見出し画像

違法の冷蔵庫


「まず、文法が間違っている」

名探偵は容疑者(仮)たちの輪の中でそう指摘した。

「『”違法な”冷蔵庫』と書かれているのであれば、冷蔵庫になにか秘密があると考えることもできた・・・しかし」と、名探偵は言葉を切って床に血で書かれたダイイングメッセージに近づいた。

「『違法の』と『冷蔵庫』の文字のバランスがおかしいとは思いませんか?犯人が何か細工したに違いない!」

それらしく名探偵が言うと容疑者(仮)たちはぐっとその輪を縮めてダイイングメッセージを覗き込んでそれぞれに「確かに」「そうか?」「言われてみれば」「うーん」と呟いた。


「それから」と名探偵が言葉を続けようとしたとき、助手が証拠品を片手に事件現場に飛び込んできた。


「冷蔵庫から、違法な薬物が沢山出てきました!」








容疑者(仮)たちは「故人は国語が苦手だったから」「字もちょっとね」「納得」「だろうね」などと口々に言い合い、とりあえず名探偵をその場から追い出した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?