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しゃべるピアノ

『し』

「死んでくれる?」

眉間に突き付けられた銃口に逆らえるヤツがいるだろうか。
しかし、「イエス」言っても「ノー」と言ってもこの状況は好転しない。
曖昧な笑みを浮かべて相手の出方を待つしかない。

「で?」

なぜか俺のシゴトのいくつかがバレてしまっているらしい。
誰が、どこで、何故。

「誰にも見られずに『お掃除』すんのがお前の仕事だろうがよ」

大雨の晩のことも、レモンの月の晩のことも、グランドピアノに仕掛けた爆弾の事も。
見られているはずがない、誰もいなかった、あそこには、誰も・・・。

「人はね?」

ああ、人は誰もいなかった。

「知ってる?最近のピアノってしゃべるらしいんだよ」


ガシャン。
ピアノの足と俺の足が手錠で繋がれた。
「おしゃべり相手もいるから、きっとどこでも寂しくないよ、じゃあね」




ジャポン・・・

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