み込まれ、姉弟はバスに乗り込んでいった。
母親は二人の背中に向かって「お母さんも、後から絶対に行くからね」と声をかけた。姉弟は座席に座ってシートベルトを締めると、ちょっとだけ母親に向かって手を振った。
バスはドアを閉ざすと、また、「てってってってって・・・」と走り出した。
「あ・・・」
母親はバスの後を追いかけたが、橋の手前で追えなくなった。
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目を覚ますと、母親は沢山の管が繋がれた状態で病院のベッドに寝ていた。
誰かが遠くで『目を覚ましましたよ』と言っている声が聞こえる。
母親は「自分だけが逝けなかった」ことを理解した。
ベッドの横ではモニタが「ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・」と規則的なリズムを刻んでいた。
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以前書いていたショートショートです。
noteの方に転載します。
※絵も自分で書いてます。
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